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レベルが310まで上がった。新しい召喚を習得した

 俺とシアは、その日、魔王城跡地に作った畑にいた。


 畑を作り上げて一か月。地道に開拓を続けた結果、範囲は1ヘクタールを超えていた。

 

 そして、畑に植えたのは、領地の農家から渡された普通の芋や人参だったのだが、


「見て見て、もう作物が大きくなってるわよ!」


「成長、凄く早いなあ!」


 もう、収穫が出来るくらいの育ち方をしていた。

 

 そもそも植えた次の日に芽が出て、数日後には青々とした茎が出た。そのあとすぐに開花したくらいだ。

 

 農家の話では、普通の農地で3か月はかかるし、魔力が豊富な地でも2~3か月は必要だ、との話だったが。

 

「これも魔王城跡だからかなあ」


「竜の血が混ぜ込まれた分もあるかもね」

 

「なんにせよ、嬉しい事だよ。初めての収穫だし、ワクワクするなあ! 採りたての作物って美味しそうだし!」


 芋ほり用のフォークは持ってきている。手作業でどこまで出来るだろうかは分からないが、出来る範囲で取ろう。

 実家で使うのは勿論、伝手で領地の商人に渡すことも出来るし、収穫しすぎて困ることはない。というか、ここ全てを収穫しても余る事はない。


 ……今年は獣害が酷くて、作物の収穫量も微妙らしいし……


 そこを手助けできるならば、尚更良い。 


「それに、応援も来てくれるらしいしね」


 朝、畑の作物が収穫できそうなことを報告すると、


「なに!? もう実ったのか!?」


「我が弟は、羊飼いでありながら農作業の才能が猛烈にあったか! 素晴らしい! 手伝うぞ! あの畑の広さなら、一人だと何週間も掛かるだろうしな!」


 とのことらしく、数時間後には祖父たちも来てくれるとのことだ。

 

 有難い話だ、と思っていると、

 

「ぷ」


 スライムが足元をつっついてきた。 

 

「草むしりが終わったから何をすればいいかだってさ」

 

「あー……スライムたちは……どうしようか。収穫の手伝いは難しいだろう?」


 聞くと、俺の足元にいる数十匹のスライムたちからは、


「ぷ……(消化していいならやる)」


 とのお返事が来た。今まで通り草抜きをお願いするだけの方が良さそうだ。

 まあ、予測はしていたけれど、と思っていると、

 

「というか、スライムの数も増えたわね」


 シアがそんなことを言ってきた。


「あ、確かに。最初は十体くらいだったね。あんまり意識していなかったけど」


 スライムも最初の数よりも多く召喚できている。

 

 魔力が上がっているからだ。

  

 というかレベルも上がっている。俺は懐に折りたたんで持っていたスキル表を出して、見る。


 当初は一年に1レベルしか上がらないとの事だったから棚にしまい込んでいたのだが、最近は、いつどこで、レベルが上がるか分からないので、定期的に持って来てみる様にしているのだ。


 この前、俺がドラゴンを倒したせいか、シアがドラゴン軍団を倒したせいか、レベルが40上がって290になっていたのだが。


 ここ最近確かめてみたら、また20上がって310になっていたのだ。

 

 あまりの上がり方に、先日、農作業中に、シアに何かしてるのか尋ねたところ、


「私は何もしてないけど、スライムが草むしりしてるじゃない」


「草むしりで、レベルって上がるのかい?」


「そりゃまあ、魔王城の草って、半分くらいモンスターだからね、これ」


「え?」


「気付いてなかったの? たまに抜きにくい草とかなかった?」


「確かに……言われてみれば」


 シアはその場で、草を引っこ抜いてみせてくれた。雑草にしては素晴らしく太い根を持つ、魔王城跡地でよく見るし、よく抜く草なのだが、


「ほら、よく見て。微妙に動いてるでしょ」


「うわ、本当だ!」


「この草型モンスター、しぶとさと繁殖力が厄介でね。一日立てば、復活しちゃうのよ。勿論、一匹一匹は弱いし大した経験値にはならないだろうけどね。ただ、毎日毎日、見渡す限りの広大な地の草抜きをずっとやってたら、そうなるわよ」

 

 とのことだった。


「まさか、草むしりしてるだけのスライムがレベルアップして、それが俺にも反映されるとはね」


「スライムたちのレベルが低い間は、上がりやすいからね。召喚数が増えれば増えるほど、草むしり面積も大きくなるし」

 

 という訳で、草モンスターむしりレベリングにより、俺はレベル310になっていた。

 

 ……普通の羊飼い310年分のレベル、と考えると凄まじいものがあるよなあ。


 また、レベル上がったことで、ステータスは筋力がA、体力がCまで上昇した。

 そこまで変わってないけれど、シア曰く、あれはただの補正や成長のしやすさを示すだけのものだということで。

 実際、筋肉はついて体力も増えたし、魔力も増えているらしい。


「召喚するのも、この場に維持し続けるのも、魔力の消費はアルトが担当してるからね。大分増えたわよ」


「あまり自覚はなかったけど、うん。確かに一日中スライムを呼んでも疲れなくなったね」


 スライムが暇している間が勿体ないので、ここの近隣の農家に、草むしり用スライムを貸したりすることも出来ていたりした。


『アルト様のスライムが手伝ってくれたおかげで、こちらも大分楽が出来てまさあ』


『そうね。腰を痛めて草刈が出来ない時は本当に助かったわ。私たちがやるよりもきれいに仕上げてくれたし』

 

 と、農家たちと交流した際感想も聞いた。

 スライムの仲も良好になったし。いい事尽くめだ。と、考えていたら、

 

「そのくらいの魔力があれば、同時に召喚魔法、もう一つ使えるんじゃない?」


「え? 行けるの、それって?」


「魔力の容量次第では行けるわよ。同時召喚。というかこの前、竜を倒した時もやってたじゃない」


「あー……スライムと一緒にエウロスを出してたっけ」


「そうそう。だから、同時召喚は出来るってことでね。というか、エウロスも呼んだら。きっと暇よアイツ」


「凄いカジュアルに召喚しようとしてるけど。かなり強いんじゃなかったっけ、彼女」


 竜を吹っ飛ばすくらいの存在を芋の収穫に使っていいものか。

 

「気軽に使うくらいがちょうどいいのよ。慣れておかないといざって時に使えないしね」


「それも、そうだね」


 呼び慣れておくのは大事なのは確かだ、と俺は召喚する。

 

「【来たれ、雨と東風の軍団長:エウロス】」


 指輪が光を放ち、そして嵐をまとった女性が俺の目の前に召喚された。

 

「はあーい。呼ばれたから来たけど、……敵がいるって訳じゃ無さそうね」


「ああ。来てくれてありがとう。今回は何かを倒すんじゃなくて、作物の収穫を手伝ってもらいたくて呼んだんだ」


 そう言うと、エウロスは、一瞬あっけに取られ、

 

「あははっ、収穫祭で作物を捧げられたことはあるけど、自分が収穫するのは初めてだわ。というか私をそういう風な使い方をする主も初めてだけど!」


 と、おかしそうに笑った。

 

「ああ、申し訳なかったかな。こういう用件で呼ぶのは」


「いや、愉快で良いわ。いつも血なまぐさい場所に呼びつけられるのもなんだし。農作業だって嫌いじゃないしね。必要であれば雨だって降らして上げるわよ」


「それは、ありがたいから今度頼むとして、それじゃあ、とりあえず、地中の芋を掘り起こすから、その助力をお願いするよ」


「分かったわ。貴方の身体に憑依するから、適度に風を使って補助してあげる」


 そう言って、エウロスは俺の背中に風に変化して絡みついた。

 

 それだけで、大分身体は軽くなった。1ヘクタールも一日かければ一人で掘り返せそうな気すらしてくるのだが、

 

「さ、もう一体行けそうだから、いっちゃいましょ」

 

「え? 三体同時に? 大丈夫?」


「今のエウロスの使い方を見てたら行けるわよ。行けなくて倒れたら私が担いで持って帰るわ」


「まあ、今までも何度か運んでもらったから。家族は驚かないか」


 体力を使い果たして、運んでもらった経験はこれまでもあったし。今回も収穫で頑張り過ぎたという事にすれば問題ないだろう。

 

 そう思って、俺は魔法を行使する。


「【来たれ:土の精の軍団長 アラクネ・アディプス】

 

 いつものように指輪が光り、そして出てきたのは、

 

「ふわあ、久しぶりに呼ばれましたね」


 俺の身長よりも少し小さな、眠たげな眼をした女の子だ。ただし、その下半身は、蜘蛛のものだったが。

 

「相変わらず眠そうね、アディプス」


「昼は得意じゃないです。それで、ええと……今は主はシアじゃなくて、こちらですね。アルト、で宜しいですか」


「うん。よろしく、アディプスさん」


「アディプスでいいです。で、ご用件は?」


「芋の収穫を手伝ってほしいんだけど……」


 俺は背後を指し示しながら言った。


「ああ。なるほど。この土地で、地蜘蛛としての活動の方をお望みでしたか。であれば、もっと蜘蛛寄りになりましょう」


 そう言って、アディプスは、自分で指をぱちりと鳴らした。すると、少女のようだった上半身が変化し、それこそ蜘蛛そのもの姿になった。

 

『こっちの方が地中で顔に土が入らなくていいのです。お化粧が崩れるのです』


 人間の言葉は話せてないが、動植物会話スキルのお陰で問題なく会話は出来る。

 

『化粧してきてるんだ……』


『召喚魔獣として当然の嗜みなのです。というか貴方は、普通にこの状態でも意思疎通できるのですね。最初から蜘蛛の姿の方がよかったかもですね』


「いや、でも、可愛い姿を見れたら、俺としてはやる気が出るのでうれしいよ? 蜘蛛の姿も格好いいとは思うけど」


 言うと、僅かに間があって、プイッと顔を向けた。


 怒らせたか、と思ったが、


『……褒められると悪い気はしませんね』

 

『照れているだけっぽいわよー」


 シアがそんなことを言っている間に、アディプスは畑の方に向き直った。


『ともあれ、仕事はしっかり果たすのです」


『ありがとう。俺とシアは、手前の方で出来る限り作物を収穫していくから」


『では、向こう側から私はやるのです』

  

 アディプスは、そのままズボっと地中に潜り、向こう側まで突き進んでいった。

 

 地蜘蛛だと言っていたが、地中を行くのは得意なようだ。


 見れば、その移動の最中に蜘蛛の糸で網を作り、作物を絡めとっている。

 

「器用だなあ、彼女」


「でしょ。のんびり屋でもあるけど、仕事人でもあるのよ」


「それは有難いな。ただ、任せっぱなしっていうのなんだし。俺達も出来る範囲で収穫しようか」


 そして、数時間後。

 祖父や兄たちが到着したころ、

 

「こ、これはいったい、どういうことだ!」


「アルト、今日は収穫の日だと聞いていたが、まさか、もうすべてやり切ったのか!?」


「ど、どうにかね……」


 山のように積まれた作物の横で俺は頷く。


 体力はギリギリになって、スライムやエウロス、アディプスは帰ってしまったが、今回実った分を、収穫しきる事に成功したのだ。

 


 続きは、頑張れたら今日の夜に。無理だったら明日の午後か夜に! 


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