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感謝と旧知


「あのスケルトンは一体……?」


「数週間前より近くの地中から現れ、我らの里を襲いに来ているのです」


 馬車を止めながらデュランタはそう言った。

 

 視線の先では、馬車のついた反対側の柵が破られているのが見え、そこから入ってきたスケルトンたちを、十数人のエルフたちが打ち倒していた。だが、


「はあ……はあ……ま、まだ、来るぞ!」


 息切れするエルフたちをよそに、十数のスケルトンが、柵向こうから来ていた。。


「今度も群れかよ。くそ……こっちはもう、体力が……」


 既にエルフたちは疲れている。それが分かっているからか、

 

「……いけない。私も援護に向かいます」


 と、デュランタが走り出そうとした。ただ、彼女よりも早く前に出た姿があった。


「このままじゃ、アルトたちがお話しできそうにないし、私が手伝ってくるわね」


 シアだ。

 彼女は、少女の身で走り出し、獣の姿へと変わる。


 それを見て、デュランタは動きを止めた。


「え……シア殿……? その姿は一体」


「あ、説明を忘れていましたが、彼女は俺の仲間でして。牧羊犬としていつも働いてくれているんです」


 慌ててフォローの台詞を言うと、デュランタは目を丸くした。

 

「人の姿に変身できる魔獣、ですか……?! それは、とても高位のものしか出来ない筈ですが……」


 などという間に、シアはあっという間に、疲れたエルフたちを飛び越えて、前に立った。

 

「ま、魔獣……!?」


 驚くエルフたちであるが、シアはそれに気にすることなく、スケルトンの群れに顔を向けて、

 

「農地以外で技を使うから、3割くらいで行くわよ」


 大きく息を吸い込み、

 

「――ガオン!!」


 と大きく吠えた。


 声は振動の衝撃となり、一直線にスケルトンの群れに向かい――

 

 ――ドガン!

 

 スケルトンたちに直撃し、爆発した。


 それだけで、スケルトンたちはバラバラと、骨のかけらとなる。


 立ち上がるモノはいない。スケルトンはいなくなった。

 

 それを見て、シアは人の姿になる。


「ま、これくらいかしらね。『バーストハウリング』を外で使うとしたら。大丈夫、貴方達?」


 少女の姿になったシアを見て、先程まで戦っていたエルフの面々は驚いている。


 その中のリーダー格なのか、戦闘の指揮を取っていたエルフの男性が、シアに声をかける


「あ、ああ。た、助かったが、君は一体……!?」


「ただの牧羊犬よ。そこにいる優しいご主人様のね」


 と、シアが目線を送ってきた。


 丁度、デュランタと共に駆けつけた俺に、だ。

 デュランタに、エルフたちの視線が集まる。


「里姫、戻られたのですね? しかし、この方々は?」


「こちらのアルト殿は、『エリクシルフルーツ』の果実を育てて、現物を持ってきてくれたのです。……まさかこうして、武力でも助けて頂けるとは思いませんでしたが」


 その言葉を受けて、エルフたちは再び、わっと驚きの声を上げた。そして俺に聞いてくる。

「い、頂けるのですか!?」


「あ、はい。どうぞ」


 背負ってきた木箱の中身を見せながら、俺はエルフの男性に木箱ごとトマトを渡そうとした。すると、彼は、俺の手をぎゅっとにぎり、膝をつき、


「……ありがとうございます……! このご恩は必ずやお返しを」


 涙を流しながら、感謝の言葉を述べた。


「そ、そんな。大層なことでは……」


「大層なことですとも。これで、我らの食客――いえ、恩人を助けられるのですから」


 エルフの男性は、そう言って、トマトを大事そうに抱きしめる。


 ……そういえば、同胞を助けたい、とデュランタさんは言っていたけれど。


 彼が恩人と言っている、その人だろうか。と思っていると、


「おやまあ……懐かしい雰囲気がすると思ったら、君かい、マルコシアス」

 

 背後から声が掛けられた。


 振り向くと、そこにいたのは、一人の若い女性だった。

 

 ただし、背中に千切られたような黒色の翼を生やしていた。

 

 ……天使族……? いや、堕天使族の人? 初めて見たけれど……なんでエルフの里に……。

 

 突然のことに疑問に思っていると、エルフの男性が目をぎょっとさせて、翼を生やした女性を見ていて、

 

「ピュセル様!? お歩きになられて、大丈夫なのですか」


「まあ、このくらいはね。血と魔力のめぐりが悪いままだから、ちょっとでも動かないと死んでしまうし。――それに、久しぶりに旧知のものに会えたしね」


 ピュセル、と呼ばれた彼女は、シアの方を見た。するとシアの方も、ピュセルを見て頷いていて、


「やっぱり。あの紋章に見覚えがあると思ったら、貴女だったのねピュセル」


「知り合いなのかい、シア」


 やりとりを聞くに、昔からの付き合いとの事だが。


「ええ。だって、この子、私と同じ魔獣だもの。伝説の魔獣と謳われた中の一体ね。転生前の知り合いってことよ」


 そんな風に、気軽に言うのだった。


【お読み頂いた御礼とお願い】

 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。


「面白かった」

「この先が気になる」

「アルトとシアの続きが読みたい!」


 少しでもそう思って頂けましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のポイント評価、そしてブックマークの登録をして頂けますと、作者のモチベーションになります!(☆5個で10ポイントになります。この10ポイントを頂けると本当に嬉しいです!)


 どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーのテンポも良くて、内容も凄く、面白いです。 [一言] 早く続きが読みたいです。
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