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第33話 恐怖

「っ!?うわぁぁぁぁぁ!」

「なに!?」

(どこかで見られたか!?それとも、強化種か!?)

「『フロストノヴァ』!!」

「ダメだ!!やつにその魔術は効果が薄い!!」

「っ!?」


サイクロプスは凍らせた足場を何も無かったように右腕を上げて攻撃を仕掛けてくる。


「ふっ!!」

『ギャァァァァ!?』

「逃げるぞクロム!!」


ヴァイオレットは1本の長刀でサイクロプスの右手を切る、サイクロプスがそれを痛がっている時に逃げ出す。


「知能は、低いようだな」

「わ、悪い、ヴァイオレット...もう一度、魔術を」

「...まさかっ、耳に魔力を込めろ!!」

「は?」


耳から魔術使えってか?バカみてぇなこと言ってんじゃねぇよ、そんな馬鹿な事を一瞬考えてすぐに後悔することになった。


『がァァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!!!!!!』


サイクロプスがまたでけぇ声をだす、怒りか威嚇か、とにかく魔術を...まじゅ、つ、を...


「なん、で」


呼吸が苦しくなる、何も聞こえなくなる。

体が、震えて...あんな、ただのデカブツに、ただの...た、だ...の。


「目ぇ覚ませクロム!!」

「ぐっ、がぁ!?」

「覚めたか馬鹿」

「はぁ、はぁ...何が...起きた?!」

「『咆哮(ハウル)』と言う魔術のみたいなやつだ」

「はぁ、はぁ...」

「...クロム、ここから真っ直ぐ行ったところに上に上がる階段があるはずだ」

「え?、ヴァイオレットは?」

「ここでやつを止める」

「だ、ダメだ...殺されるぞ」


わかってしまった、ヴァイオレットは俺を逃がそうとしているのだ、あの化け物に怯えている俺を。


「さっき言った通りだ、お前が生きて帰りさえすれば()()は負けてない、お前に託したいんだ」

「で、でも俺は...」

「早く行け!!」

「っ!?」

「時間はねぇんだぞ!!」

「ああああァァァァァァァァ!」

「ふぅ...そうだそれでいい...来いよ、バケモン」








クソっ、クソっ!

無我夢中で俺は走り続ける、走って走って走る。

クソっ、クソっ!!

そうやって進んでいるとつまづいて転んでしまう。


...怖い、あの1つ目の化け物が、前に戦ったあの猿の方が立ち向かえた。

それなのに、それなのに。


「あの時から、何も...何も変わらねぇじゃねぇか!!また、人に守られて!!また...⬛︎⬛︎⬛︎のように...」


強くなるって決めた、実際強くなった、そんな事はなかった...近く魔物の呻き声が聞こえる。


「......」


もう、諦めてしまおうか...こんな人生、もう意味がないんじゃないか...


『...ひとりで苦しまなくてもいいんだよ?だから』


俺を襲おうとした魔物が黒い矢に貫かれる。


『少しは、背負わせて欲しいな』

「クロム!!」

「良かった!無事か!!」


E組のみんなが何故かここにいる、地上に戻って人を呼んでるはずだがここにいる。


「なんでここに?」

「助けに、来たんだよ」

「たすけに...?」


俺たちを助けに...こんな危険な場所に。


「...」

「は、早く逃げましょう!!もう体が震えてそれどころじゃないんだよぉ!!」

「あれ?でもヴァイオレットさんは?」


後ろから激しい音が聞こえて来る。


「ま、まさか...」

「大丈夫ですよ!ヴァイオレットさんはベテランですから!!きっと生きて逃げますよ!!」

「...」

「...助けに、行こうよ」

「っ!?」


恐怖で染まった俺を置いといてリリは話を続ける。


「まだ戦ってる、きっと厳しい状態のはず、だったら助けに行こうよ」

「でも、僕たちが行って助けになるのかな...足手まといになるんじゃないかな、やっぱりマリスを待った方がいいんじゃないかな...」

「でもその間に死んじゃったら?私は、一生後悔する」

「それは、たしかに...そうかも」

「それに、私は逃げたくない」

「...!」


俺は逃げた、死にたくないから、俺は1度諦めた、こんな思い、もうしたくないから、リリは震えていた、泣きそうな顔していた、それなのに


リリは逃げなかった。


「でもやっぱり」

「行こう、助けに」










どれくらい戦った?クロムは逃げ切れたのか?


「クソ.....」


潰れてしまった自分の足を見て悪態をついてしまう、サイクロプスの攻撃は直撃はしていないがやつの投石によって足を負傷した。


「上手く、いってたんだけどなぁ...」


剣士にとって動けない、なんてことは当たり前だが致命的だ、だがこの状況なら俺のスキルが光る。


「...」


先程のクロムの顔が頭をよぎる、咆哮(ハウル)に当てられ、恐怖に染まった顔を。

あれではもう戦えないだろう、だから逃がした、後悔は...ないと言ったら嘘になるだろう、だが。


「遺せるものは、残さねぇとな」


サイクロプスは右腕を上げ、攻撃をしかけて来ようとする、スキルを発動、右手に力を入れる。


「右腕くらいは持っていくぞ」

「一一一」


その瞬間、サイクロプスの上半身が火に包まれる、そしてサイクロプスが後ろに倒れ、全力の一撃が空振った。


「一一直撃!!」

「ヴァイオレットさんは!?」

「あ、あそこ...」

「うわぁぁぁぁぁ血だらけだぁ!!」

「カヤ!クロム!回復魔術をお願いします!!」

「カヤ!!頼む!!」

「おい!?クロム!」


火が消え、サイクロプスは自分を燃やした元凶を睨みつける。


「俺はあいつを何とかする」


その目にはもう恐怖は感じなかった。

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