Episode5 荏咲家VS黒い悪魔
今回は荏咲家が主役!!
ちなみに作者も生理的に黒い悪魔(G)は無理です。
「で、出たぁ!!」
俺は叫んだ。
こんにちは!!
俺の名前は荏咲 月也。
中学3年生。
俺の家は市営団地。
姉一人と妹弟多数の七人姉弟。
母ちゃんは今、訳あって家にはいない。
父ちゃんはもう亡くなってるし。
だから今は、姉弟七人で団地住まい中。
「さ、小夜姉ぇ! 出たあ!!」
今は午後8時。
俺は風呂に入ろうと着替えを準備し、脱衣所に向かった。
しかし、そこに奴はいたんだ。
脱衣所の扉を開けた
その時・・・
カサカサカサッ!!
「あ・・・」
そこにいたのは、黒い悪魔(G)!!
「出たぁ!!」
この市営団地にはよくGが出没する。
そして俺は、虫が苦手だ。
カサカサカサッ!!
「う、うわ〜!!」
Gが動く。
うわっ、こっちくるな!!
「た、助けて誰かぁ!!」
カサカサカサッ!!
ぎゃあぁぁっ!!
Gの触覚が動いた!!
「む、無理無理!! 絶対無理!!」
生理的に無理!!
G大嫌い!!
カサカサカサッ!!
うわっ、こっちへ来た!!
「うわっ、やばっ、ちょっ!!」
あ、ヤバイ!!
その時・・・
「・・・月也?」
廊下から聞こえた、天使の声。
「さ、小夜姉ぇ! Gが出た!!」
俺はSOSを出す。
「・・・G?」
「小夜姉ぇ、とりあえず虫退治スプレー持ってきて!!」
「・・・うん、待ってて」
バタバタとどこかの部屋へ行く足音。
と、とりあえず助かったのか・・・あれ?
「あれ? Gがいない・・・」
おかしいな?
さっきまでそこにいたのに・・・
まさか・・・
「逃げ出した!?」
え、何!?
この近くにGが!?
「うわっ、嘘だろ!」
俺は辺りを見渡す。
・・・やっぱりいないよ。
「もしかして、洗濯機の下か?」
俺は恐る恐る洗濯機の下を覗く。
カサカサカサッ!?
「ぎゃあぁぁ!!」
出たあぁ〜!!
洗濯機の下にGいたよ!!
そしてこっち来た!!
「うわっ!!」
俺は咄嗟に後ろへDive!!
カサカサカサッ!!
Gは俺の目の前を通り、こんどは洗濯かごの下へ。
「うっ・・・かごの下に奴が・・・」
俺はもうこの洗濯かごは使わない。
カサカサカサッ!!
「ぎゃあぁぁ!?」
うっ!?
突然動き出した!!
バタバタっ!!
飛んだ!?
「む、無理だ!! こっち来るな!!」
しかし・・・
バタバタっ!!
「ぎゃあぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
Gは俺のすぐ横を通り、俺の真後ろの壁に着地。
Gと俺との距離、1メートル弱。
「や、やややヤバイヤバイ!!」
ヤバイ!!
恐怖で足が動かない。
そして振り向けない。
「・・・ヤバイ」
自然と声も小さくなる。
「・・・無理」
そして・・・
カサカサカサッ!!
「ぎゃあぁぁ!!」
背後でGが動いてる!
足音する!
「あ・・・ああ・・・ああぁぁぁ・・・」
俺は足元に目をやった。
Gは俺の後ろを通り、廊下を北上。
玄関の方へ。
「ふぅ〜・・・」
良かった・・・
あっち行ってくれた。
「助かった〜・・・」
その時・・・
「・・・月也!」
「あ」
小夜姉ぇ、玄関の隣の部屋から登場。
手には虫退治スプレーあり。
・・・って!!
「小夜姉ぇ!! 下、危ない!!」
「・・・えっ?」
そして
グチュッ!!
「・・・・・・」
奇妙な音がした。
小夜姉ぇはフリーズしていた。
何故だか、右足を一切動かさない。
顔は・・・徐々に青白くなって・・・。
「さ、小夜姉ぇ?」
まさか・・・
「・・・・・・」
小夜姉ぇは無言。
・・・Gの姿は、もうどこにも無かった。
「・・・・・・」
「・・・だ、大丈夫? 小夜姉ぇ?」
小夜姉ぇの右足は軽く震えている。
・・・殺ってしまったのか。
Gを殺ってしまったのか。
しかも素足で。
やって・・・しまったのか。
「ア〜!!」
・・・そして、リビングで寝ていた三男七星(一歳)の泣き声が、虚しく廊下に響いた。
「・・・・・」
その日から小夜姉ぇはスリッパを履くようになったのは、言うまでもない。
「あの・・・小夜姉ぇ、ご、ゴメン・・・」
「・・・・・・」
で、しばらくは機嫌が直らなかった。