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女詐欺師と大富豪  作者: 田崎美夢


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2/2

思い出すのは・・・・

日常生活にバタバタと追われて、メインの話の続きに躓き気持ちが折れ掛かっていたときにこちらの続きを思いついたので書きました。

 エルドラは目を瞑って昔を思い出す。

 思い出したくない記憶と大切な記憶とが綯い交ぜになっている頃の記憶。エルドラはエルドラの母の不倫の末に出来た子供だった。そのためエルドラは父親を知らない。しかし現実はエルドラは父親に会ったことが在った。一人で近くの公園で遊んでいたとき知らない男に声を掛けられた。当時3歳にはなっていなかった。だから知らない男から声を掛けられても警戒心も薄かった。男は単刀直入に自分が父親だと言った。エルドラは「うん」と言い、頷きはしたが男の言葉を信じなかった。というよりも、当時のエルドラは父というものに興味がなかった。普通なら父親だと名乗られれば心も動こう。しかしエルドラは違った。(なんだこのオッサン?!)くらいの感覚だろう。毎日を砂遊びに心奪われ、ブランコに夢をみ、ジャングルジムに己の可能性を感じる事に忙しかったのだ。父と名乗るオッサンに用はない。当時のエルドラはそんなふうに考えていたのだ。

 しかし、その父と名乗る男は毎日のようにエルドラを尋ねた。初めて会った翌日から毎日のようにお土産とともに現れるのだ。今日は砂遊びに使えるバケツとスコップ。次の日はブランコでも安心の素敵なズボンとスニーカー。そんなふうにエルドラの気を引くような土産とともに現れる男に興味を持ち始めたエルドラは父と名乗る男の言葉を信じる様になっていった。

 幼い子供にアメを見せ興味を持つなと言うことなど無理な話だろう。

 男はエルドラが話を聞いてくれるようになると、母親と何処で暮らしているのか、母親に男が居るのかなど幼子に聞くような内容では無いことも尋ねた。

 男の話に返事を返し質問に答えるようになって一月ほどすると、安アパートから母の荷物と母親が居なくなっていた。母親が自分を捨てて出ていった事を理解できる年齢でなかったエルドラは、母親が居なくなって一週間程した頃、お腹が空いて道端で蹲っていた所をアルディマと名乗る女に拾われた。そのアルディマと名乗る女は詐欺師だった。そうしてエルドラは詐欺師としてこのアルディマに育てられることとなった。

 アルディマと暮らすようになってエルドラは毎日が幸せだと感じるようになっていった。母親と二人で暮らしていたときは自分が何を感じていたのか思い出せなかった。母親の気を引きたがっていたのか、怒られたくなかったのか、何を考え何を思っていたのかよく思い出せなかった。それは空っぽのようにも感じた。しかしアルディマと暮らすようになって、他人とのお喋りが楽しいことを知った。笑顔で笑っていると幸せだと感じれることを知った。何より人とは愛情というものがあるのだと知った。エルドラの幸福の始まりだった。

 アルディマは詐欺師だったが、エルドラをしっかりと学校に通わせた。エルドラは直ぐにでもアルディマを手伝おうとしたが、アルディマがそれを許さなかった。結局アルディマとの喧嘩の結果エルドラは国内でも有数の大学を卒業した。

 それなのに現在の仕事は詐欺師である。

 それはひとえにエルドラがアルディマを本当の親だと想い、慕っていたためだ。

 大学での成績も決して悪くは無い。国内でも有数の大学だ。卒業していれば高望みでもしない限り勤め先など選り取り見取りだろう。それでもエルドラは数多の誘いを断り、詐欺師の道に進んだ。大学を卒業してからはアルディマと師弟関係になり、厳しく詐欺の方法を教わっていった。

 そして数年前に、下調べを終えた獲物に一人で詐欺を行いめでたく(?)免許皆伝となったのだ。

 「下調べは私もかなり手伝ったから、これは大負けに負けてだけどね」

 と言われたが、エルドラはこれでやっとアルディマを楽させてやれると喜んだ。

 そんな昔の事を思い出していると、ケントが「着きましたよ」笑顔でそう言ってきた。

 その言葉で目を開け窓の外を見ると、いつの時代の貴族の屋敷だよと思わずには居られないほどの建物が建っていた。

 「さ、降りて下さい」

 そう言われ、差し出された手に思わず手を乗せてしまう。ハッとして直ぐに手を引っ込めようとしたが、ケントに手を握られエスコートされるように車から降りる。降りた場所でそのまま立ち尽くしていると、聞き慣れたエンジン音が近づいてきた。

 エルドラの車だ。ケントに指示された従者がエルドラの車をショッピングモールから運転してきてくれたのだ。そのエルドラの車から似つかわしくないほどの大男が降りてきた。

 (何もこんな巨体な男性に頼まなくても・・・・)

 ほんのちょっとの申し訳なさと、車が心配でしょうがない本心をひた隠しケントに作り笑いを向ける。

 「いい加減手を放していただいても?」

 エルドラがそう言うと、態とらしく今気がついたというように微笑み返してきた。

 「おっと、これは失礼」

 そう言うとケントはエルドラの横に並び左腕に腕を絡ませられる様に輪にする。

 エルドラはその姿に気の遠くなる様な感覚と、イラッとする感覚に襲われる。

 一つ咳払いをして明確に意思表示をすることにした。

 「私は何故ここへ連れてこられたのでしょうか?私を誘拐しても身代金なんて取れませんし、ましてや復讐なんて考えているなら即刻中止することをおすすめします」

 エルドラの言葉にケントはお腹を抱えて笑い出した。目の下を軽く擦ると首を振る。

 「確かに無理矢理ではあったけど、誘拐や復讐なんかじゃないよ。お礼をしたかったんだ。ずっと・・・。君と君の師匠であるアルディマに!」

 その言葉にエルドラは目を見開いてケントを見つめる。エルドラの親であり師であるアルディマとケントの関係を想像できずに・・・・・・。

誤字脱字報告よろしくお願いします。


段々と寒くなってきました。

お体ご自愛下さいませ。

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