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シティポップ

テストが終わって、早帰りした大川は、庭いじりをしていた薫と会う。


昼の用意がないのを知ると、ラーメンを食べないかと声をかけられた。


大川は、それに頷いて縁側で薫の庭の紅葉を見つめていた。


澄んだ青空が遠くに感じ、薄の穂がふわふわと綿毛をつけるのを見ると、秋も深くなってきた気がする。

「もう少しまっててね。チャーシューおまけしちゃうから。」

薫が笑いかけ、大川は、畳に置いてあったカセットテープに気がついた。


「これ…聞いてもいいですか?」

大川の問いに薫は笑顔で答える。


ブルーの透明なカセットには、『夏』の文字だけ。

デッキにいれて、再生すると、80年代のシティポップが流れ出す。


軽快な音楽が、南の海岸とオープンカーの懐かしいイメージを部屋に撒き散らす。


「お待ちどうさま。まあ、懐かしいわ。」

薫は嬉しそうに目を細めてテーブルにラーメンをおいた。


「いい曲ですね。」

大川は、秋の青空を見上げる。

こんないい天気には、こんな曲をBGMにドライブとか楽しいに違いない。


車の免許がとれたら、親父の車を借りて、近所のキャンプ場に皆で行けたら、どんなに楽しいだろう?


ダッチオーブンは家にあるし、鳥の丸焼きとかを作って1日楽しむのはどうだろう?


「あら、本当にそう思ってくれる?」

薫が嬉しそうにそう言って、ラーメンをすすめてくれた。


「はい、シティポップですよね?最近、人気なんですよ。」

大川は、そう言って部屋へと上がる。


ラーメンを食べながら、軽快な曲に、空想を広げる。


大阪では、うまく想像できなかったダブルデートが、信州の山々なら、するすると思い浮かぶ。


トロッコ列車で山をめぐったり、紅葉を楽しんだり、スキーをしてみたり。


ラーメンを食べ終わり、大川は、礼を言った。


それを聞いて、薫が穏やかに微笑み、少し、恐縮したように大川に聞いてくる。


「この間は…変な事に付き合わせてごめんなさいね。」


なんの事だろう?


大川は、一瞬考え、そして、葵と色々なポージングをさせられた事を思い出した。

「いえ、勉強になりました。」

大川は、そう言って、ふと、思いついたように薫に聞いた。


「あの…もし、大阪にデートをするなら、何処にいきたいですか?」


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