闘技会で勝ち残ってから五日後Ⅰ
闘技会が開かれているという訳でもないのに、闘技場で騒ぎがあった。
どうやら捕虜だったベルルムが看守を殺す大暴れをして、そのまま逃げだしたらしい。
だから何となく、私が魔族の魔力を出せば彼女が会いに来るんじゃないかと思って、真夜中に宿屋を抜け出してこの帝都で一番高い時計台の上で待つ事にした。
今夜は満月だ。きっと魔族の再会としては良い頃合いだろう。
万が一に備えて、ちゃんと仮面は付けて、魔族の力を解放しながら端に座っていると、ベルルムがやって来た。やっぱりね。
「早かったね。ベル」
そう話し掛けてあげると、ベルルムは何故か涙ぐんでいた。
やがて私に抱き着いてきたので、私もそっと腕を回す。
「イテル……生きてた……んだね……ボクはてっきり……死んだものとばかり」
相変わらず、ベルルムは活舌の悪いモゴモゴとした喋り方だ。
「生きてるよ。私は生きてる」
「何故こんな所に……魔王様は……? 魔族は無事……なの?」
「魔族は無事。魔王も元気だよ。私はね、魔王の命でちょっと人間界を旅してるんだ。そしたらここにベルがいるって聞いたから、顔を出した。元気そうで良かった」
「ぼ、ボクは……二百年前の戦いで、帝国に捕まって……それで、ずっと監禁されていた……闘技会……に、出る様になったのは……最近の事だった」
「それで不敗のベルルムか。二百年近く戦いから遠ざかっていたのに、流石だね」
「ぐへ、ぐへへへ」
ベルルムは気弱そうに見えて好戦的だったり、誰にも興味無さそうに見えて私には慣れ慣れしかったり、活舌は悪いけどよく喋ったり、本当に不思議な魔族だ。
魔族としては大体私と同じ歳くらいで、一緒に魔族として成長してきた仲である。
大魔族になったのはベルルムの方が早かった。私よりも戦闘の才能があって、二百年前の戦いでも大勢の人間を蹂躙していた。当時の勇者パーティが現れるまでは……
私はベルルムに聞いてみたい事があった。
「ベル。私は二百年前のあの時、あの戦いで、死にかけたというのは覚えてる。でもそれ以外の事が曖昧なんだ。魔王も詳しく教えてくれなかった」
「え……?」
「あの時、何を見たの? どうしてベルは帝国に捕まってしまったんだ」
「そ、それは……」
ベルルムは覚えてる事を話してくれた。




