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Spring Storm  作者: 五円玉
18/21

parallel story -12

今回は本編12話のパラレルストーリーです。


家事回です。


美羽が壊れる回です。

とある5月の朝。


俺は今、荏咲家にて家事を行っていた。


理由?

本編第11話参照。


……何?

本編読むの面倒くさいだ?


……小夜が過労で倒れ、俺らはその小夜の代わりにまだ幼い小夜の兄弟達の世話をしているのだ。


分かった?


「春、あんた何ボーッとしてんのよ! 早くご飯の準備しよ!」


「あ、ああ……」


俺は美羽にせかされ、荏咲家兄弟分の朝ご飯の調理に勤しむ。


「…………」


ジュワァ〜


「…………」


ジュウ……


今日の朝ご飯はトーストにハムエッグ、お手軽サラダ、海藻スープ。


「…………」


コトコト


「…………」


チンっ!


「あ、トースト焼けた」


……無言の台所。


狭い台所に俺と美羽の二人で並び、それぞれ料理。


俺はスープとサラダ、美羽はハムエッグとトースト。


「……春、マーガリン取って」


「あいよ」


グツグツ


コトコト


「……美羽、そっちに塩ないか?」


「塩? はい」


塩のビンを渡してくる美羽。

俺は視線をスープに向けたまま、左手で受け取ろうと手を伸ばす。


ちょん


「……っ!」


その時、ちょっとだけお互いの手が触れた。


美羽が咄嗟に手を引っ込める。


「……あれ? 塩は?」


手と手が触れた感覚から数秒。

未だに伸ばしている俺の左手に、塩のビンは渡されていない。


「……美羽?」


俺はチラッと左を見る。


「……え! あ、塩? ご、ごめんっ!」


何故か料理中なのにボーッとしていた美羽。

ちょっと顔が赤い。


「……サンキュー」


俺は塩を受け取りつつ、美羽の顔を凝視。


じぃーーーっ


「……は、春っ?」


ちょっとあたふたしだす美羽。

何焦ってんだ?


「……な、なんか私の顔についてる?」


美羽の視線は定まってない。


「あ、いや。何か顔赤いから風邪でも引いてるのかと」


「風邪? べ、別に引いてはないけど?」


「そうか?」


にしては顔赤い。


……俺の目の錯覚か?



















そして、荏咲家兄弟が起床してくる。


ちなみに俺らお手伝い組は美羽、楓、俺の3人。

まぁ今さらだけど。


「ほらお前達、さっさと朝飯食え!」


「春、朝飯じゃなくて朝ご飯!」


「んだよ言い方くらい。細かいなぁ」


とかいうグダグダやり取りをしている間にも、子供達は寝ぼけつつ朝飯を食べ始める。


どうやら荏咲家は朝に弱いらしい。


「……ってかあれ? 楓は?」


ふと、子供達を起こしに行った楓の姿が見当たらない。


子供達はもうみんなリビングに来て朝飯食べ始めているというのに。


「……ああ、さっき起こしに来た人なら」


すると、荏咲家長男の月也がスープを飲みつつ、子供部屋を指差した。


「……え?」


何?

子供部屋が何?


「……だから」


月也は相変わらず子供部屋を指差す。


……嫌な予感がした。


「……月也、ちょっと部屋にお邪魔するぞ」


「どうぞ」


俺は月也に了承を得て、子供部屋へと繋がる襖に手を掛ける。


そしてオープン。


「…………」


そこには、子供の布団で熟睡している楓の姿があった。


「…………」


ふんがー……ってイビキをかいて。


めっちゃ大の字になって。


俺らは今日このまま学校なので、荏咲家には制服で来たのだが。


……スカートがひらけて、中が見え見え。


何かガサツな感じだけど、寝顔だけはなんか……可愛いなコイツ。


……よし、とりあえずほっておこう。


うん、そうしよう。


沢那楓、学校遅刻決定。


「ん? 春、どうしたの?」


「いや別に。ただ今荏咲家に新たな兄弟が誕生したなぁ……って」


「ん?」


















それから。


食事を終えた兄弟達は各自通学の支度へと入る。


幼稚園の4女、空と保育園の3男、七星の支度は美羽が手伝っていた。


「春、そこにある櫛取って!」


「はいよ」


俺は櫛を美羽に渡しながら、子供達の寝間着の洗濯の準備。


「ありがと!」


美羽は櫛を片手にリビングへ。


一方の俺は洗剤の量を確認し、洗濯機へと投下。


「月也くん、小さい子の歯磨き手伝ってあげて!」


「分かった」


リビングから聞こえる、美羽と月也の声。


うん家庭的会話やね。


「えーっと、後は食器洗いと掃除……」


……しかし、何だかんだで結構忙しい。

何しろ小夜抜いた兄弟6人分の家事だ。


忙しいってレベルではない!


「春、こっち一通りやったから食器洗いやっとくね!」


その時、櫛を受け取りリビングへ行った美羽から有難い一言が。


「サンキュー! こっちも洗濯終わったら部屋の掃除するわ!」


そう答えながら、洗濯機のスイッチオン!


とりあえず洗濯は一段落。


「……ふぅ」


まだ5月、しかも朝。


なのに汗かいてる俺。


「……あとは部屋の掃除して、洗濯物干して」


いろいろと今後の事を考えつつ、とりあえず掃除しにリビングへ向かう俺。


そして途中、歯磨きへと洗面所に向かう次女星乃とすれ違う。


「おっと、悪い」


危うく身体がぶつかりそうになり、ちょっと謝る。


「あ、いえ……」


……小夜と似ていて感情があまり豊かではない星乃。


そのせいか、俺とあんまり会話した事がない。


星乃も小夜と同じで、結構物静か。


「……何か」


……その時、何の前触れもなく。


唐突に。


俺の目を見ながら。


物静かな星乃が。


口を開いた。


「……何か、お父さんお母さんみたいですね」




……は?




「お二人を見てると、新婚の夫婦みたいで面白いです」


パリーンっ!


その時、台所の方から皿の割れるような音が。


……確か今、台所では美羽が食器洗いをしているはずだ。


ちなみにここと台所までとは壁を挟んだ隣。


つまり、声だだ聞こえ。


「……星乃?」


多分、俺の顔ひきつってるな。

自覚出来る。


「……ふふっ」


星乃はただただ、笑っていた。

そして即行洗面所へ。


「…………」


な、何なんだ?


一方、壁の向こう側では。


「ちょ、夫婦っ、いや、まだ早いし……って私何考えてっ……えへ」


……何か気持ち悪い。


「そんなっ……夫婦……春と……えへへ!」

















そして家事が一段落して。


「じゃあ私、空ちゃんと七星くんを送り届けてくるね」


空と手を繋ぎ、七星をおぶった美羽が玄関を出ていく。


保育園も幼稚園も結構近くなので、徒歩でも大丈夫。


「ああ、美羽はそのまま直で学校?」


「うん、そのつもり」


「そか、じゃあまた後で」


俺は美羽を見送り、未だ熟睡中の半男生物を仕方なしに起こしに戻る。


「じゃあ、行ってくるね―――お父さんっ!」


その時、何か……こう……うん、玄関から聞こえた。


俺はぎょっと振り返る。


そこには、笑顔の美羽が手を振り、何かつられて空までも手を振っていた。


「……は?」


そして


ガシャン!


玄関の扉が閉まり、静寂が訪れた。


「……美羽?」


お、お父さん?


……ふ、夫婦?

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