港町に訪れてから十日後
朝、光の領域が壊れた教会の隅々に広がり、闇が後退していく頃。
地下に幽閉されていたルキヤも救助されて、裸だった私とルキヤにスペロが教会の中にあった毛布を手渡してくれた。魔封鉱石の拘束具が外された事で、私は角消しが出来た。
ニルが駆け寄って来て、私とルキヤの拷問で受けた傷を回復してくれたけど、どちらかと言うと重傷なのはスペロやウルティオの方だ。
でも彼らは男の名誉の負傷を誇らしく思っているのか、ニルに私とルキヤの治療を優先するように伝えていた。
騒ぎを聞き付けて集まって来た衛兵や冒険者達に事情を説明して、神父ファナティクスの悪事が明るみに出る。斬り殺されているシスターは、その容姿から魔族である証明になったし、町の人々からの教会に対する信用は地に落ちた。
衛兵に連行される頃に目覚めたファナティクスは、何やら騒いでいたけど、誰も聞く耳を持たなかった。
私、ルキヤ、ニルは肩を寄せ合って、スペロとウルティオは地面に座り込んで、しばらく勝利の余韻に浸った。
*
あれから二日経ち、船が出発できる時がやって来た。
私たちは、港町フルーメン行きの船に搭乗する手続きを済ませて、いよいよ船に乗り込もうとした時だった。
歓声が聞こえて振り返ると、町の人々が私たちを見送りに来てくれていた。
町の問題を解決してくれた事を感謝されていて、彼らは私たちの事を勇者パーティと勘違いしてるのではないかと思うくらい、お祭り騒ぎの歓送をしてくれた。
何故かその中に、私たちを襲って来た東側諸国の追っ手の者達の姿も見える。彼らもこの町に来ていたのか……。
ウルティオもそれに気付いたのか、出航で動き始めた船の船尾で、少し嬉しそうに微笑んでいる様に見えた。
私はそんなウルティオの横に立って、彼に話し掛ける。
「本当に良かったの?」
「なにがだ」
「私を殺さなくて」
「あの状況で自制ができないほど俺は若くない。きっと追っ手の彼らもそうだったんだろう」
「……そうかもね」
ニルがウルティオの肩から降りて、初めての船を楽しんで甲板を駆け回り始めた。
それをルキヤが心配して追いかけ回し、スペロも何か考え事をしているのか、段々と水平線の彼方に見えなくなっていく大陸を見ながら物思いにふけっている。
なんだか隻眼の男ウルティオと神子のニルに出会ってから、物騒な出来事が続いていたけど、ひとまずはひと段落と言った所だろう。
晴れ渡った明るい海を、船は帆を風に乗せて順調に進み行く。
*
――――と、思っていたのだけど。
航行中に不自然に霧が濃くなり、沈没船の残骸が海面に浮かぶ海域に船が迷い込んでしまった。
そして現れたのは私たちが乗ってる船よりも倍に大きい巨大な船。その見た目はボロボロで、至る所に穴が空いており、帆も破けてしまっている船だった。
「ゆ、幽霊船だぁー!」
と、船員達が騒ぎ始める。
幽霊船? そんなの聞いてない!
更に海の恐怖は続き、船の下に巨大な影と魔物の気配もあった。
そんな事を気にしてる余裕も無い勢いで、幽霊船にパイレーツスケルトンの群れが姿を現し、私たちの船に乗り込んで来ようとしている。
私たちはそれぞれ武器を構えて、私はみんなに声を掛ける。
「掃除の時間だ」




