勘違いから無理をする怠惰な王子
それから旅を続け、予定通りに村々に肉を配る。
それが思いの外感謝されたので、道中で得た魔獣も行きの村々に届けたり。
そのおかげがあちらの警戒心も溶け、色々な話が聞けた。
そして辺境付近にある村の村長から、この国のまずい状況に気づく。
「ふんふん、この辺りでも結構大変なんだ?」
「はい……若い者は徴兵され、魔物や魔獣と戦える者達も減っております」
「そっか、そうなると田畑も荒らされちゃうね」
「よ、よくお分かりになられますな」
「はは……一応、勉強してますから」
まあ、普通の王族や貴族ではわからないかもしれない。
でも俺には前世での貧しい経験や、田舎暮らしだったからわかる。
そして、それがどんなに辛いことかを。
こんなの、完全に反乱のタネになるじゃん。
「なんと……やはり、噂などあてになりませんな」
「いやいや、それは合ってますよ。とりあえず、国王陛下には俺が手紙を出しときますね」
「あ、ありがとうございます!」
もちろん国境の守りも大事だけど、それで国の内部から反乱が起きたら元もこうもない。
よしよし、シナリオが見えてきたぞ。
辺境で反乱が起きて、そこから一気に広がっていくんだ。
そして国の守りに手一杯だし、既に後手に回ってるから……うん、破滅だね。
「シオン、急ぐよ。荷物は減ってきたし、馬を一頭にしてスピードを上げていこう」
「はっ、主君の望み通りに」
早くしないと俺の死亡フラグが成立しちゃう!
嫌だ嫌だ! 俺は美味しいもの食べてスローライフ送るんだい!
そう決心した俺は、最低限の休みのみで辺境へと向かうのだった。
そして三日後、関所を超えて辺境に入る。
「やはり、廃れてるね」
「街道なども損傷が激しいですね」
「これは、急がないとだ」
そこは王都付近とは違い、荒地となっていた。
道中の村々も国境付近より酷く、痩せている者が多い。
そんな中、さらに二日かけて辺境都市付近にやってくる。
「よ、ようやく着いた……」
「主君よ、もう少しですから」
「うん……シオンこそ、無理をさせてごめん。それに、こんなことに付き合わせて」
シオンには俺に付き合う義理なんてないのに。
ここでシオンに見捨てられても、俺は文句は言えないだろう。
「いえ、お気になさらずに。私は今、とても嬉しいので」
「ん? 何かあった?」
「こうしてお役に立てる……それが嬉しいのです。あなたに救われた恩を返せるのですから」
「別に気にしなくていいよ、あれは成り行きだったしさ」
あの時は、俺がたまたまシグルドおじさんと散策をしてて……あれ?
なんだか、頭がぼーっとしてきた……フラフラする。
「いえ、そう言うわけには……主君?」
「……なんか、身体が重くて」
「し、しっかりしてください!」
そして段々とシオンの声が遠くなっていくのだった……。