エルフの国を訪れてから五日後Ⅱ
エルフ族は白い肌が特徴的だけど、黒い肌のエルフも古くから存在していたそうだ。
黒い肌のエルフは産まれ付き魔力が高く、運動神経にも恵まれたエルフの象徴であり、荒事担当のエルフの戦闘民族だった。そうやって白い肌のエルフと黒い肌のエルフが共存していた時代もあった。
それがいつからか、白いエルフ達は暴力的で才能に恵まれた黒いエルフ達を怖がり、妬む様になってしまった。
特に古代魔法を封印し、他族との争いを事前に避けるようになってからその傾向が躊躇に現れ、種族内での確執となり、やがて黒いエルフ達は白いエルフ達から迫害される様になっていく。それに耐えかねた黒いエルフ達は結託して逃げるように街を出て行った。
そんな彼ら黒い肌のエルフ達の事を、白い肌のエルフ達は『ダークエルフ』と呼ぶようになった。
封印する事となった古代魔法の管理はダークエルフの領分だった為、その知識を持ち去ってしまったとのこと。
そして白いエルフ達との交流を拒絶したダークエルフは、西側にある世界最大の標高を誇る『クルトゥ山脈』に里を築き、住み着いているそうだ。
現エルフ国のアストルム王女は、私たちにダークエルフの里へと出向き、エルフとの協力を要請してほしいそうだ。そうする事で、古代魔法の解禁も策略し、現状を打開したいとの事だった。
*
私たちは早速、西側に見えるクルトゥ山脈に向けて出発した。
その為には霧がかった迷いの森と呼ばれる自然による森林迷宮を突破しなければならないそうで、迷いの森対策として絶対方向感覚の持ち主のエルフ族の娘が案内人として同行する事となった。
王女から直々に案内人を任されたそのエルフの娘は見た目は若く、人族の少女の見た目。恐らく私よりも少し下くらいの年齢といったところだ。
案内人のエルフは緊張した面持ちで、もじもじしながら挨拶をしてきた。
「えっと、えっと……この度、迷いの森を案内させていたくプルクラと申します。あの……その……よろしくおねがいしまふっ!」
なんだこの可愛い生き物。
まずは迷いの森に向けて私たちが歩みを進めていると、ルキヤが口を開いた。
「それにしても、ダークエルフとは……皮肉な名前を付けられましたね」
「ダークエルフとの確執は古代からあるの?」
と、私は聞いてみる。
「いえ、私の時代は肌の黒いエルフといえば豪傑です。他国や他種族との戦争における要であり、頼りになる存在でした。そして抑止力だったのです。彼らがいなければ、とっくにエルフが滅びていたといっても過言ではないでしょう。つまり黒い肌はエルフにとっての英雄の証です」
「行き違いが重なったんだね」
「その様ですね」
するとスペロが言った。
「迷いの森を挟んでそんな遠くに移住しちゃうなんて、よっぽどだよな。同じ種族なのに、なんでそこまで……」
そんな事を言うスペロに、何故か案内人のプルクラが頬を染めてさり気なく寄り添って歩いてるのが目に留まった。
そういえばこのプルクラってエルフ、さっきスペロが素振りしてる時に目を輝かせて一番近くで見学していた娘だ。もしかして……そういうこと?
プルクラは、
「わ、私は三百歳になります……けど、ダークエルフとは一度も会った事がありません。まだ存続してるのかどうかも……あ、えっと、出しゃばってごめんなひゃい!」
と勝手に頭を下げて謝りだした。
なんだこの可愛い生き物。
そんな会話をしていたら、私たちは迷いの森に到着したものの、日が暮れてしまったのでまずは野宿をする事となった。
この先は霧で視界が悪い。これが迷いの森などと呼ばれる所以なのかもしれない。
でもこの霧は自然発生したものではないようだ。霧に微量な魔力を感じる。しかもルキヤと同じ性質の魔力だ。
そして強大な魔物の気配もひしひしと伝わって来るから、きっと一筋縄じゃいかないだろう。




