公募
放課後、部室で葵は大川に最近の出来事を話していた。
昔のドラマは、思っていたより大人仕様だった件
奈穂子とのドライブ。
そして、奈穂子の迷惑きわまりない野望について。
大川は無言で、少しうつ向きながら聞いていた。
そして、葵の話が終わると、一言「わかった。」と、言った。
少しの無言の間があった。
色々なストレスから解き放たれて、葵は晴れやかな気持ちで大川を好意的に見つめた。
大川は、物静かで何を考えているのか良く分からない印象だったが、今日は、無言で葵の気持ちを受け止める姿に頼りがいを感じていた。
「ありがとう。聞いてくれて。少しスッキリしたわ。」葵は、そう言って無邪気に笑って話を続けた。「やっぱり、友達に嘘をつくのは嫌なものね。あー、あんな入浴シーンがなければ…。もう、普通に脱衣所で殺せばいいじゃないね?裸になるまで待ってるなんて、本当にエッチな怪人なんだもん。嫌になるわ。」
葵に同意を求められて、大川は、気まずそうに天井を見てから立ち上がった。
「そろそろ、みんなが来るから郷土資料部の準備をしよう。」
そう言って、大川は部室である準備室から図書館へと向かう。
葵は、もう少し乱歩の話をしたかったので、少し不満そうにしながらも後ろをついて行く。
「そう言えば、木曽は何で郷土資料部に入ったんだ?」
大川に聞かれて、葵はテーブルに鞄を置きながら答える。
「別に…気楽そうだったし…うち、親戚が酒屋で祭り好きだから、そう言う歴史系の話家族が好きなんだよ。それでかな?」
葵はさらりと答えて、本棚に資料を探しにゆく。
「あれ?今日は二人だけ?」
図書館の引き戸が開いて秀実の声がする。
葵が、それに気がついて秀実のところへと向かう。
「そろそろ来ると思うよ。
文芸部の人もまだ来てないね。」
葵の言葉に、秀実は笑う。
「うちは、基本、自由参加だから。今日は、来ないかも。」
「そうなの?」
葵は、不思議な気持ちになる。最近、感染も少なくなってきて、町にも少しずつ人が歩いているのに。
「うん。うちは去年から、月イチの集会さえ参加すれば、後はネットに作品をあげて行く事で参加してることになってるよ。サイトの公募とかに作品をあげているから…そうだ!葵ちゃん達も参加しない?」
えっ…(°∇°;)
葵は、驚いて無意識に一歩下がる。
いきなり、公募とか言われても、どうしていいか分からない。
「そんなに構えなくても…大丈夫だよ。童話を作るだけだから。」
秀実は簡単そうに言う。が、その様子が益々、秀実を不安にさせる。




