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エルフの事情と、少しだけ変わる行動

ミゲルはそれを見ていた。

 

 飢え、という言葉を聞いた瞬間、アルトの雰囲気が変わったのを。

 さっきまでわずかに不安を抱えつつ、柔和なものだったのに、いきなり真剣な顔になっている。


「事情を聞かせて下さい」


 声色からも、不安なものは一切見えなかった。


「え、えと……? すみません、こちらの少年は……」


 エルフの女性は、僅かに困惑している。彼が育てた本人だと分からないから当然だろうが、

「アルト君。いいんだね?」


 一応、聞いた。アルトは、不用意に生産者であることをアピールをすることは望んでいなかったからだ。

 そんなこちらの問いかけに、アルトは、頷いた。


「俺は、この素晴らしいものを作った人たちが困ってるなら、飢えるかもしれないというのであれば、少しでも手助けしたいです。トマトを育てただけで、どういう役に立てるかは分かりませんが」


 エルフの女性は、ミゲルの方を見てから、そしてアルトを見た。


「その話しぶりを見るに、もしや、君が、このトマトを育てたのですか?」


「はい。俺だけの力ではありませんが。育てたのは事実です」


 その言葉を受けて、エルフは、アルトの手をぎゅっとつかんだ。


「出会いに感謝を……。少年、名を教えて下さいませんか」


「アルトと言います」


「アルト殿。私は、エルフの里の守り手、デュランタと言います。どうか私と一緒に、この近くにある里まで一緒に来てはくれませんか?」


「里ですか?」


「エルフの里はあまりよそ者を受け付けないと聞くが……」


「そうも言ってられない事情があるのです。何せ、作物が育たなくなっているのですから」


「なに……?」


 ミゲルは、僅かに目を見開いた。

 お世辞にもエルフの里は開放的とはいえない。今回のトマトだって、エルフ自ら売りに出向いてきたという事で話題になる位、エルフの里についての情報は限られている。

 それは商人として王都を行き来する自分でも同じなのだが、

 

 ……作物が育たないという話は聞いたことがない……。トマトが必要だと言った理由はそれか……?

 

 どういうことだろう、と考える間に、デュランタとアルトの話は進んでいて、


「分かりました。エルフの里に行くことは確定として、トマトの果実自体は、いくつ必要なんですか?」


「そう……ですね。可能であれば8個ほどあると、安心できるかと」


 その言葉に、アルトは悩むことなく、こちらに視線と言葉を向けた。 


「ミゲルさん、申し訳ないですが、全部は売れなくなりました。8つ以外の残りはお渡し出来るのですが、大丈夫でしょうか?」


「あ、ああ。それは別に構わないが」


「すみません。……では、こちらをお渡ししますね」


 アルトは、木箱から『エルフのトマト』を二つ取り出し、ミゲルに渡した。

 

「これは……どうすればいいんだね?」


「何に使うにしても、ミゲルさんに、全て、お任せします」


 その言葉を聞いて、ミゲルは、彼の祖父を思い出した。長年の付き合いで、やると決めたら即決即断で、任せようと決めたら全て任せてくる老人の姿を。


 ……エディもそうだが、グローリー家の者は思い切りが良い。その気質は受け継がれているようだね。

 

 思いながら、ミゲルは頷く。


「ともあれ、よし。任された。君は、君が望むように、動いてくれ」


「はい! ありがとうございます!」



 ミゲルからの言葉を受けて、俺は隣にいるシアに聞く。


「なんかとんとん拍子に話を進めてしまったけど、シアも、来るかい?」


「当然でしょ。私一人だけココに残ってても、つまんないし。アルトと一緒にいるわ」


「うん、分かった。それでは――エルフの里に連れて行ってください、デュランタさん」


「はい。迅速なご決断に感謝します、アルト殿……!」


【お読み頂いた御礼とお願い】

 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。


「面白かった」

「この先が気になる」

「アルトとシアの続きが読みたい!」


 少しでもそう思って頂けましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のポイント評価、そしてブックマークの登録をして頂けますと、作者のモチベーションになります!(☆5個で10ポイントになります。この10ポイントを頂けると本当に嬉しいです!)


 どうぞよろしくお願いいたします。

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