《羊飼い》は羊と出会う
「こんなものかな。どうだい?」
切れ味はやはりよく、なおかつ羊がおとなしくしてくれることもあってか、5分ほどで毛刈りは終了した。
そして目の前にいるのは、
『あー、さっぱりした!』
真っ白な短い毛になった羊だ。
また、今更気づいたが、ところどころに金色の毛も混じっている。これもまた見たことがない羊の毛並みだが、ともあれ、
「上手くいって良かったよ。もう前は見えるかい?」
『うん。あと、前が見えるってことは――』
と、羊が言った瞬間。
――カアッ
と、羊が金色の光に包まれた。
「え? 何?」
夕闇の中で目立つ金色の光は、羊を包み切るとすぐに収まった。そして光の中から現れたのは、
「ありがとー!」
白い髪の毛をした女性だ。
明るい声と共に、俺のことを抱きしめてくる。大きな胸で俺の顔面がうずまる。
「え……うぷ……!?」
「お陰で、こっちの姿にもなれたよ! 50年、斬ってくれる人がいなかったからさー」
などと、そんなことを彼女が言った瞬間だ。
「あー!」
シアの声がした。
「し、シア?」
無理やり首を曲げて見ると、こちらを指さしていた。さらには、
「何してるのよフルフル!」
俺を抱きしめている女性を指さしてそう言った。
「え……シア。この人、知り合い?」
「知り合いも何も、伝説の魔獣の一体よ。そいつ!」
その言葉を聞いて女性の顔を見ると、彼女はゆったりとシアの方を見て、
「あー。やっぱりシアが目覚めてるー。五十年ぶりだねえ。それと……んー、魔力のつながりから見て、アナタはシアの契約者?」
改めて俺の方を見て、そう言った。その瞳は、吸い込まれそうなくらい透き通っていて、人間とは別物であることを感じさせた。
「そうですが、貴女は本当に伝説の魔獣……?」
「そうなのー。あたし、プラム・マオ・フルフルって言うの。この世界のあらゆる生き物を眠りに落とせる程度の魔獣だから、よろしくねえー」
さらにこう言った。
「あたし、自分の毛を刈れる人を夫とするって決めてるんだけど。あたしと結婚してくれない?」
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