魔王城の新たな光景
デュランタ達が追い付いてきたのは、俺が丸太を運び終えて十数分後だった。
「本当に助かりました……! ああ、風で乾燥まで早めてくれているとは……まことに感謝しかありません……」
と、むしろこちらが申し訳なくなるくらい、デュランタ達は頭を下げてくる。
木材の乾燥については暇になったエウロスが、
『このくらいの水分量にしないと建材に使えないと思うわよー」
などと言って、ぼうぼう風を吹かせていたのだが、
「もう乾燥の具合は完璧ですよ!」
「凄い……中心部まで水分が減っている……!?」
と、製材しているエルフたちからすると絶賛のようだった。
「エウロスって、そんなに木材に詳しいんだね」
正直びっくりしたので言うと、
「そりゃアタシ、木材と金属でアクセ作るの好きだからね。趣味の一環よ。あと、私の同胞に、乾燥に詳しいのが一人いるからね。アルトがこの前召喚できるようになった奴」
という返事を貰った。
アディプスも含め、シアが抱えている軍団というのは、結構多趣味である。
仲間の好き嫌いや趣味嗜好を知れるのは、俺としては嬉しいことではあるのだけど。などと思っていたら、
「基礎が出来ました!」
いつの間にか、エルフたちの建築が進んでいた。
「早いね……!」
「まあ、移り住むことに慣れていましたから」
木材を切り、ある部分は丸太のまま使い、組み立てていく。どれも魔法でフォローはしつつも、基本は手作業だ。
「我々はあまり人里と交流をしてきませんでしたから。家も自分たちで建てられるようになっているんです。長命故、凝り性も多く、建築技術を収めたものも多いくらいで」
「そうなんですね。見てるだけだと凄いことしかわかりませんが。勉強させてもらいたいな」
「是非とも! 恩人のアルト様であれば、我々エルフの技術の粋を全てお見せしますとも」
そこまで言って、デュランタは少しだけこちらに顔を近づけ、
「しかし、ここまでやって今更なのですが。本当に建築してしまっていいのですか?」
「大丈夫です。ちゃんと話も通してありますから」
改めて、昨晩の夕食後にしっかり話していたのを俺は思い出す。
〇
「爺ちゃん。魔王城跡地を自由に使って良いって言われたけど、手伝ってくれる人達に住んでもらってもいいの?」
「アルトが認めた者なら、別に構わないぞ。なんなら街を興しても構わないさ。敷地だけは有り余っているからな。いっそ国でも作るか?」
「あはは……。そこまで住人が増えるか分からないけどね。でもありがとう!」
〇
などと、つい昨晩の話をデュランタにすると、
「ご、剛毅なおじい様ですね」
「あはは、俺もそう思うよ」
そもそも、既に協力してくれているシアやスライムたちを受け入れているのだから。今更のようではあったけれど。度量が広く尊敬する。
「とはいえ、領民の農家さんとかも来るから。そういう人たちと仲良くはしてほしいけど」
「それは勿論です! 農作業で、周辺と関係を悪くするのはもってのほかですから」
「よかった。まあ、そこを気にしてもらえれば、全然問題ないよ」
などと言っていると、
「アルト様! デュランタ様!」
建築団のほうから声が飛んできた。
そちらを見ると、
「完成しました!」
家が一軒、建っていた。
俺が無理やり立てた小屋とは違って、しっかりした木造の家。エルフの里で見たものに近い、大きな建物だ。
……凄い!
自分一人では到底想像できないことだったが、魔王城跡地に、久方ぶりの、ちゃんとした建造物が建ったのだ。
崩れ落ち、瓦礫となった魔王城とは対照的なものを見て。そして、完成した家を前に喜んでいるエルフたちを見て、なんとなく直感的ではあるが、
……今までとはまた別方向で開拓が進んだんだなあ。
魔王城跡地の開拓がまた一歩、進化できたのだと、そんなふうに思うのだ。
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