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空白のイテル  作者: 阿古しのぶ
隻眼の男編
80/170

隻眼の男と出会ってから二日後Ⅰ

 ルキヤの昔話。


 古代にあった戦争の時代。まだ魔族はおらず獣人族の国があった時代の事。

 愛と英雄の女神が、破壊と戦争の神によって討たれるという大事件があった。その日、世界の一部では大災害が発生して地形が変わってしまうような、大きな激動の時代の幕開けだったと。


 そんな時にエルフ国に現れた小さな女の子がいた。

 出生は不明の不思議な少女。ルキヤはほんの短い間、その子の世話をした事もあった。

 やがて水と知恵の女神によって、その少女の正体が明かされる。


――『その器、いずれ愛と英雄の女神の器となる神子。訪れる転生の日まで、守り抜いてみせよ』――


 神子。


 それは死んだ神が、再び復活する為に神の器。天と地の創造神が、それをこの世に落としているらしい。

 隻眼の男と一緒にいた少女は、その器と気配が似ているとの事だった。


 ただそれが本当だったとして、天と地の創造神を除いて六人いる神の内の誰の神子なのかは不明だ。


「それで、そのエルフ国に現れた少女はどうなったの?」

「無事に器としての役目を全うしました。一度討たれた愛と英雄の女神様は復活されたのです。この時、女神様が剣を創造される切っ掛けになったとも言われています」


     *


 一度野宿をして、さらに歩みを進めること半日後。

 そろそろ日も暮れようかという時に、その場所はやって来た。雲行きが怪しくなっていて、そろそろ雨が降る事を知らせる風が吹いている。


 辺りの樹木がいくつも倒れていて、かなり激しく争った跡と複数の獣の足跡があった。まだ新しい血の跡もある。


「かなり激しくやりあってるね。結構近い」

と、私が樹木や葉っぱにべったりと付着している血を触って確認する。


「先日の少女を連れた男性でしょうか」

「恐らくね」


 私は、魔物の死体を複数体見つける。

 人間の生皮が剥がれたような気食の悪い見た目で、長い四本の手足と巨大で鋭い爪。腐敗した体組織に代わり強靭な筋肉が形成されたような体付きで、強い魔物である事が分かる。


「この魔物、私も初めて見るけど、透明で見えないというのは霊体とかそう言う物ではなく、恐らく魔法の力で光を屈折させて姿を隠している感じだね」

「魔物が魔法使うのかよ」

と、スペロ。


「珍しいけどいない訳じゃないよ。ただ私たちが使う魔法とはちょっと違くて、魔物の魔法は先天的に備わった感覚で使われる物だ。進化の過程で得た技術で、古代魔法に似てそれの使い方を解明できていない」

「でもこの前、師匠が倒したウンブラってやつは闇の魔法を使ったんだろう?」

「あいつは魔物の中でも特別な部類だよ。憑依型の魔物は、憑依した相手の知能を奪える奴がいる。これができるのも稀な存在ではあるけど、ウンブラは人の言葉を話せる様になるほど、長生きしてその能力を磨いていたんだ」

「それって超厄介じゃん」

「そう。だから封印されていたんだと思う。戦ったのが私で良かったよ」


 そうこうしてる内に、雨が降って来た。


 私は立ち上がり、

「この魔物は群れで動いてる。生き延びてる奴が近くにいるかもしれない」

と、スペロとルキヤに忠告した。


 魔物の死体の数が多い。これをあの隻眼の男は、相手が見えないというハンデを抱えて倒したという事なのだろうか。

 いくつもの樹木を斬り倒す腕力と、相手を見破る洞察力と対応力。この現状を見るだけでも、隻眼の男の強さが伝わって来る。


 私たちはそれぞれ武器を持ち、周りを警戒しながら歩みを進めた。

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