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Spring Storm  作者: 五円玉
10/21

Episode9 夏の音色は透明で


 「なっくん、今日暇だよね?」

 

 「あ?」

 

 7月のとある日。

 学校終わりの放課後。

 2年1組の教室。

 

 「今日さ、ウチにこない?」

 

 「……何故」

 

 いつもウザったいカオだが、今日は何故かそわそわしている。

 

 「何故って……だって……と、とにかくウチにおいで!!」

 

 「……」

 

 答えになってない。

 

 「……カオ」

 

 「な、なに?」

 

 「……俺、今日は帰るわ。眠いし」

 

 最近は意味もなく夜の町をぶらぶらしてる。

 ……刺激を求めて。

 

 

 

 俺は……青上には勝ったが、古宇宮には負けた。

 

 香音を……守れなかった。

 

 今はヘラッとしてるコイツも、救助当時は……

 

 

 

 俺はアレ以来、毎晩町をふらついては、不良共と喧嘩の毎日。

 

 理由は……

 

 

 

 「なっくん、どうしたの?」

 

 「ん? ああ……」

 

 いけね、ボーっとしてた。

 

 「眠いって……もしかして夜更かし?」

 

 「あ、いや……」

 

 まぁ、実際は夜更かし……。

 

 「もしかして授業中寝てたとか?」

 

 「あ、ああ……そ、そうだ」

 

 本当は寝てねぇけど。

 

 「だったらもう大丈夫だよね?」

 

 「……あ?」

 

 「じゃあウチにおいで〜!!」

 

 「なっ!!」

 

 俺の腕を掴み、ぐいぐいと引っ張るカオ。

 

 「ちょっと待て、まだ行くとは……」

 

 「はい行こう!!」















 水岡果樹園

 

 ここがカオの実家。


 林檎やら葡萄やら、果物沢山の果樹園。

 

 昔はよく来たな……

 

 「今日はお父さんもお母さんも出荷でいないから、遠慮せずにどぞ!!」

 

 果樹園から数十メートル離れた所にある家。

 この家の2階の奥部屋が、カオの部屋だ。

 

 「……やっぱ帰る」

 

 カオに連れられ(正確には拉致られ)、家の前までは来てみたものの……

 

 やっぱり、いいや。

 

 「ちょいと、ここまで来てそれはナシだよ!!」

 

 慌てふためくカオ。

 何故だ。

 

 「ってかよ」

 

 俺はポケットに手を突っ込みながら聞く。

 

 「今日は一体、何の用なんだ」

 

 ガチで帰って寝たい。

 

 「えっ……そ、それは……」

 

 もじもじなカオ。

 顔赤ぇ。

 何考えてんだコイツ?

 

 「と、とにかく水岡ハウスへいらっしゃ〜い!!」

 

 ……はぐらかしたな、この野郎。











 「…………」

 

 はぁ〜。

 結局、俺は家に上がった。

 いや、上がらされた。

 強引に。

 

 「まぁ、どぞどぞ。お気を使わず!!」

 

 気を使った覚えはないが……。

 

 ……カオの部屋は、まぁ、普通の女子の部屋。

 小物やらぬいぐるみやら散乱中。

 

 片付けは苦手。

 

 「はい、座布団!!」

 

 「サンキュ」

 

 言い忘れたが、カオの部屋は和室。

 床の間まである。

 

 ……ちなみに、今その床の間には衣類やら何やらがいっぱい。

 バチ当たるぞ。

 

 ドッ!!

 

 「痛ッ、たんすに足ぶつけたぁ〜!!」

 

 ほらな。

 

 「誰だ、ここにたんすなんか置いた奴は!!」

 

 お前だろ。

 全く…………。



















 「で、何の用なんだ?」


 あれから少しドタバタがありつつも、とりあえずは本題へ。


 「…………」


 カオは何やらモジモジ。

 芋虫か。


 「……なっくん」


 「あ?」


 なんだコイツ?

 目が泳いでる。


 「こ、これは、あの時の……お礼なのですッ!!」


 次の瞬間!!


 グッ!!


 「ッ……!!」


 カオが抱きついてきやがった。


 そして、


 ガゴッ!!


 「ぐおっ!?」


 勢い余って後ろへ転倒。

 後頭部強打。


 ……お星様が見えてる。


 「なっくん……ありがとね」


 耳元でささやく香音。


 なんだ……これは……


 「この前、助けに来てくれて、本当に嬉しかった」


 ……やめろッ


 「とても……安心した」


 ……離れろッ


 「なっくん……」


 駄目だ……ッ


 「……離れろ」


 「……えっ?」


 俺は、何言ってんだ?


 「離れろ……お前はそんなんじゃねぇ」


 「…………」






 ほんの、一瞬の出来事


 アイツは何を考えてたかは知らない。


 だが……







 「俺とお前は腐れ縁だ。ただ、それだけ。それ以上はない」


 「……っ」


 俺は……何を言ってんだ!!


 「……俺、帰るわ」


 「……うん」


 その時、俺の何かが崩れ出した。
























さてさて、次回よりストーリーは三姫本編に戻ります!!


新章「バスケ部夏合宿篇」!!




お楽しみに!!

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