表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/36

本人は破滅回避したと思ってる(ただの善人ムーブ)

その後、少しだけ落ち着いたので改めて話を聞くことに。


椅子を用意された俺たちは、ベッドに腰をかけるユルグさんと向き合う。


ちなみにアルルは安心したのか、ユルグさんの膝枕で寝てしまった。


「改めて礼を言う。アルルも助けてくれたそうだな」


「まあ、成り行きだから気にしないで」


「またそれか……本当に変な奴だ。人族の中にも良い奴はいるのは知っていたが、お前のような子綺麗な格好をした人族は大体がろくでもない奴らだった。新たに領主がきたが知らないが、どうせロクな奴じゃない」


「……別に獣人や人族に関係ないよ、いい人もいれば悪い人もいるし。その人個人を見ないと」


だから、《《領主》》の俺に恨みは向けないでぇぇ!

これ、俺は領主だって言わない方がいいかなぁ。

恨みを減らすために言うか迷ってたんだけど。


「それはそうだが……この辺境の有り様を見ろ。王都にいる連中は、オレ達の事などどうでも良いと思っているに違いない」


「それは……みんな余裕ないから。でも、そうじゃない人もいるよ」


「お主みたいな奴が増えたらいいがな。だが、実際に……これでもし、アルルに何かあったら……俺は領主や貴族達を許しはしなかった」


「……無理もないや」


ひぃ!? ほらァァァァ! めちゃくちゃ殺気立ってる!

やっぱり、これは破滅フラグの一種の可能性高かったよ!


「ふっ、安心しろ。お前のような高貴な者もいるとわかった。どうせ、何処かの貴族子息の

気まぐれだろうが……オレとアルルが救われたという事実に変わりはない」


「あはは……と、とにかく、良かった。それじゃ、俺達はこれで」


冷や汗が止まらないので、俺は急いで立ち上がる。

すると、ユルグさんが手を掴む。

ひぃ!? バレたかな!?


「待て。なにもお返しせずに良いのか?」


「う、うん、そういうのは良いよ」


「そういうわけにはいかん。ちょっと、ついてこい」


仕方ないので、アルルを抱っこしたユルグさんについていく。

家を出て村のはずれにある小さな小屋に到着する。

そこには……体調二メートルを超える茶色い牛さんがいた。


「モウルだ! うわぁ……図鑑では知ってたけど実物は初めて見た!」


「ほう、モウルを知っているのか」


「そりゃ、そうだよ! だって《《絶滅危惧種だもん》》!」


俺が思わず童心に帰ってしまったのは仕方ない。

モウルとは牛乳を生み出す魔獣なのだが、その生態は大人くて暑さや寒さに弱い。

故に人族に捕らえられたり狩られたり、気温の変化で数を減らしてしまった魔獣なのだ。

そして、前世の記憶が蘇ったいま、牛乳が欲しいに決まってる。


「ああ、もうここにいる数頭しか残っていない。生態系が変わる中、もう片方のバイスンにとって変われてしまった」


「確かバイスンは生き残るために進化したやつで、凶暴で肉が美味しいんだっけ?」


「ああ、その通りだ。そしてモウル肉は普通だが牛乳は格別だ」


「うんうん、俺も数えるくらいしか飲んだことないよ。でも、どうして生きているの?」


さっきも言ったが、モウルは暑さに弱い上に寒さにも弱い繊細な魔獣だ。

故に深い森の奥地などの涼しい場所でしか、もはや生息は厳しいと言われてる。

氷魔法を使える者もいないので、飼育も中々に厳しいだろう。

少なくとも、王都では聞いたことはない。


「俺は狩りのために森によく行っていてな。そこの川水を汲んできたり、飲ませたりしていた。時には散歩に連れて行ったりな。あとは徐々に慣れさせていった」


「はぁ〜めちゃくちゃ大変じゃないですか。それを一人で?」


「うむ、森で戦えるような男はオレ一人しか残っていない。ともかく、この牛乳を礼として受け取ってくれ」


「わぁ……ありがとう!」


おぉ〜! これで牛乳が飲めるぞ! それこそ、アイスなんかも作っちゃうかも!

そっか……今更だけど、氷魔法を応用すれば領地開拓に貢献できるかも。

それに、この子達を救える。


「ねえねえ、大量のバケツとかある?」


「ん? それならそこにあるが……」


「あっ、ほんとだ。じゃあ、あれに入れちゃうね」


小屋の端に大量にあったバケツに、ありったけの魔力を込めた氷を作る。

おそらく、これで早々溶けることはないはず。

この氷は普通の氷ではなく、俺の魔力を込めた特別製で暑さには負けない。


「な、な、なんだと!?」


「ちょっと、アルルが起きちゃうよ」


「う、うむ……しかし、氷魔法だと? 使える者が存在したのか」


大陸の北の方には氷山があるらしいが、それでも氷魔法は使えないとか。

俺が使えるのは、きっと氷の仕組みを知っているからだろう。

後は水から氷にする際にかなり魔力を使っている気がするので、普通の魔法使いには難しいかな。


「うーん……ここにいるじゃない」


「そういうことではなく……はぁ、お主の主人はいつもこんなか?」


「ふふ、そうですよ。驚いてたらきりがないですから」


「なるほど……変な貴族もいたものだ」


何やら褒められてる気がしない……解せぬ。


その後牛乳とボアーズの一部をもらい、一通り治療や氷なども作ったら村を後にする。


ふふふ、これだけやれば恩を売れたでしょ。


俺が領主とは言わなくても、あの感じなら反乱もなさそう。


よし、この調子で破滅フラグを消していきますか〜!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ