魔王城跡地を使える者
ニコニコ漫画にて、コミカライズ第二話まで連載中です!
デュランタの目の前には、本来長い日数が掛かるであろう作物が、既に収穫された状態で存在していた。
「……これは現実ですか……」
その光景を見て、デュランタは驚愕していた。
ほかのエルフたちも喜び半分、驚き半分といったところだ。
なにせ明らかに異常な収穫速度と収穫量だ。
いや、そもそもエルフのトマト――エリクシルフルーツを育てられた時点で、何かしらが違うのは分かっていた。
だが、それをこの目で目撃すると、その衝撃は桁違いだった。
そうして、思考をまとめられずにいたデュランタのもとに、
「デュランタさん。聞きたいことがあるんですが」
この状況を生み出した張本人であるアルトが来た。
「な、なんでしょうか、アルト様」
彼はこの異様な状況に、しかし驚きもせず、
「次の作物の育成計画にかかわるんですが。カブは連作障害があるみたいですけど。この作物にもあるんですか?」
そんなことを聞いてきた。
……これだけの収穫をしたにもかかわらず、もう次のことを考えられている……!?
つまり彼にとっては、これは普通のことなのだろう。そう思いながら、デュランタは、まとまらない考えを横に放り投げて、まずは問いに答えようと、
「え、ええと……それは我々エルフの魔力加工でなくなっていますね」
「それはすごい! 育て放題じゃないですか!」
「す、凄いのは、アルト様と、この土壌ですよ! こんな事、長く生きてきたエルフでも見たことがないくらいで……」
そういうとアルトは朗らかに笑みを浮かべながら、
「いえいえ。ちゃんと世話をしたり、作物に集まる害獣に対応した皆さんがいたから、これだけの収穫があったんですよ。ともあれ、足りないようなら、同じ場所でまた、育ててもらえれば大丈夫ですかね」
「は、はい」
「あと、去年実験したのですが、冬でも、雪は降りますが、この土地は温度がそこまで下がらないらしく。他の季節よりは難しいですが、色々と作物も育ちますので色々と試していきましょう。……それじゃ、俺は向こうを耕してきますね」
それだけ言って、アルトは、彼方へと走り去っていった。
広大な魔王城跡地であるから、いくらでも耕すところはあるというので、自分たちが来てからもあるとは四方八方に走り回っているのだ。それを見送っていると、
「デュランタ様。魔王城跡地の農地を少し使っただけで、里の冬越え分の食糧が賄えましたよ……!」
横合いから、収穫量の計算係の女性が、そんな事を報告してきた。
「あとは、霊鈴菜の種を回収する分も、そろそろ育ち切りそうです。このままいけば、もう一サイクルで十分すぎるほど確保できるかと」
「そ、そうか。わかった……」
計算係の女性も、自分が言っている言葉に半信半疑といった感じで、
「……魔王城跡地は、異様に硬く、モンスターものさばり、農地に適さないという話を聞いていたのですが……」
「ああ。それは私も聞いていた」
そして確かに、それは事実なのだろう。
モンスターは多いし、土壌に散らばった魔王城の瓦礫のせいか、魔法の通りも悪い。
実際、自分たちでは耕すことすら満足にできなかった。
向いているとは到底言えない。
けれど、もし、そこを耕せてしまう存在がいたら、ということを考えていなかった。
「アルト様が耕してくれたから、こんな凄まじい土地を使えているだと考えると。本当に、里の救世主だ……!」
「はい……!」
【お読み頂いた御礼とお願い】
本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。
「面白かった」
「この先が気になる」
「羊飼いが、最強になるの?!続きが読みたい!」
少しでもそう思って頂けましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のポイント評価、そしてブックマークの登録をして頂けますと、作者のモチベーションになります!
また、昔滅びた魔王城の書籍版が発売中です! 詳細は↓に!
どうぞよろしくお願いします!





