AIに パワハラしたら どうなるか?
今日は人の身、明日は我が身。
パワハラ上等! でなくて 撲滅!
舞台はとある会社の経理部。
若手社員の青場 譲は、上司の力原課長に
日々、パワハラを受けている。
今夜も一人、残業を強いられる。
<経理部 事務所 PM7:00>
[青場]
えー。係長、帰っちゃうんですかー。
[木村係長]
スマン。
どうしても、外せない用事があって。
[青場]
また、俺一人で残業ですかー。
[木村係長]
本当に申し訳ない。
そーだ。
代わりと言っちゃあ、なんだが
これ使ってくれ。
[青場]
ロボット?
[木村係長]
そう。A Iロボット。結構、役に立つよ。
[青場]
それ、どうやって使うんですか?
[木村係長]
やってもらいたいことを、
声に出して言うだけ。
例えば、「これ、コピーとって」
[A I]
はい、かしこまりました。
(しばらくして)
はい、コピーと原稿をお持ちしました。
[青場]
おー、スゲェー。
[木村係長]
今期の売上帳、持ってきて。
[A I]
かしこまりました。
(しばらくして)
はい、お持ちしました。
[木村係長]
これ、もとの位置に戻して。
[A I]
かしこまりました。
もとの位置に戻しました。
[木村係長]
なっ、すごいだろ。
[青場]
はい。
[木村係長]
これを賢く使って
残務を効率よくこなしてくれ。
(木村、退社する。)
[青場]
では、早速、A Iにお願いするか。
まずは、コピー。
ちょっと量多いけど、平気かなあ。
「これ、コピーとってきて」
[A I]
はい。量が多いので、
少々お時間ください。
[青場]
おー、頼もしいなあ。
だけど、A Iをいじめても
パワハラになるのかなあ。
怒ったり、逆らったりするのかなあ。
泣いちゃったりして。
おもしろそー。
ちょっと試しに、やってみるか。
[A I]
お待たせしました。コピーと原稿です。
[青場]
遅い。なにモタモタやってんだ。
やる気あんのか〜。
[A I]
(反応なし)
[青場]
黙ってないで、なんか言え。
[A I]
(反応なし)
[青場]
(A Iの頭を平手でたたく)
痛てっ、頭、メチャ固い。
よーし。
パワハラ、力原課長に、頭突きしてこい。
[A I]
(反応なし)
[青場]
節穴、末内部長に
「俺の仕事ぶりをもっとよく見て
ちゃんと評価しろ。」て、言ってこい。
[A I]
(反応なし)
[青場]
じゃあ、こんなのどうかな。
隣のコンビニで、ビールとつまみ
買ってこい。
[A I]
(反応なし)
[青場]
じゃあ、こんなのは。
ちょっと、いい娘 紹介して。
[A I]
(反応なし)
[青場]
俺のチ●ポ、ナメろ。
[A I]
(反応なし)
[青場]
お願い、ナメて。
[A I]
(反応なし)
[青場]
あー、つまんねぇー。
なんか、バッカみてぇ。
これじゃあ、ただの独り言じゃん。
うん? ちょっと待てよ。
そうか、なるほど。
<翌日、経理部事務所>
[力原課長]
おい、青場。
ここにある邪魔くさい荷物、
どっかに持ってけ。
[青場]
(反応なし)
[力原課長]
なに黙ってんだよ。返事しろ。
[青場]
(反応なし)
[力原課長]
(青場の席に近づき)
おいっ、俺をなめてんのか。
(見かねた女性社員の赤木が)
[赤木]
課長、やめてください。
それ、明らかにパワハラですよ。
[力原課長]
なんだとぉー。
[木村係長]
おい、青場。
今すぐ、課長をパワハラで訴えてこい。
俺が証人になる。
(他の社員も全員)
俺もなる。
私もなります。
[力原課長]
わかった。俺が悪かった。
頼むから、訴えるのだけはやめてくれ。
[青場]
では、これまでのことを
土下座して、謝ってください。
[力原課長]
(土下座して)
本当に悪かった。反省します。
二度とパワハラはしませんので
どうか許してください。
(そこへ、末内部長が現れる)
[末内部長]
もうそれぐらいでいいだろう、青場くん。
力原課長も反省しているようだ。
[青場]
はい。
[末内部長]
これからは、みんな明るく、仲良く
やってくれ。
(全員)
はい。
その後、力原課長のパワハラは、一切
なくなった。
青場が想定していたのとちょっと違った
形になったはものの。
まずは、めでたし、めでたし。
三日後の日中、青場は経理部の別室で一人で
A Iを使って仕事をしている。
そこへ、木村係長がやってくる。
[木村係長]
青場、ちょっとだけこのA I貸してくれる。
[青場]
どうぞ。
[木村係長]
なんか、部長が、このA Iの使用状況を
調べたいんだって。
どこかに報告する必要があるみたい。
[青場]
使用状況?
それって、どうやってわかるんですか?
[木村係長]
A Iに声で命令したことは、
全てこのA Iの中に録音されていて、
それを再生すれば
使用状況がわかるってわけ。
[青場]
えーっ!
[木村係長]
どうかした?
[青場]
いえ。
ちょっと仕事の切りが悪いので、終ったら
私が部長のところへ持って行きます。
[木村係長]
あっ、そー。じゃ、よろしく。
(木村、立ち去る。)
[青場]
ヤバい、どうしよう?
(A Iの前で土下座して)
この前は、本当に悪かった。
もう二度と、あんなことしないから
頼むから、あの夜のことは
言わないでくれ。
(木村が再びやってきて)
[木村係長]
おい、お前、
なに、土下座の練習なんてやってんの。
まさか、カミさんに内緒で、
不倫なんて、してんじゃないだろうな。
部長がお急ぎだから、これ持ってくよ。
(木村がA Iを連れて退室する)
[青場]
あー、もうおしまいだぁー。
(しばらくして、木村がA Iを持って、
戻ってくる)
[木村係長]
ありがとう。
これ、ここに置いとくよ。
[青場]
はい。
[木村係長]
部長から聞いたんだけど
[青場]
(ドキッ)
[木村係長]
お前、これ大して使ってないみたいじゃ
ないか。
遠慮しないで、
もっとガンガン使っていいよ。
壊れないから。
人間じゃ、ないから。
(木村立ち去る)
[青場]
(A Iに抱きつき)
ありがとう。言わないでくれたんだね。
もう、あんなことしないから。
これからは、君を大切にするよ。
(実はこのA I、反応した指示のみ
録音する仕組なのであった)
完