こんなのありですか
夢も何もありません。
ある日の下校中、白い光に包まれた私――鈴木美穂――は異世界へとやってきた。
「どうかこの大地に恵みを齎して下さい、異世界の少女よ」
気がつけば魔法陣の中にいた私。すぐ横で私にそう話しかけてきた青年は、びっくりするくらいのイケメンだった。
キタコレ!!! 王道異世界トリップ! 私が特別な存在! 私が世界を救う! 私が崇められるの! 差し詰めこの目の前の人がメインヒーロー的な人かしら? でも私、サブヒーローくらいの影がある人のが好みなのよね~。もっと言うと乙女ゲームでいう難易度一番高くて一番スペック高いキャラ! この人も召還なんかするくらいだからそれなりなんだろうけど、先に出てる人ってそれだけで地味だからつまんない。
「ではこれからの事をご説明致します」
ならお互い自己紹介を……と思ったけど、なんと先代で何かあった? らしく不必要な馴れ合いが全面的に禁止になってるんだって!だから従者と呼べとの事。え? それってメインヒーローが一番難易度高い的なアレ?
それでやることは……山行って手を翳すだけ。一緒に行う現地の能力者はもう来てもらってるからって。目を向けると後ろのほうに人影が。私より若くて私より可愛い少女だった。……あ、うん、たまにある親友ポジション的なキャラだよね? そうでも思わないと心折れそうなんですけど。
とにかく、みんなまとめて私が落としてやるんだからね!
「なんでよ――――――――――――!!!!」
フジの山であっさり終わった。それで帰れといわれた。ちょ、私まだフラグ立ててなくね!? こういうのは異世界残留エンドがお約束でしょ!? 恋は? 冒険は? 神秘……光の神殿で精霊見た事くらいかな……ってそれで納得できるかあ!!!
「何でと仰いますが……」
従者の人の本名も知らないまま私は光の精霊に送還されそうになる。やめてよ! 戻ったら私ただの一般人に戻るじゃない! ただの人なんか絶対イヤ!!
「先代の御子様はこの地で亡くなられました。世間に非難された時の従者と王家はくだらない争いはやめようと決められたのです。貴方も余計な争いに巻き込まれずに、無事に、帰ることが出来るのですから……」
なにそれドラマチック。先代さんがどんな思いしたのか知らないけど、その辺の少女に戻るくらいなら劇的に死にたいわ。語り継がれるようなかっこいいの希望。まんま口にしたら従者と属性担当の少女もろとも呆れた顔をされる。
「血縁でも……似ないものですね」
勝手に期待して何なの。派遣みたいなことやらせてこんなの労働法違反なんだから!
と、最後まで言い終わることなく私は元の通学路に戻っていた。
またつまらない日常か……溜息ついて家路につく。




