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昔滅びた魔王城で拾った犬は、実は伝説の魔獣でした~隠れ最強職《羊飼い》な貴族の三男坊、いずれ、百魔獣の王となる~  作者: あまうい白一
第二章 田舎貴族の羊飼い、街とギルドへ赴く

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呼ぶ魔法と鍛えた力

その光景を、デュランタたちは見ていた。


「アルト殿……!?」


 先程までここに居たはずだ。なのに今は、深く土をえぐった足跡のみがある。

 

 ……ほんの数瞬で向こうまで……?


 とんでもない速度と脚力。更には、


「ドラゴンを受け止めるほどの膂力……!? アルト殿は羊飼いの筈では……」


「ずっと鍛えてきたからね。これくらい当然出来るわ」


 デュランタは、シアが言った言葉を理解できなかった。

 

 羊飼いという職業を持つ者が、何十年鍛えても、とても到達できる力ではないのだから。


 そう思っていると、

 

「何をぼうっとしているデュランタ。援護に行かねば……!」


 自前の剣を持った里長がそう言った。

 

「は、はい!」


 そうだ。この里の恩人が危険な場所にいるのだから。助けに行かねば、と自分も駆けつけようとしたのだが、


「ううん。待って」


 行こうとする二人を、シアが手で差し止めてきた。


「シア殿? 何を……」


「今、近づかない方がいいと思うわよ」


 シアは、アルトの表情を見て言った。

 その表情は陰になっているが、僅かに見える。


「アルト、怒ってるから。地雷を踏まれて」


「地雷……?」


「ご飯を台無しにしたからね。外では使ってなかった、アイツを召喚すると思うわ」



 ドーズは、自分の足元にいる異物を、その肌感覚で感じていた。


 ……なんだ、コイツ。人間種のガキか?

  

 ドーズは知っている。エルフと人間は近い能力値を持っていることを。そして、自分の踏みつぶしを耐えるには、相当の人数が必要になるであろうことも。ここにそんな人数はいない。だから踏みつぶしを選んだのだが、


 ……かてえ……!?

 

 踏んでいる感触は、岩山とか、金属を固めたものに近い。およそ人間の感触といえないものが、足下にはあった。そして、

  

「お前の食生活にどうこう言うつもりもないし、生きるために他の生物を狩るのも、生物として当たり前だ。それなら、何も言わない」


 その人間の子供はゆっくりと喋りはじめた。

 

「なんだと……?」


「だが、食い物を粗末にするのは、許しがたい」


「それを作るのに、買うのに、運ぶのに、どれだけの人がどれだけの時間をかけたと思っている」


「知るかよ、馬鹿が! 潰れろ!」


 ドーズは思い切り力を込めて足を押し付けようとした。だが、

 

 ……動かねえ……?

 

 力を込めて潰そうとしているのに、足が下りなかった。そればかりか、

  

「……!?」

  

 ブオン!

 

 という勢いで、ドーズの巨体は半回転し、地面にたたきつけられた。



 ドーズを放り投げた俺は、その足元から薬草の袋らしきものを見つけた。

 

 潰れているが、まだ使えるだろう。俺はエルフの子供に手渡した。


「ほら、これをもって早くお母さんの所に行くと良い」


「お、お兄さん……ありがとう……!」


 そうして走り去っていくエルフの子供を横目にしながら、俺は起き上がるドーズの姿を見た。


 血走った目で俺を睨みつけている。


「人間如きが調子に乗りやがって!」


 そして叫ぶように、ドラゴンは魔法を行使した。


「『アーマード・アイスファング』……!」


 魔法によって、ドーズの翼は、禍々しい色の氷でコーティングされた。

 

 その氷は鋭利らしく、近くにあった崩れかけの建物に触れた瞬間、いともたやすく切り落とした。


「人間種はオレの担当じゃねえが――滅ぼしてやる! この鋭さと質量でな!」


 狙いは俺に変わったようだ。


 ジリジリと迫ってきている。


 だから、俺もそれに応じるように動く。


「魔法は効きにくいんだったな」


 とても貴重で、素晴らしい作物を作り出そうとするエルフを滅ぼそうとするものを、倒すために。シアから教わった事を、発揮するために。


 俺は掌を天に掲げる。

 

「……」

 

「【来たれ剛柔なる鋼の軍団長・ハバキリ】……!」


 瞬間、指につけられた指輪が輝き、


 ――ズドン!

 

 と、天から一振りの剣が降り落ちた。


 瞬間的な事に、ドーズはバックステップを踏んだ。

 

「はん、不意打ちなんて受けねえよ!」

 

 ドーズは血走った眼をしながらも、こちらの行動を警戒していたようだ。


 落ちてきたのは、刀身はおよそ30センチ程。片刃で、ナタともいうべき剣だ。


 普段は草刈りで使っているそれは、地に刺さるなり、僅かに煌いた。


 そして、刀身から、透明な男性の姿が浮き上がる。

 筋骨隆々な体をした男は、しかし顔をしょぼしょぼとさせて、また肩も落としていた。

 

「アルト坊……。また草刈りか? 斬り応えがないから、ワシ、テンションが上がらんのじゃが……」


「違うよ、ハバキリ。今回の獲物は、ドラゴンだ」


「ドラゴン……?」


 透明な男性――ハバキリは、振り返り、ドーズの姿を見た。すると、しょぼしょぼしていた顔が、笑みに変わる。


「ハハ、いいのう! ――テンション激上がりじゃなあ!」 

 

 瞬間、刀身が伸びた。30センチほどのものから、3メートルほどの大剣へと変化したのだ。

 俺は、それを握って、肩に背負うようにして持つ。


 それを見てドーズは、せせら笑う。


「ちっ、どこから出したかしらねえが、そんなデカい剣、テメエみたいなチビガキが振り回すんだ。どうせ魔法の剣だろ! 俺に魔法が効くかよ!!」


 そして、ドーズは翼を広げ、


「今度こそ潰れろ!」


 俺に向かって叩きつけてきた。刹那、 


 ――ザン!


 と、ドーズの翼は断ち切られた。


 俺の手にあるハバキリによって。



 警護隊長は、目の前の光景に、驚愕していた。

 

 ドーズの翼に、炎の矢も通用しなければ、矢も剣も、刺さらなかった。

 魔法で強化しようがしまいが、どちらも効かなかった。

 

 氷で強化したのであればなおさらだ。


 だが、目の前の少年は、その大剣を軽々と振り回し、一太刀で、その翼を切り落とした。

 

 ドーズも予想外だったのか、目を見開いている。


「その剣は、魔法じゃねえのか……?!」


 その答えとして、警護隊長は音を聴いた。

 

 剣に宿る精霊なのか、少年の背後でケラケラ笑う、透明な男性から発せられた声を。


「おう、ドラゴンさんよ、斬り殺す前に自己紹介しちゃる。わしゃあ、テンション次第で伸び縮みするだけの剣でな」


 少年が、剣を振るう轟音を。


「振るう力も技術も坊主持ちじゃから。思う存分、ワシの刃に斬り応えを味わわせてやってくれ!」


 そして、警護隊長は目にした。もう片方の翼を切り裂く、少年の姿を。



 シアは、巨大な剣を振り回し、ドラゴンの翼を両断したアルトを見ていた。


「ほらね、行くと危ないでしょ、あれ。しゃがんでないと巻き込まれるんだから」


 デュランタは目を見開いている。


「あ、あの剣は一体。召喚されていましたが……」


「あれって私が所有している軍団長の一つで、私が口にくわえて使ってた奴なのよ」


「伝説の魔獣が持っていた武器ですか……!?」


「そうなの。でも、私が使うよりもアルトが使う方が相性がいいらしくてね。というか良すぎるみたい」


「良すぎる……とは?」


「アルト、何処で身に着けたのか分からないけど、剣を振る技術が何故か高くてね」

 

 シアは思い出す。トマトを育てているとき、モンスターの相手をし過ぎて、彼の持っている武器が折れたため、あの剣を召喚したことを。

 

 そして、久しぶりに召喚されたハバキリが、初めて使われた瞬間を。


「ハバキリがノッちゃって、めちゃくちゃな切れ味を出すのよ。それを、あの身体能力で振るうんだから」


 シアは見ていた。

 ドラゴンを圧倒する、アルトの姿を。


「私が振るう以上に、とんでもない力を発揮するのよ」


【お読み頂いた御礼とお願い】

 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。


「面白かった」

「この先が気になる」

「アルトとシアの続きが読みたい!」


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