闘技会で勝ち残ってから二二日後
動いた。
私たちがフトゥールム共和国の国境検問所まであと一日、野宿をしている最中に帝国軍は動いた。
黒い鎧を身に纏った男達が、私たちを包囲した。数は二十といったところ。私たちが目指している方角の離れた所に先回りしている別の集団もいる。
私たちを取り囲んだ黒い鎧の男達、魔法耐性の鎧に魔法障壁が何重にも重ね掛けされていて、古代魔法を警戒しているのが見て分かる。
私は男達に言う。
「なんだ。夜襲なんて魔族みたいな事をするんだね」
そんな私の挑発には乗ってもらえず、黒鎧の一人が剣を構えながら口を開く。
「俺たちが用があるのはエルフのみ。他は殺せ」
なるほど。こいつらは恐らく帝国軍の汚れ仕事をこなす闇の部隊といったところだ。黒色の鎧に任務達成の為なら躊躇の無い殺し。帝国もなりふり構っていなれないって感じだろうね。
国や組織も大きくなればこういった闇の組織も必要になると、魔王から教わった事もある。
スペロが剣、私が拳を構えて戦闘態勢に入った時、ルキヤが意外な言葉を発した。
「エルフも古代魔法も、貴方達の玩具ではありません。それに……五日……五日も……我慢してきたんです……それなのに……それなのによぉ……てめぇら、いい加減にしやがれクソムシが!」
……え? ルキヤさん?
彼らの尾行のせいで酒を制限させられていたストレスが爆発した。
不良エルフとなったルキヤは怒りに身を任せて生成した魔法の杖で地面を小突くと、彼女の足元に魔法陣が展開。そこから四方八方に地面を伝わる蔓が次々と男達を飲み込む。
驚くべきことに、魔法障壁を完全に無視で広範囲の狙った者を蔓で捕え包み込む魔法だった。
ほとんどの奴らがそれにより捕まったが、他の一部の黒鎧はそれを逃れ、距離を取ろうとしていた。
「おいおい、逃げんじゃねーよ! このヘタレ共がよー! これが欲しいんだろ! だったら身をもって覚えろや!」
と、ルキアは距離を取る黒鎧達を追い打ちするように攻撃魔法を炸裂させる。
とにかく、この場はルキヤやスぺロに任せて大丈夫そうだ。
であれば私がやる事は一つ。
*
周囲を崖に囲まれた、国境検問所に向かう為にほぼ必ず通る道で、帝国軍の別動隊が待ち構えていた。
私は人族の冒険者としてではなく、大魔族の空白として、黒い翼を羽ばたかせながら空から現れる。
先回りをしていた別動隊は、ファルナス騎士団だった。
七本槍のうち三人の姿も見える。今度は三人か……本当に彼らは私とつくづく縁がある。もはや腐れ縁だ。
だけど、これで最後。彼らを仕留めれば、恐らく七本槍は全滅する。
七本槍の三人は、剣使いと槍使い、そして魔法使い。それ以外の騎士団員がざっと十人程度。
三人の冒険者パーティを待ち伏せするには規模が過剰だけど、それだけ古代魔法が警戒されているということ。
冒険者パーティを狙って待ち伏せをしていたら、何故か空から大魔族が現れた。
彼らは驚き、そして戸惑うも、結局は戦わなければならない。だって私は、ファルナス騎士団の七本槍を二人は殺めている仇と思ってるはずだ。
彼らは散開して陣形を取る。洗練された良い動き。見ただけで手練れである事は分かる。この十三人を相手にするのは、私一人だと少し分が悪そうだ。
そして彼らは、もはや空白相手には会話も詮索も無用といった様子。
であれば、私も良い物を見せてあげようと思った。
空中にいる私に矢や魔法が放たれるが、私はそれを全て魔法障壁で防ぎ。それをしながら人差し指を天空に向けて、魔法を発動する。
私の指先に黒い玉が現れて、それが膨らみ大きくなっていく。これで全員とまではいかないだろうけど、何人かは吹き飛ばせるはず。
私が剣術だけだと思うなかれ。
これは私のとっておき。
これは私の憂さ晴らし。
これは古代魔法でも現代魔法でもない、魔王の魔法――――。
夜空が一瞬閃光で照らされ、ルキヤとスペロが黒鎧と戦っている場所まで轟音が鳴り響き、そして地震と共に爆風が吹き荒れた。




