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Spring Storm  作者: 五円玉
16/21

parallel story -07

今回は本編第7話のお話で、なおかつ後日談的なお話。


もし、あの柔道大会で葉城が優勝していたらのお話です。

「はあっ!!」


渾身の背負い投げが決まった。


楓の小さな体からは想像も出来ないような、力強い投げ。


相手は一瞬で両肩を床に。


その時、全てが決まった。








『試合終了、勝者葉城高校!』


アリーナ内に流れるアナウンス。


ゴールデンウィークに行われた高校柔道の大会、葉城高校柔道部は見事に優勝したのだ!


「や、やりやがった……楓がやりやがった!」


2勝2敗でもつれ込んだ柔道大会の決勝、最終戦。


葉城高校柔道部の大将、沢那楓が最後の最後で相手高校の大将に勝利!


応援席で葉城高校の応援をしていた俺と美羽はその場で立ち上がり、もうてんやわんや。


「春、葉城勝った! 楓が勝ったぁっ!」


「ああ、勝ったっ! やったぁ!」


もうテンション上がりまくり!
















「どうだ春吉、あたし優勝しちゃったぞ!」


「ああ、すげぇ! お前は天才格闘少女だ!」


大会終了後。


俺は自宅で楓と美羽と共に大会の打ち上げを開いていた。


楓曰く、柔道部としての打ち上げは明日あるらしいので、俺達での打ち上げ(実際は楓を天狗にさせる会)は大会終わり直後の今日となった訳だ。


ちなみに時刻は夜9時ちょい前。


外は暗い。


「……にしても、今日の試合は凄かったなぁ」


自宅の自室。


部屋中央のテーブルにはお菓子やらジュースやらがいっぱい。


……まあ、見た目子供の誕生会みたいな感じだが、即席だとこれが限界。


俺はポテチをつまみながら感嘆の言葉。


「だろ! あたしはやれば出来るんだよ!」


半男生物はまさに天狗になっていた。

そして葡萄ジュースをグイッと一気。


「楓はいいなぁ。そんな運動神経があって」


「どうした美羽?」


テーブルにぐだっと身を任せ、突っ伏しているのはダーク生徒会長。


「私はさ……運動神経ないし、体力ないし、もやしっ子だし」


「美羽……なに悲観的になってんだお前」


楓の祝勝会なのに。


「やっぱりさ、春も運動出来るような活発な女の子の方が可愛いと思うよね?」


「なんで突然自暴自棄!?」


どうした美羽。


すると楓がまた葡萄ジュースを一気し、コップをテーブルにドン!


「いいじゃん美羽は! 確かに運動出来ないかもしんないけど、身長はデカイし、おっぱいもあたしよりデカイし!」


「楓もどうした!?」


何があった?


すると美羽反論。


「楓の方がいいわよ。明るいし運動出来るし、人見知りしないし」


何か強引な手つきでスナック菓子をボリボリ食べる美羽。


「はぁ? 美羽の方がいいだろ! ちょっとくらい身長よこせ!」


楓もまたまた葡萄ジュース一気。


「身長なんて関係ないわよ。全ては内面なのよ……」


なんか美羽の様子、おかしくね?


「第一は外見だろ! 女は胸だおっぱいだ! 少しくらい脂肪をよこせ!」


しかも楓はオッサンみたいな事言ってるし。


「あげられるならあげるわよ。代わりに運動神経が欲しい……」


「あたしだって、本当はもっとおしとやかって言うか、恥じらいの気持ちが欲しい!」


「明るい性格の方がいいわよ。楓は贅沢だわ……」


「美羽こそ、自分が可愛いのに、そんな否定的で控えめでずるい!」


二人共葡萄ジュース一気。


「ぷはぁ……楓はきっとモテるんだろうなぁ。ちっちゃくて可愛いし」


「ちっちゃい言うな……美羽こそ肌キレイだし、スリムだし、おっぱいあるしモテるだろ……」


「何よさっきから胸だ胸だって。世の中には平野が好きな人だっているのに……」


「うっさいな! ないよりかはあった方がいいだろ!」


……なんだコイツら。


祝勝会開始早々、口喧嘩始めやがった。


なんなんだコイツら。


「そもそも美羽、何カップだよ!」


「えっ……そ、そんなの秘密よ」


「見た所あたしはおろか、小夜よりもおっきい。さてはDくらいあるな?」


「なっ……か、楓には関係ないでしょ!」


……何か妙に会話が生々しくなってきた。


俺、ちょっと気まずいがな。


……二人共顔真っ赤だな。


「とにかく女はおっぱいだ! だろ春吉?」


「えっ!? ここで俺に振るのっ!?」


まさかの展開。


「春吉はおっぱい、大きい方がいいよな?」


「えぇ……な、なんつー答えにくい質問……」


楓は片足をテーブルの上に乗せ、なんか尋問中の警察官みたいなスタイルに。


「やっぱり大きさだよな、男はデカさだよな!?」


……楓、それ自分を否定している事になるのでは……?


その時、美羽も顔をがばっとあげた。


「……胸は大きさじゃないわよ。感度よ」


「……み、美羽さん?」


突然とんでもない事を言い出した美羽さん。


顔真っ赤だし、目が虚ろだし……ん?


目が虚ろ?


「何言ってんだ美羽、男は谷間に興奮するんだよ多分!」


「……女は感度よ」


「いや谷間!」


「……感度よ」


……二人の目からは火花が散っていた。


なんか女の子らしい……男には皆無な話。


もう二人共真っ赤になり、目が虚ろだし、なんかアルコール臭いし……え?


アルコール臭い?


「……まさかっ」


俺は恐る恐る、葡萄ジュースの入ったビンのラベルを確認。


これ、ウチの台所にあった葡萄ジュース……。


しかし、ラベルには恐ろしい文字が。




……ワイン。




「あ、これ両親の……」


あ、ヤベっ!


「うっさい! おっぱい大きいヤツが感度って言っても説得力がねぇんだよ!」


「きゃっ、ちょ、楓何をっ!」


「本当に感度が大事かどうか確認だ!」


「ちょっ……やめっ……」


「ほれほれ、揉ませろ揉ませろっ!」


「楓っ……ダメっ……あっ……」


……俺は恐る恐る、背後へ振り返る。


……ヤバいな、コレ。




……ゴメンな、楓、美羽。

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