表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/107

返却の作法

朝が来て、教室に入る前に葵は隣のクラスを覗いた。

秀実に会いたい、話したい。


『ロンドン浪漫』の事をもっとよく知りたい!


そんなあせる気持ちを背後からやって来た大川にとめられた。


「おはよう。本、返しにきてくれたんだ。」

大川は穏やかにそう言った。

「おはよう、大川くん。あれ、私から飛騨さんに返そうか?」

葵は笑顔でそう返した。

普通、女子から借りたものを女の子にそう提案されたら、普通の男子は了解してくれる。が、大川は違った。

「ダメだ。又貸しして、返却を頼むのはトラブルの元だ。」

確かに、それが正論だ。

が、葵にも引けないわけがある。

「そうね、じゃあ、一緒に返すのはどう?」

葵の提案に、大川の顔色が曇る。


「汚したのか?」

穏やかだが、大川の体から葵を非難するような圧が飛ぶ。

「まさか!」と、思わず葵は叫んだ。


昔の同人本…そんなものを汚しては、取り返しがつかない。

ここで、そんな貴重な本を本の価値に無頓着そうな大川に貸した秀実の行動によく分からない不安を感じる。

何で、叔母さんのイラスト付きの昔の本なんて秀実さんは持ってるの?


葵は、自分の知らない奈穂子を秀実に知られていた事に、モヤッとする自分に気がつく。


「聞きたいことがあるのよ。あれ、昔、発行された同人小説みたいなのよ。

だから、飛騨さんに個人的に聞きたいことがあるの。」

葵は、話ながら秀実がそろそろ来てくれないかと希望をもつ。

「そうなのか…。同人…。」

と、一度、大川は言葉を切り、少し考えてから、ビックリしたようにこう言った。

「じゃあ、あの話は、素人が書いていたってことなのか?」


えっ…(°∇°;)


その声に、周りの人間が葵と大川を見た。


「おっ、大川くんっ(///∇///)、じゃあ、放課後図書館で本を返すからって、秀実さんに言って。

大川くんも、気になるなら来れば良いでしょ。じゃあ、お願いねっ。」

葵は、周りの視線に赤面しながら、言葉を大川に押し付けて自分のクラスに帰っていった。


「お、おおっ…。」

大川は、葵につられるように赤面し、返却の細かい自分ルールについて、忘れてしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ