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エルドラ=ヴィオン

 翌日も起きてすぐにデイリーダンジョン創造。。

 今日こそはいいの来い……!


【塔】ダンジョン ☆☆☆☆


 だめだった。




 二日続けて攻略できないダンジョンがでてしまい、やや意気消沈。

 もしかして最初が運が良すぎただけだったのか?


 さらに翌日も、もちろんデイリーダンジョンチャレンジをする。

 三度目の正直、今日こそはいいダンジョン来てくれよ、そう思いながらいつものギルドの事務室にデイリーダンジョンを創造した。


【大聖堂】ダンジョン ☆☆

・友の予感

・魔石増量

・雷神の加護


「……きた!」


 ☆2ダンジョンだ。

 これならうちの冒険者達でも攻略できる人がいると思う。


 ・雷神の加護 は初見だが、名前から察するに雷の攻撃が強くなる、あるいは雷攻撃に対して強くなる、といったところだろう。・魔石増量 はそのままダンジョンにある戦利品に魔石が多くなる。


 重要なのは・友の予感 だな。

 あの使える特性が早速また来てくれたのは助かる。

 一人では☆……ザムザム森の迷宮クラスが精一杯の冒険者でも、これがあれば☆☆ダンジョンがいける可能性もある。


 ズィズィなら攻略できることは間違いないが、血を補給した今のズィズィなら、普通のダンジョンで『無音の深穴』より徘徊するモンスターの強い『白虹回廊』もいけそうだ。

 ならデイリーダンジョンをズィズィに任せるのは、ギルドとしては効率が悪い。


 ズィズィには普通のダンジョンにいってもらい、そっちでは稼げないメンバーをデイリーダンジョンに優先した方がギルド全体の戦力も稼ぎも増す。

 このデイリーダンジョン「でもいい」ではなく「だからこそ」の人に貸し出すべきだな。


 それは誰だ?


 俺はギルドの冒険者達のリストを再度見る。

 色々とスキルや備考が書いてあるものを考慮していくと――。


『エルドラ=ヴィオン』レベル5

・付与魔法 レベル5

・雷魔法  レベル1

・火魔法  レベル1

・冷魔法  レベル1

・杖術   レベル1

【備考】魔法学校で何か研究しているらしいが……。



『付与魔法 レベル5』、目についたのは、エルドラのこのスキルだった。

 付与魔法とは、エンチャントとも呼ばれることもあり、味方を強化する魔法だ。


 味方を強化――そうだ、・友の予感 に最適なスキルをエルドラは持っている。


 それでいて他の魔法のレベルは低い特化型だから、友軍なしではダンジョン攻略に手間取るだろう。今日みたいな日に一気に強化してもらいたい。


 決まりだな、エルドラの通信石を起動しよう。


 しばらく待つとエルドラが……来ない。

 来ないどころか通信石に反応もない。


 一時間経ち、二時間経ち、それでも反応なし。

 範囲外にいるか、あるいは……。


「多分無視してるな」


 エルドラが律儀に返事するとも来るともちょっぴりしか思っていなかった。

 だが他の人に貸し出すにはあまりにエルドラ向きのダンジョンでもったいない。ギルドを栄えさせるためにはエルドラにも伸びてもらわなきゃ困るし、


「捕まえに行くか」


 いる場所はわかってる、『ウィンダム魔法学校』だ。




 ウィンダム魔法学校は、都市ウィンダムの北部に位置する国内でも有数の魔法学校だ。

 魔法を学ぶ者、研究する者、実戦を極める者、多くの魔道師達が在籍し、教育だけに留まらず多様な魔法の最先端の場となっている。


「相変わらず立派だな」


 広大な敷地にはいくつもの建物がある。白やグレー、中には黒く塗られた建物など色々あるが、いずれも大きく、窓枠に精緻な装飾がなされていたり、高く屹立する時計塔を持っていたりと豪奢な建物だ。


 守衛に、町に登録してあるギルドだという証明書を提示すると、金の装飾のある大門の脇にある小さな入り口から中に通された。

 門は開かない見せかけだった。


 まずは白い校舎に向かう。

 生徒が講義を受けるのは主に白い校舎という話を守衛に教えてもらったから、エルドラもいる可能性が高い。


 白い校舎に入り、講義室をチラ見しながらしばらく歩いてみたがエルドラの姿はない。

 誰か知っている人はいないかと、エルドラと同じえんじ色のローブ調の制服を着ている二人組にエルドラがどこにいるか心当たりないか声をかけてみた。


「誰だ? エルドラって。お前知ってる?」


「エルドラ……エルドラ……あ、あいつよエルドラ=ヴィオン!」


「ああ! あのなんか意味わからないこと研究してる奴か!」


「そうそう、バカなことしてる人よ。素直に言われたことやってればそれで役に立つ魔法が身につくのに頭悪いわよね」


「オリジナリティ出して落ちこぼれてちゃ世話ないよなあ」


「せっかくうちの学校に入ってエリートの仲間になれたのにバカなことしたもんよね」


 エルドラのこと知ってはいたが、あまり好意的ではないようだ。

 ともあれ知っているなら、いる場所に心当たりはあるだろうか。


 それを訊くと、


「どこにいるか? さあ?」


「あいつ必修科目はでるけど他のは全然見ないよなあ」


「入学した頃は優秀だったのにねー。頭もいいし魔法も飲み込みいいし。なんでああなっちゃったのかしら」


「よくある話さ、10で神童、15で普通の人。ってやつ」


「間違ってるわよ、あの人の場合普通じゃなくて落ちこぼれだから」


「ははは、たしかに」


 どうやらこれ以上話しても無駄らしい。

 俺は二人の元を立ち去った。


 他の暇そうな生徒にも聞いてみたが、同様だった。

 エルドラの居場所は知らないし、何か変わったことに打ち込んでいて、その結果魔法学校では落ちこぼれ扱い。


 評判はわかっても居場所は依然わからないまま。

 どこにいるんだエルドラは?


「……講義室にいないなら、そうだな、魔法教授に会いに行こう」

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