第32話 順調
正直、舐めていたのかもしれない
Eクラスの全員を。
「ベルリ!そちらに行きました!」
「任せて!!リリ、シリカ!!詠唱を!」
対敵したのはゴブリン8体とオークが一体、既にゴブリンは全滅している。
前衛はエル、マリス、ベルリ、後衛にシリカとリリだそして。
「カヤ!ヒールを!」
「『主よ、我らを癒したまえ』」
ヒーラーにカヤ、カヤはヒーラーとしての才能があった、しかも範囲回復魔術を使える、ちなみに俺も使えるけど正直カヤの方が質がいい、なんでやろ。
「シリカちゃん!合わせるよ!!」
「え、ちょっと待ってくださいまし!!」
「バルサ!シリカとリリを守れ!!」
「...」
バルサは基本前衛だが、シリカとリリの詠唱を始めると同時に後衛に回ることで安全に魔術を酷使できるという作戦だ。
今戦っていないのは俺とフィーアのみ、俺は実力が十分すぎると、今は見ていろと言われた、フィーアはまだ精霊魔術の制御が荒く、今使ったら他の奴らも巻き込んでしまうと考えた。
「行けます!シリカさん!!」
「行くよ!『闇斬』!!」
「『風斬』!!」
「マルスさん!あの大きいのにトドメを!!」
「はあぁぁぁぁ!!」
一閃、マルスはオークの頭から真っ二つ、これで第5階層の攻略成功だ。
「さて、そろそろクロムもパーティに入ってもらう、ダンジョンはだいたい5階刻みにモンスターのレベルが上がる、ここまでは無傷だが次からは警戒しろ」
「「はい!!」」
ということで次からは俺も参戦だ、張り切っていくぞ。
「クロム、おめぇ前出すぎだ、それに強すぎだ」
「ほえ?」
「いくつ魔術を使えるんだよ、しかも完璧すぎる、タイミングも威力も、なんださっきの、マルスとベルリにも被害出さずになんであんなに魔術を連射出来んだよ」
「頑張った」
「頑張って出来んなら苦労はねぇんだよ」
ということで再度観戦することに、今はフィーアの精霊魔術を見ることに、にしても精霊魔術の威力が想像以上、10体以上いたフレイムウルフを一掃した、精霊魔術はやっぱり普通の魔術より
「そろそろ時間だな、帰還するぞ」
「あ!もうそんな時間ですか?」
「あぁ、もうそろそろ暗くなってくる時間だ、ダンジョンは時間の確認できる手段をもっている方がいい」
実は今日でダンジョンアタック4回目である、流石にもう慣れたようで、みんな今日の反省会を始めてる。
ちなみに今日は初めて9階層まで来れた。
「にしてもカヤにこんな才能があるなんて知らなかったよ!!」
「クロムのおかげだよ!戦えないなら別の戦いをしようってね」
「賭けも賭けだったけどね力になれて嬉しいよ」
「お前には『鑑定』があるだろ?ならそれで見ればいいだろ」
「あ」
「...え?」
「鑑定ってあの?」
「...あ~わりぃ、知らなかったのか」
「そりゃ言えるわけねぇだろ、トラウマ植え付けた本人が何言ってんだ」
「ん?」
こうやっていつも帰路に着く、ダンジョンの入口まで。
「あいつらに鑑定した方が楽じゃねぇか?才能もわかるんだろ?」
「でも5歳の時の鑑定を教えて貰えばいいんじゃないの?」
「スキルは成長するんだよ、成長したスキルを知れば自分の得意なことを学べる、割と重要だ」
「でも許可なしで鑑定するのはなぁ」
鑑定は使うと使われた側になんとなくわかるそうでそれを知らなかった俺はこのヴァイオレットにボコボコにされたのである、あれ以来鑑定は人に対しては許可なしにすることは無くなった。
「そういえばお前杖は使わないのか?」
「あぁ...素手で魔術使うのに慣れたからいらないかなって思ったんだよ」
「俺の知ってる魔術師は杖を触媒にして魔術を使うんだが、そいつが言うには杖があると無いとじゃ術の安定性が違うらしい」
「ふぅん...」
実は杖は一応常備してある、村を出る時にもらったやつだ、アイテムボックスの中にずっと入ってる。
そんな話をしているとダンジョンの入口に着く。
「次は2日後か」
「いや、休息日があるから3日後にしよう」
「おう、そうか、それじゃあまたな」
そうやって1日が終わっていく。
「貴方達ダンジョンに行ってるってほんと?」
「ホントだよ、なんか噂になってる?」
寮に戻り、本を読んでるシャルと会話する。
「ええ、悪い意味で、ね」
「悪い意味かぁ...」
まぁだいたいどんな感じか想像できるけど。
「ダンジョンってどんな感じだった?」
「...どんなって、洞窟にモンスターがいるみたいな感じだよ」
「ふぅん...」
そう言ってシャルは背を向け本を読み続ける、本好きなのかな?
そろそろ寝るか、それにしてもクラスの奴らは全員強くなった、数ヶ月前とは大違いだ、順調に俺たちは強くなってる。
大丈夫、今のところ上手くいってる。
「さて、今日はとうとう十階層の攻略だ、気を引き締めて行くぞ」
3日後、今回は10階層を目指してダンジョンに入る。
「昨日も言った通り5階層ごとにモンスターは強くなる、確かここだと10階層からミノタウロスが出てくるはずだ」
「ミノタウロスって確かCランク相当のモンスターじゃないですか!!」
「そうだ、だがこのダンジョンのミノタウロスは普通のやつよりひとつ、いやふたつはランクが低いと思ってくれていい、魔物の身体を作るためのさてそれはなぜでしょう」
「魔力ですか?」
「おしい、半分正解だ」
ヴァイオレットは得意げに首を振る。
「あれ、違うのか?」
「魔物の肉体を構成しているのは魔力ではなく魔素量だ」
「魔素?」
「それほど濃くなければ人体に影響は少ないんだが、魔物の強さには影響が強い、そうだな、昨日戦ったホーンラビットがいるだろ?」
「あの可愛いウサちゃんのこと!」
ホーンラビットは角の生えたうさぎでかなりの脚力で頭部の角で刺してくる魔物だ、可愛い過ぎて苦戦した記憶が新しい。
「昨日は装備が少し凹んだ程度だったがそれは魔素が全くないこのダンジョンだからだ、--中級ダンジョンならその程度の装備を貫いて身体も貫くだろう」
「「「ひぃぃ」」」
「脅すな」
「ははっ!」
さて、会話が弾んでしまったが、時間は限られてるからなそろそろ行かねぇと。
......なんだ?魔力が、奥に集まって...
「それじゃあ行くか」
もう少しの時だった。
「...え?」
「なんだ?さっきの」
ダンジョンの奥から小さな慟哭が響いた、人のような、でも人ではないような声だった。
なんだ?この声、震えが止まらない、頭が割れそうだ。
「--なんだ?」
そして。
『『『『『グガァァァァァァァァァァ!!!!!!!』』』』』
「ひっ!?」
「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
「な、なんだこれ!?」
「は?」
「クロム、クロム!!」
「っ!?ヴァイオレット!何が起きて!?...ヴァイオレット?」
「--この声...まさか...いや、とにかく逃げるぞ!!」
「え、でも」
「早く行くぞ!!間に合わなくなる!!」
「...分かった、みんな!早く行くぞ」
「う、うん!!」
今は7階層、急いで俺たちは6階層に向かう。
「モンスターは階層を移動できない、別の階層に行けば大丈夫だ」
「...なぁ、ヴァイオレット」
「...なんだ」
「この声、下から聞こえないか?」
「...」
だとしたらいいんだ、モンスターは階層を移動できない、なら、大丈夫のはずなんだ。
「...ああ、そうだ、そのはずだ」
「...じゃあなんで」
「こんな所に、いるわけないんだ!!《階層壊し》がッ」
「はっ??」
階層、壊し?...まずい!?
激しい振動が俺たちを急かす。
「みんな!!急げ!!」
その瞬間、ダンジョンが崩壊した。
壁に、地面にヒビが入る、足場が悪くなった道で全力で走る。
そんな時、後ろの足場が崩れた、そこにはシリカとリリがいた。
「うそっ!?」
「クロム!!」
「リリ!!シリカ!!」
「ダメだ!!クロム!!」
「...チッ」
ヴァイオレットの静止を無視し、下に落ちるリリをつかみ、風魔術で遠くに吹き飛ばす、シリカはいつの間にかバルサが助け出していた。
「よし、俺も...がっ!?」
「クロム!!」
「クソっ!お前ら!!逃げて助けを呼べ!!」
崩れ続けるダンジョンからの落石が頭に当たり、そのまま落ちていく。
着地を、しなきゃ...でも風魔術の出力を間違えたら俺の体はバラバラになる。
できるか...俺に。
「その必要は無い」
「ヴァイオレット...」
上から落ちてきてくれたであろうヴァイオレットが俺を抱き抱えてくれた、そしてヴァイオレットが剣を壁に刺し、落下の勢いを殺すことで安全に降りられることができた。
「治癒魔術は使えるな?頭から順にかけろ、ほかのガキどもは無事だ」
「ありがとう、助かったよ」
「...ここは、9階層か」
「...あれ、こんなに広かったっけ?」
「広くしたんだ、この惨状を見てやっと確信した、あいつだ」
よく見ると壁ではなくいくつかの層が吹き抜けになっているようだ
そうして、ようやく姿を見ることができた。
「《階層壊し》、『サイクロプス...』」
「でか、すぎんだろ」
衣服は履いておらず、体長は10メートルは超えているような体で、簡単に人を噛みちぎれるであろう牙、そして不気味な1つ目の怪物だ。
階層を破壊した時に上から降ってきた瓦礫に身体を隠してヴァイオレットと会話する。
「やつは目はいいが耳は悪い、ちょうど瓦礫はこの部屋の端に広がっている、このまま上に戻るぞ」
「倒すって選択肢は?」
「やつは普通の個体でも簡単には死なない、それにあれほどの巨体は見たことがない、魔素が薄いこのダンジョンでは有り得ないことだ...万が一もあるこのまま逃げ切る」
ヴァイオレットがこっちを見る。
「冒険者はトラブルがつきものだが、その場合は逃げることを最優先しろ、生き残ればいい、蛮勇なのにならなくていい、生き残ってその情報を伝えろ、そうすればトラブルは想定できるピンチに変わる、そうなればいくつかの命は助けられるようになる、数多の生き残りの繋がりを冒険者と言うんだ」
初めて冒険者がかっこいいと思えたかもしれない、生き残りの繋がり、か。
んじゃ、俺達も生きて帰んなきゃな。
そう思い、ヴァイオレットの方に目をやる。
彼の頭上には、身体の半分が入るような巨大な目が合った。
「........は?」




