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隠れた才能?

 目の前に現れたのは、赤髪をツインテールにした十二歳くらいの女の子。


 気の強い眼差しと、幼いながらも整った容姿が特徴的だ。


「あ、貴方が領主様?」


「うん、そうだよ。君は誰かな?」


 すると、すぐに後ろから母親らしき方がやってくる。

 何処かで見たような……あっ、炊き出しの時に俺に聞いていた男の子の母親だ。


「度々すみません! こら、アメリア、領主様はお仕事中なのよ」


「だって、わたしだって魔法使えるもん!」


「……ヨゼフ爺、どういうことかな?」


 後ろにいるヨゼフ爺に振り返るが、首を捻っている。

 戦えるかは別として、とりあえず魔法を使える人を集めるように言っていたから。


「一応、全ての家々に聞いたですが……隠していたのですか?」


「い、いえ! 確かに、この子は火属性の使い手かもしれないのですが……魔法の発動ができないのです」


「ふむふむ……お母さん、少しこの子と話しても良いかな? 大丈夫、悪いようにはしない」


「は、はい、よろしくお願いします」


 ひとまず、お母さんに下がってもらい、ヨゼフ爺と話してもらう。

 俺はその間に、改めて女の子……アメリアと向き合う。


「アメリアでいいのかな? ちなみに、言葉遣いは気にしないでいいからね」


「えっと……わたしは大魔法使いであるお父様の娘なの!」


「へぇ、お父さんが魔法使いか」


 別に魔法使いの子供が魔法使いの才能があるわけではない。

 ただ、一般的には引き継ぐ可能性は高いと言われている。


「そ、そうなの! お父さんは火属性魔法の使い手で、魔物とか一撃で倒しちゃったんだから!」


「おおっ、それは凄いや。それじゃ、少し撃ってみようか」


「へっ? え、えっと、それは……」


 その姿を見ると、昔のステラを思い出す。

 闇魔法が使えることが嫌で、俺に伝えるのを怖がっていたっけ。

 闇魔法は制御が難しく、暴発する恐れもあったし。

 もしかしたら……この子にも、何か訳があるのだろうか。


「……何かあるなら話してごらん?」


「わ、笑わない?」


「うん、もちろんさ」


「あ、あのね……火が出ないの」


「火が出ない……もう少し詳しく言えるかな?」


 すると、アメリアが下を向いてしまう。

 俺は焦ることなく待ち……1分ほどで顔を上げた。


「み、見てて! 出でよ火の玉——ファイアーボール!」


「ちょっ!? いきな……あれ?」


 彼女の手から火は出ることなく、この代わりぷすぷすと煙が出た。

 ……なるほど、そういうことね。

 火属性魔法の才能はあるかもだけど、掌からは出ないってことか。


「や、やっぱり出ないよぉ……」


「ふむふむ、内側に魔力が詰まってる感じかな?」


「そ、そんな感じなの! 手の中にまで来てるのに出ないみたいな……ずっと、こんな感じ」


 俺も魔法については詳しくないしなぁ。

 ただ普通は魔力があって適性があれば、どんなに威力が低くとも魔法は発動するはず。

 というか、そもそも実戦もしてない女の子を戦わせるつもりはない。

 訓練次第ではモノになるかもだけど……まずは、大事なことを聞かなきゃ。


「どうして、魔法を使いたいの?」


「だ、だって……わたしだって、何かの役に立ちたい。お母さんはわたしと弟のために働きづめで、なのにわたしはこの間も具合悪くしたり……迷惑ばかりかけちゃうの」


「そっか……残念だけど、仮に魔法が使えてもすぐには戦うことは出来ないよ」


「うぅー……やっぱり、わたしじゃダメなの? お父さんも、みんなのために頑張ってたから……わたしだって、役に立ちたい」


 ふむ、出来れば無下にはしたくない。

 というか、大体こういうパターンって、大器晩成型の人物では?

 実は主人公の仲間とかになったり。

 ちょっと、お母さんにも確認するかな。


「アルル、少しの間よろしくね」


「はい! あ、あの、アルルっていいます!」


「わ、わたしはアメリアよ! そ、その……よろしく」


「えへへ、こっち来て友達いなかったから嬉しいです」


「へっ? と、友達?」


「あれ? ダメですか……?」


「そ、そんなことないわ……友達になってあげる」


「わぁーい! ありがと〜!」


 何という微笑ましい光景……アメリアはどう見ても素直な感じじゃない。

 元気で真っ直ぐなアルルとなら、相性が良さそうだ。

 アルルに任せ、ヨゼフ爺と話しているお母さんに近づく。

 挨拶を済ませ、早速本体に入る。


「彼女、どうして魔法が出ないんです? あそこまで魔力が来てれば、多分出るはずなんですけど」


「ヨゼフ様にもお話ししたのですが、実は娘は幼き頃に大火事を起こしているのです。ここに住む前の小さな村でした」


「へっ? つまりは……使えてた?」


「はい……ただ幼かったことと、その時に夫が娘を助けるために大火傷を負って……目が覚めた時、娘はその記憶が飛んでいたのです」


 ……おそらく、有り余る魔力の暴走だ。

 そして、火事とお父さんを火傷させたことによるトラウマによって記憶を封印したのかも。

 なんか、いかにも主要メンバーのような設定だ。


「お母さん、彼女を俺に預けてくれますか?」


「へっ? で、ですが……」


「もし彼女が暴走しても、俺なら一瞬で消せます」


「あっ、あのような水魔法を使えるエルク様なら……はい、娘が良いと言ったらお願いいたします」


「わかった。それじゃ、聞いてくるね」


 二人の元に戻ると何やらきゃっきゃしている。


「わたしの方がお姉さんね!」


「えー? でも、一歳しか違わないよー?」


「一歳違ったら大きいわ。アメリアさんって呼びなさい」


「それだと他人行儀だよー。うーん……アメリアちゃんは?」


「アメリアちゃん……し、仕方ないわね」


 相変わらず微笑ましい。

 というか、それだけの才能は勿体ないよね。

 鍛錬はするとして、他に何かしらの役に立てれば彼女の自信にも繋がるのに。

 ……ん? 不発はしてるけど煙は出てるってことは、熱自体は出てるってことか。


「アルル、ありがとう。それでアメリア、少し質問があるんだ」


「な、なに?」


「あのさ、手からは出ないんだよね? でも、熱は出ると?」


「う、うん! 一度それでフライパンの取っ手を持ったら、熱くなって火傷しそうになったの」


 火が出ないけど、熱は出る?

 ……やっぱり使えるじゃん! というか、むしろ攻撃より必要!


「アメリア、もしかしたら君に仕事があるかもしれない」


「えっ!? ほ、ほんと? わたし、何でもやるわ!」


「決まりだね。それじゃ、お母さん達に説明していこうか」


 よしよし、別に魔法を攻撃に使えばいいってもんじゃない。


 この子の魔法があれば、俺の生活は優雅になるぞ〜。


 何より、こんな重要そうなキャラは味方にしとかないと。



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