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ロンドン浪漫

街灯の光だけがボンヤリと部屋の輪郭を写し出していた。葵はベットに横になり天井を見つめた。


あれからすぐに、他の部員がやって来て、思わず本を借りて帰ってしまった。

葵は、薄暗い天井を見つめてため息をつく。

6畳の洋間には、それほど荷物は置いてない。

本は、棚に入らないものは捨てるか、奈穂子の家の納屋に入れるからだ。

向こうにもって行くと、上手く行けば、奈穂子が続きを買ってくれるので、おこずかいの節約にもなったからだ。


そんな関係で、奈穂子と葵の本の趣味は、なんとなく似かよってきていた。


奈穂子も葵も、昔の少女の漫画よりの甘めの歴史物やバンドのビジュアル系恋愛などを好んでいる、と、思っていた。


けれど、今回の乱歩、村おこし計画の話を聞いていると、サスペンスや刑事物、SFなど、奈穂子が広く物語を知っている事に気がついた。


大人の殆どが、明智小五郎が好きなことも。


葵は、枕元に置いてある『ロンドン浪漫』の内容を思い出していた。


友達が噂するほど、過激な内容は含まれていなかった。


クラスメートの男子にいきなり、変な(ほん)は、貸さないよね( ̄〜 ̄;)

足をバタつかせながら、葵は物語を回想する。


クラッシックのホームズは読んだことはなかった。

でも、ホームズとワトソンくらいは知っている。

探偵と助手。


この話もそんな二人の物語だ。


『ロンドン浪漫』の探偵は、アーサー。

助手はグラストン。

探偵が登場するが、派手な推理ショーなどはない。

今回の話も、死んだ婦人が実は自殺であった…みたいな話で、そこへ至る心情を探るような作りになっていた。


お色気シーンはなく、探偵アーサーが、一方的にグラストンを好きでいる、そんな話だった。


この話、ちょっと好きかも。


知的で控えめ、それでいて強くて、情熱的なアーサー。しかも、絵も爽やか系。


葵は、これなら自分もBLにはまりそうだと思った。


読後の余韻に満足すると、明かりをつけてネット検索をする。

が、ヒットしない。


よくよく見ると、これは同人小説のようだった。


他の話はあるのかな?


気になり始めた葵は、秀実に連絡をとりたくなった。が、連絡先が分からない。

明日、飛騨さんに直接聞かなきゃ。


葵は、明日が待ちきれない感じで本の表紙を見つめる。

どこか、懐かしいような雰囲気の絵だ。

しばらく見ていて、何か、知っているような気がする。


本の終わりの挨拶に、イラストレーターの名前を探した。

ホリタツ…と、書いてあった。


これ、叔母さんじゃない(○_○)!!


葵は、本を握りしめて心が震えるのを感じた。


ホリタツは、学生時代の奈穂子のペンネームだ。


(ほり) 辰雄(たつお)と言う小説家が『奈穂子』と言う小説を書いていて、からかわれたので逆に名前を貰ったんだと、倉庫で見つけた文集に書いてあったのを思い出した。


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