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アルル(イベントだとエルクは思っている)

北に向けて馬を走らせていると、突然馬が立ち止まる。


なんだろと思いシオンを見ると、真剣な表情をしていた。


「シオン? 魔獣や魔物がいた?」


「いえ、これは……悲鳴?」


「ほんと? それなら助けに行こう」


「ふふ、主君ならそう言うと思ってましたよ」


もしかしたら、何かしらのイベントかもしれないし。

そうじゃなくても、見捨てるのは気分が悪い。

シオンの耳を頼り馬を走らせていると、そこにはボアーズに追われている子がいた。


「ブルルッ!」


「だ、誰か助けてぇぇ……!」


その子の足はかなり速いが、徐々にボアーズに距離を詰められている。

あのままでは逃げ切ることは難しいだろう。

俺はすぐに状況を判断し、シオンに伝えることに。


「そのまま馬を全力疾走! 俺が魔法を放つから!」


「はっ! 行きます!」


ここからシオンが助けに行くんじゃ間に合わない。

俺はその子とボアーズの間に意識を集中させる。

間違っても、その子を怪我させないように。


「大地よ凍てつけ——アイスロード(路面凍結)


「ブヒィ!?」


その子が通り過ぎた瞬間、そこに氷の道ができる。

それによって、ボアーズが盛大に転ぶ。


「今のうちにこっちに!」


「ふぇ!? は、はい!」


その子が戸惑いながらも、こちらに向かって走ってくる。

こうなれば、後は何も心配いらない。

特に示し合わせることなく、シオンが俺を抱えて馬から降りた。


「シオン! 任せたよ!」


「御意」


シオンはその子を追い抜き、起き上がったボアーズを一刀の元に仕留めた。

うんうん、流石はシオンだ。

俺はその間に、走ってきたその子に向き合う。

その子には可愛らしい顔つきに、ピンと立ったケモ耳とフワフワしてそうな尻尾がある。

ということは、何かしらの獣人ということだ。


「君、大丈夫?」


「ひゃい!? あ、あの、えっと……」


その子はオロオロしたり、ビクビクしている。

申し訳無いけど、少し可愛らしい。

多分、本人的にはそんな余裕ないだろうけど。


「はいはい、落ち着いて。俺達は、君の敵じゃないから」


「は、はぃ……その、助けてくれてありがとうございます」


「はい、どういたしまして。それで、君の名前は? ちなみに、俺はエルクっていうよ」


「ぼ、僕の名前はアルルです!」


「アルルか、よろしくね。とりあえず、怪我を治しちゃおうか——ヒール」


所々から血が出ていたので、それらを消毒付きのヒールで癒す。

アルルはその瞬間、目を見開く。

きっと、回復魔法が珍しいのだろう。

すると、ボアーズを引きずってシオンがやってくる。


「主君、とりあえず持ってきましたよ」


「うん、ありがとう。あのね、この人はシオンって言って」


「おじちゃんを助けてください! なんでもしますから!」


シオンを紹介しようとすると、アルルが俺に縋り付く。

その目は必死で、今にも泣き出しそうだ。


「はい、もう一回落ち着いて。君はどこから来て、何のために一人でこんなところにいたの?」


「え、えっと……おじちゃんが怪我と病気で動けなくて……だけど、誰も助けてくれなくて……僕、薬草とか探しに出てきちゃった。魔物とか避けながら森に行ったら、ボアーズに見つかっちゃったの」


「ふむふむ、怪我をしたおじちゃんのためにね」


何だろ、これって何かのイベントだったりするのかな?

よくあるけど、大事な人が亡くなった恨みを領主とかに向けるとか。

この子がいずれ成長して主人公の仲間とかになったり、もしくはこの子が死んじゃっておじさんって人が復讐鬼になったり……そういう展開は見たことある。

どちらにしろ、放っておいたらまずいよね。


「だ、だから……!」


「わかった。それじゃ、そこまで案内してくれるかい? お兄ちゃん達が助けに行くから」


「……ふぇ? た、助けてくれるの?」


「うん、もちろん」


「ふ、ふぇぇーん!」


すると、その子が大きな声で泣き出す。


今度は俺がどうしていいか分からず、オロオロしてしまうのだった。

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