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ドライブ

奈穂子の軽自動車の後部席で葵は、姿勢正しく座る大川を見ていた。


なんか、大型犬の仔犬みたい( ´艸`)


ピンと背筋を伸ばして、奈穂子に視線を向ける大川からからは、並々ならぬ奈穂子への好意が駄々もれしていたが、不思議なことに葵に不快感は無かった。

むしろ、駅で奈穂子と会った時に、「仲が良いわね」と、ナチュラルに笑われた方が不快に思った。


男の子といると、皆、すぐからかうんだもの。


葵の不満など知らない風に、奈穂子は楽しそうにクラッシックを聞いていた。

著作権の切れたクラッシック音楽は、これからネットで何かをするのに聞いておいた方が良いと言いながら。


動画サイトでも作らされるんかな(ーー;


葵は、奈津子の思いつきで活動報告を書いたまま放置されている小説サイトを思い出して複雑な気持ちになる。


叔母さん…本気でネット知らないんじゃないかなぁ(T-T)


インターネットに過剰な夢を託して、葵に押し付けているのではないか、と、不安になってくる。


流れてきた曲が、ベートーベンの『歓喜の歌』だった。


大丈夫かな(T-T)


誰も話さなかった。否、話せなかった。


車内は、外国のおじさんの独壇場だ。自慢の喉を震わせて、新世紀に向ける歓びを多分、ドイツ語で高らかに歌い上げる。



葵は、(うつむ)くふりをして隣の大川を見た。

大川は、フロントガラスに広がる青空を真っ直ぐ見つめていた。


それは、主を見守る忠犬を葵に連想させた。

そして、奈穂子と大川の関係について考えさせた。

が、どんなものにも終わりはくる。曲が終わり、しばらくすると、今度は甘いピアノの旋律が広がる。


「エリック・サティですね。」

少し照れたように大川は奈穂子に語りかける。


大川くん、知ってるのこの曲(゜д゜)


葵は、その外見からはうかがい知れない、大川のインテリジェンスを感じる。

「『あなたが欲しい』サティの中で一番好きな曲よ。」

奈穂子の明るい声がした。

えっ…(°∇°;)いつもは、スーパーロボットソングしか聴いてないじゃん。


奈穂子のすました回答にも葵は混乱する。


さっきの『歓喜の歌』だって、絶対にロボットアニメから好きになったに違いないんだから。


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