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Spring Storm  作者: 五円玉
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last story 水族館でーと後編

「…………(キラキラ)」


「……小夜の目、めっちゃ輝いてるな」


「うん、あんな輝いてる目をした小夜、初めて見た」



現在巨大水槽前。


シャチくんのせいでびしょ濡れになった俺達だけど、気温30度超えの夏日の下、水はあっという間に乾いた。


そしてアイスがぁ……と嘆く楓を引きづり、水族館1の巨大水槽のある建物の中までやってきた。


「…………(キラキラ)」


そして……水槽前。


小夜が水槽にくっついたかのように動かない。


本当に動かない。


水槽の中にいる海月が動くたび、小夜の目の輝きが度を増していく。




全長8メートル程の巨大水槽。


中には綺麗な小魚や海月、少し大きな魚からサメらしき魚まで、多種多様の生物が泳いでいる。


「すごい迫力だな……」


上向かないと全部が見れない水槽。


迫力満点。


「…………(キラキラ)」


小夜、さっきから微動だにしない。


「ねぇハル」


一方の美羽は館内をうろうろ。


「あっちに大きなエイがいたよ! 見に行こう?」


巨大水槽とは反対の方向を指差す美羽。


「あ、ああ。……ってか楓は?」


姿が見えない。


アイスでも買いにいったか?


「え? 楓なら……」


美羽の視線の先。


そこには……


「うおっ、これすげぇ!」


……館内の入口辺りにあるドクターフィッシュコーナーで1人角質を食べてもらっていた。


ってか……


「あ、ずりぃ! 俺もドクターフィッシュやりたいッ!」


「は、ハル?」


「よし美羽、俺達も行こうぜ」


「え? わ、わたしはエイが……」


「ヘイ、カモンベイベー!」


「うわっ……」


俺は美羽の手を掴み、ドクターのフィッシュさん水槽へダッシュ!


「ちょっ……ハル……」


「ん?」


「あっ……いや、な、なんでもない……」


ちょっとうつ向き気味の美羽。


館内の照明が暗いので、よく表情が見えない。
















「ぺ、ペンギン……」


シャチのショーを見て、巨大水槽見て、次はペンギン。


屋外にあるペンギンコーナーで、今度は美羽が動かなくなった。


「ぺ、ぺぺぺペンギンだぁ……」


「……良かったな」


とりあえず先程の小夜と同じく、動かないヤツはほっておいて、俺は小夜と楓の元へ。


「……だめだ、今度は美羽が石化した」


「……石化?」


「ああそうだ。約30分前の小夜と同じ状態だよ」


「……ん?」


「お前自覚ねぇな?」


頭に?マークを浮かべた小夜さん。


「なぁ春吉、あっちでペンギンにエサやり出来るコーナーがあるんだって! やりに行かない?」


そして楓は超ウキウキ気分で俺の袖を引っ張る。


しかもそのエサやりコーナー、チビッ子しかいないし。


「……お前1人でやってこいよ」


大人のプライド。


「えーっ、一緒にイワシあげようぜ!」


そして駄々をこねだす楓。


「いいよ別に。ほら、見ててやるから行ってこいよ」


「いやだ! 春吉も一緒に……」


「大丈夫大丈夫。お父さん、ちゃんと見ててあげるからさ。行ってきなかえちゃん」


「かえちゃん言うな、このエセ親父キャラッ!」


ドスッ


「ぐほっ……」


は、はいった……


「あたし1人でチビッ子の中に入るとか、ハズいだろッ!」


「……楓にも恥じらいとかあんのかよ」


バキッ


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!」


「とにかく行くぞ春吉っ!」


「いややっ、俺いややっ! プライドが、俺のささやかなプライドがっ」


とか言いつつも、しょうがない行ってやるか……と歩きだそうとした俺。


その時


「だったらわたしが行く!」


と、ゴーゴンの呪いが解けた美羽さん、ダッシュで登場。


「行こう楓! ペンギンにイワシあげよう!」


「お、おう……」


あまりの突然に、あの肝っ玉楓がひるんでるッ!


「よし決まり!」


そして強引に楓の袖を掴み、走り出す美羽。


「うわっ、ちょっとっ!」


「早くならぼ、楓!」


「いや待って、春吉も一緒に……」


「行くよ楓っ!」


あれよあれよと引きづられ、エサやりコーナーへと消えていった楓と美羽。


……美羽、キャラ崩壊気味。


どんだけテンション上がってるんだよ。


「……どうする小夜?」


「…………」


で、何か残された俺と小夜。


「……お腹空いたね」


そして、小夜のこの一言でとりあえず昼食をとる事にした。




















「よし、楓と美羽にはメールしといた。水族館入口のフードコーナーにいるって」


「……ん」


俺と小夜は水族館内のフードコーナーで食事をとっていた。


昼時のせいか、フードコーナー内の客は多い。


俺と小夜はとりあえず席を取り、小夜はたこ焼き、俺はカレーを注文。


「……あつっ」


小夜は出来立てのたこ焼きの熱さに苦戦中。


「まぁ、出来たてだからなぁ」


ふぅふぅと沢山の息をかけ、たこ焼きを食べる小夜。

そしてちょっとたこ焼きをかじっては、あつっとまた息をふぅふぅ。


俺はそんな小夜を見て笑みがこぼれた。


なんか、小動物みてぇ。


「小夜、お前猫舌か?」


「ん? にゃあ?」


「へ? ……あ、違う違う。猫じゃなくて猫舌か?」


「……猫舌、にゃあ」


「…………」


……何故か今の小夜はテンションが上がっているらしく、少しふざけた感じになっていた。


……そんなにたこ焼き、好きなのか?















「疲れた……体力的な意味でも精神的な意味でも」


日はどっぷりと暮れ。


俺達は水族館入口まで来ていた。


もう帰宅時間。


「なんかあっという間だったね」


とか言う美羽はちょっとうとうと。


「ヤバい、今日からアタシ、ペンギンのファンになった!」


楓はまだ体力があるらしく、なんか元気。


「……ネコ……ごろにゃん」


で、小夜は昼飯の時以来ネコになってしまっている。


「……小夜、お前どうしたんだよ?」


「楓にゃん、にゃんにゃん」


「……え?」


「……楓もネコ、やってみる? にゃん」」


「ハッ……春吉ッ! 小夜が壊れてるっ!」


「お前ら……何コントみたいな事を……」


精神的疲労増加。


「……眠い」


その時、ぼそっと呟いた美羽。

その瞳はまさにうつらうつら。


「……おし、じゃあ早く帰るか」


バカしてる楓も小夜も、美羽もお疲れ気味。




水族館を後ろに、俺達は夕陽の中、帰路についたのだった。

to be continued




―――2012年夏、三姫完全新作連載開始予定。


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