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ヨゼフ爺との再会

……あれ? 俺は何を?


目を開けると、そこは見たことない天井だった。


「というか、ここはどこだろう?」


「ほっ、エルク様……目が覚めて良かったですな」


振り返ると、そこには老紳士が立っていた。

背丈は180センチくらいでスタイルもよく、彫の深い顔つきに髪はロマンスグレー。

まさしく、イケオジという言葉が似合う。

そして、何処かであったような気もする。


「えっと……貴方は?」


「それよりも、まずは彼女を労ってくださいませ」


「彼女……シオン?」


ふと視線を下げると、そこには自分の腕を枕にして寝ているシオンがいた。

安心しているのか、スヤスヤと眠っている。

相変わらず綺麗な顔をしてるなーと場違いなことを思う。


「彼女は気を失っている貴方を抱えて、この辺境都市ルノアールにやってきたのです。おそらく、数時間は走り続けて」


「そっか、俺は気を失って……ここに運ばれたのか」


思い出した、馬に乗ってる時にフラフラして……そこからの記憶がない。

気を失って、それをシオンが運んでくれたんだ。

俺は感謝を込めて、シオンの髪を優しく撫でる。


「シオン、ありがとう」


「……主君? ……主君!?」


「うひゃ!?」


避ける暇もない速さでシオンに抱きつかれる!

めちゃくちゃ良い匂いする!? それに、めちゃくちゃ柔らかいのですが!?


「よ、良かった……!」


「お、お、落ち着いて!? 生きてるから!」


「……ふぁ!? す、す、すみません!」


ようやく状況に気づいたのか、シオンが慌てて離れる。

やばい、心臓がドキドキする……相手はシオンで、そういう感情はないはずなのに。

違うか、《《エルクにはなくても俺にはあるんだ》》。

エルクの価値観ではシオンをそういう対象として認識してないが、今の俺の価値観だと別に身分差とかは気にしない。


「そっか……」


「しゅ、主君? 怒ってますか?」


「いや、全然。むしろ、役得って感じ」


「……ふふ、主君ったら。今度、ステラ様に言いつけますね」


「やめてぇぇ!」


そんなことになったら叱られちゃう!

そもそも、最初にシオンを世話役にする時にも一悶着あったし。

女の子なんだから、色々と気を使いなさいって。

俺ってば洋服とか髪型とかわからないから、凄い適当にやってて叱られたっけ。


「ほほっ、良き関係ですな」


「あっ……お騒がせて申し訳ありません。主君よ、こちらが領主代行のヨゼフ様で、突然きた私達を快く受け入れてくださったのです」


「ヨゼフ……ヨゼフ爺!?」


「おやおや、覚えておいでとは」


ヨゼフ爺、それは先代国王である祖父の盟友だ。

文官でありながら、優れた剣の使い手で若い頃は戦場にも出ていたとか。

それこそ戦争時代に、若き祖父と共に帝国を退けた逸話があるくらいだ。

俺は幼き頃に、何回か遊んでもらったことがある。

というより、シグルドおじさんの師匠でもあるから俺が勝手にチョロチョロしていた。


「十年前だけど、流石に覚えてるよ。そっか、代官ってヨゼフ爺だったんだ。シオン、この人はシグルドおじさんの師匠だよ」


「なんと!? ということは、私の大師匠に値するではないですか!」


「これはこれは、懐かしい名前が出ましたな。あの小僧が、もう弟子を育てているとは……歳をとったわけです」


「そんなことないよ。まだまだ背筋も伸びてるし、あの時のままのイメージだよ」


「いえいえ、それは見かけだけです。さて……積もる話もありますが、まずは状況確認を行いましょう。エルク様、体調の方は如何ですかな?」


「うん、もう平気」


「それでは、きちんとテーブルに座ってお話をいたしましょう」


そうして、俺が立ち上がるとヨゼフ爺が俺の肩を叩く。


振り返ると、そこにはにこやかに微笑んむ姿が。


その時に思い出した……この人は怒る時に微笑むことを。


どうやら、お説教の時間のようです。


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