ある日、禁断の愛に溺れて
──分かってる、好きになっちゃいけない。
屋敷の庭でお義兄様とリリアナ様が楽しそうに話をしているところを遠くから見つめる。
「今日もいい天気ですね、アルベール様」
「そうだな」
エレインの青い目にブロンド髪と翡翠色の瞳をしたアルベールの横顔が映る。親の再婚をきっかけに母エアリスとフィラー家にやって来たエレイン。エアリスは2年前に流行りの病で他界、今は義父レオンハルトとアルベールの三人で仲睦まじく幸せに暮らしている。しかし、物事ついた頃からエレインはアルベールを義兄ではなく異性として好意を寄せていた。
血の繋がりがないとしても二人は義理の兄妹、決して許されることではないと誰にも言わず隠し続けている。
そして、不意に目が合うとアルベールは優しく微笑みエレインも少し微笑み返す。
「エレインも一緒にお茶しないか?」
すると足早にお義兄様がこちらにやってきて、その隣にいるリリアナ様も笑顔で手を振っている。
「い、いいのですか‥‥?」
「当たり前だろう?リリアナもあっちで待ってるさあ行こう」
二人の邪魔をしないようこのまま部屋へ戻るつもりだったエレインはアルベールに手を引かれながらリリアナの元へいき美しい赤いバラを眺めながら美味しく紅茶を頂く。
けれど、胸が張り裂けそうなくらい苦しくなった。
初めてアルベールと会った頃のエレインはオレンジ髪に清楚な服を着た大人しい13歳の少女でいつもエアリスの後ろに隠れながら酷く怯えフィラー家に馴染めずにいた。そんな時、彼女に声をかけたのがアルベールだった。
「俺はアルベール・フォン・フィラー、今日からよろしくな」
この頃のアルベールは23歳、エレインとは10も年が離れている。
「わ、私はエ、エレインです‥‥よろしくお願いします‥‥」
「エレイン、義兄としてこれからは何でも相談してくれ」
そっと手を差し伸べるアルベールにこのときエレインはなぜか手をとれなかった。
──そして、現在に至る。
その夜食事の際中、エレインの心を痛みつける出来事が。
「アルベール、そろそろ式を挙げてもいいのではないか?」
それはアルベールとリリアナの婚約式の話だった。
「‥‥‥父さん、俺はまだリリアナと結婚するつもりはない」
(お義兄様‥‥?)
私は少しお義兄様の様子に違和感を感じた。
「もう今年で半年だぞ?いつまでリリアナを待たせたら気が済むんだ?」
リリアナ・ドミニク──近くの町の屋敷に住む伯爵令嬢でレオンハルトとリリアナの父レイモンドが知り合いだったのをきっかけに交際が始まった。
「‥‥‥」
そのあとアルベールは気分を損ねたのか黙ったまま口を開こうとしない。
「おい、聞いてるのかアルベール?」
「ごめん、今日はもう疲れたから部屋で寝る」
お義兄様は席から立ち上がり部屋に戻っていき、その姿を見て心配するお義父様。
私も心配になり食事を終えたあと急いでお義兄様の部屋に向かった。
「お義兄様、エレインです‥‥た、体調の具合はいかがですか‥‥?」
コンコンとドアをノックするがお義兄様の返事はない、やはりお疲れなのだとこのまま部屋を後にしようとしたその時。
「──待ってくれ、エレイン」
ガチャリとドアが開きアルベールが出てきて「話したいことがある」と言いエレインの手を掴みそのまま部屋の中へいつもの義兄ではないと感じたエレインは身体を気遣いながら距離をとる。
「お義兄様、やはりまだ体調が優れないのでは──」
次の瞬間、アルベールはエレインの身体を抱き寄せた。
「お、お義兄様‥‥?」
あまりに唐突だったので私は思わず目を白黒させる。
「好きだ、エレイン」
アルベールは”想い”をエレインに告げた。
「俺は初めて会ったあの日からずっと君に惹かれていた‥‥」
お義兄様の想いは自分と同じだった──だから、私も勇気を出して今まで隠し続けてきた想いを伝える。
「わ、私もです‥‥初めて会ったあの日から貴方のことがずっと好きでした‥‥」
2人は互いに相思相愛だと確信する。
「‥‥俺たち両想いだったんだな‥‥」
少し照れながら頬を赤くするお義兄様を見て私も俯きながら「‥‥は、はい」と微笑む。
アルベールは覆うようにエレインの顎をもち上げそっとキスをした。
「お義兄様、そろそろお義父様が来るかもしれなませ──」
「悪い、今は君を離したくない‥‥」
今宵は甘い口づけを交わし私たちは禁断の愛に溺れていく──。
決して許されることはない禁断の恋、エレインとアルベールはこの先も義父や婚約者に秘密で愛し合うだろう。
そして、いつか2人で幸せになれるその日を夢見て。
―—END――




