第31話 ダンジョン
ダンジョン、それはこの世界に点在するモンスターの巣窟の総称である。
許可を取ったのはヴァルキリア近辺にある、学生御用達のダンジョン、難易度も低いが報酬はほとんどなく、普通の冒険者は近寄らないため学生ダンジョンなどと言われている。
なんて特訓に最適な場所だろうか。
「私たちダンジョンに行くの!?」
「そう」
「モンスターと戦った経験なんてないのですが...」
「誰だってそうでしょ」
「だからってそんなの早すぎるでしょ!!」
「大丈夫だって、ねぇ、ルッピィ先生」
「...え?あ、はい!ヴァルキリアの学生なら誰でも申請が通ればダンジョンに入れますよ!」
「ほら、だから」
「あ、でもちょっと条件がありまして...」
「え」
「そのぉ、流石に1年だけだと心配だという声が多く...Dランク以上の冒険者が同伴ならいいよということで...」
「まぁまぁミナに頼めば」
「あ、『妖精剣』様からクロム君に伝言です」
「ん?」
「『私は行けません』だそうです」
「...ふぅ」
「知ってる?ため息をすると幸せが逃げるんだよ?」
「ため息っていうのは緊張をほぐす健康法なんだよ」
翌日、休息日にララと一緒に下町に遊びに来ている。
「それにしても2人だけってすごい久しぶりだね!!」
「そうだね、あの村でもだいたい3人だったから、こうして2人だけなのは初めてかも...ララ?」
「...ねぇクロムあれなに?」
「あれは...なんだろう...」
俺たちの目線の先には、奇妙な色の奇怪な形をした馬車だった。
すると、中から人が少し高いステージに出てきて様々な芸を始める。
「わぁ!すごい!!」
「サーカスみたいだな」
「さーかす?」
「そう、あんな感じに芸をしてお金稼ぐ人達のことだよ」
「え!?じゃあお金払わなきゃいけないの?」
「ん~流石に俺たちは通りかかっただけだし、払う義務はないと思うよ」
「そっか...じゃあ見に行こ!!」
「興味あるの?」
「うん!見てみたい」
「わかった、じゃあ行こうか」
サーカス集団は、想像道理のパフォーマンスだったが、実際にこの目で見るとかなり面白い。
すると、サーカスの団員の2人が氷と火の魔術を披露する、それはとても綺麗だった。
「わぁ!すごい!!」
「綺麗だ」
「ね!!」
そんな時だった。
「危ない!!」「避けろ!!」
「えっ」
「ララ!!」
お手玉のように使っていた鉄塊がステージの下にいたララの方へ落ちてくる、その瞬間、目に前にでかい人影が現れる、その人影は鉄塊を細い剣で弾く、その鉄塊は人がいない場所に落ちた。
「嬢ちゃん無事か...ってクロム!?」
「え、お前『深紫の閃光』じゃねぇか!!」
「...え、だれ??」
「久しぶりだなぁ!!クロム!!」
「2年ぶりか?深紫の閃光もちゃんと真っ当な冒険者になったんだな」
「まぁな、てかその2つ名辞めてくれ、むず痒い」
「え~いいじゃんかっこいいじゃん」
「私達がヴァルキリア来てから2人は知り合ったんだよね」
「攫って」
「攫われた」
「????」
「「どわっはっはッ!!」」
深紫の閃光、もといメルト・ハーバーはアデヴァーレであったミナが追っ払った輩のリーダーだ、容姿は優男のため性格と行動が全くあっていない男なのである、色々あって今は真っ当な冒険者になっている。
今は助けてくれた礼に飯を奢ると言って近場の飯屋に入ってきた。
「にしても、クロムおめぇ隅におけねぇなぁ」
「ん、うるせぇよ」
「隅に置けないって?」
「まあ気にしなくていいよ、ところでなんでヴァルキリアにいるんだ?ひょっとしてミナみたいに教師になりに来たのか?」
「あのエルフいんのかよ...それとは関係ねぇよ、今はただ旅をしてるだけだ」
「そっか」
「にしてもお前魔力多くなったか?一瞬分からなかったぞ」
「え、まじか!?」
「あぁ、まあ2年だからな、それくらい成長はするか」
正直強くなった実感がないから他者からの賞賛はちゃんと嬉しい。
そうだ。
「深紫の閃光、今ランクいくつだ?」
「Bだ」
「B!?すごい!」
「よしっ!!」
「え?」「ん?」
「深紫の閃光!お前に依頼を頼む!!」
「...へぇ聞こうか」
「ということでBランク冒険者、深紫の閃光さんです」
「よろしく頼む」
「えぇ?昨日の今日で?」
「Bランクって1番上から何番目?」
「3番目」
「すごい!!」
「よろしくお願いします、えっと...深紫の閃光さん」
「...ちゃんと名前で言えばよかったな」
「後悔しても遅いぞ」
1週間後、準備をしてEクラスとともにダンジョンに向かう、そしてダンジョンの目の前で深紫の閃光を紹介する、やっぱりみんなも2つ名に注目しているらしい。
「それにしてもこんな装備貰ってもいいんですか?」
「あぁ、その装備はギルドから貰えるものだ、性質は低いがこの程度のダンジョンなら問題ない、タンクはいないが治療師が2人いるからな、十分だろう」
「一応ポーションをみんなに渡しておくよ」
準備は万端、実は深紫の閃光からはやりすぎだと言われたがまぁこれだけやれば心配ないだろう。
「よし、それじゃあ行くぞ、いざ!ダンジョンへ!!」
暗闇の中、冷えた空気、そこは一切の生を受け入れることは無い、そのはずだった。
亀裂が生まれ、巨体が産まれる、その巨体は何も持たず産まれてきた、いや、一つだけ持つものがあった。
人間を、殺せ
その一つだけだった。




