勇者討伐から一年後
世の中は金である。
金さえあれば食べ物も買えるし、衣服も買えるし、ふかふかのベッドでぐっすり眠れる。
だから私はひたすらに魔物を狩り続けた。
冒険者ギルドでちょっとした噂をされるくらい、一端の冒険者として活動していた。
どうやら私が悪用した冒険者の証明書には、僧侶で女性の『ソムニウム』という名前が記載されていたようで、僧侶なのに大剣を背中に背負い、そして魔物とは素手で戦う不気味に強い少女の冒険者として知れ渡ってしまっているようだ。
*
って、違ーーーうっ!
何をやってるんだ私は!
ついつい人族としての暮らしに満足して、本来の目的を忘れるところだった。
北の厳しい冬が過ぎるのを待ってから、私は城塞都市を旅立つ事にした。
私が南に向けて旅立つと聞いて、何人かの冒険者がわざわざ門まで見送りに来てくれていた。
ソロ冒険者として活動はしていたけど、誰かと仲良くした覚えもない。
なので当然見送りに来た者たちの名前を私は知らない。
でも少し分かった事もある。
金を稼いで買い物をして生きるだけで、必要最低限の交流はあったのだ。
人族とは、こうやって人と人との繋がりが生まれるのかもしれない。
ここから先は魔族支配地域ではなく、魔物はいても言うならば人族支配地域になる。私も未知の世界だ。
魔族の街周辺では絶対に見る事は叶わない済んだ青空は雲一つ無く、果てしなく続く大地は思わず立ち止まって見惚れてしまいそうになる。風の音と鳥の声は、私の背中を押してくれている様だった。
土地勘の無い私でも、冒険者ギルドから良い地図も貰っているので次の目的地も明確である。
――――地図の見方が分からなかった。