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便所から始まる性剣の伝説  作者: てるる
第一章 浄水場篇
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67話 ゴーアヘッド・シンドローム ③!?

 ここで、チーズ・ヴァーガーの持つ一つの思想について触れておく必要がある。

 彼は自分を『正義』だと、そう信じて疑わない。

 人類を進歩させるのは自分であり、それを阻む者は旧式の考えに囚われた民衆である。

 その思想がチーズ・ヴァーガーの根底には父親の死以来宿っている。


 確かにチーズ・ヴァーガーやその父の考えは正しく、世界を導くにも相応しいものだろう。

 だが、結局のところチーズ・ヴァーガーは父の過ちを知りながらも、メシア思想に自惚うぬぼれているのだ。

 それはチーズ・ヴァーガーが30と数年あまりの生涯を孤独であり続けたが故だろうか。

 人々と心を通わす事を忘れ、自分とだけ対話し続けた者の思想が歪むのもまた一つの法則だろうか。

 チーズ・ヴァーガーにあるのは、ただ『恐怖』である。

 それはエルフ族に付け狙われているかも知れない疑念だけではない。

 人々への恐怖である。

 ナルソシ・アスナイでの体験から、チーズ・ヴァーガーは自分とは考え方の違う人間を十把一絡げに拒絶した。

 そして現在、チーズ・ヴァーガーは右の首によりその二つの恐怖を乗り越えたと確信しているのだろう。



 そのチーズ・ヴァーガーが右の首をもって新たに世界へ施した呪いこそが『原罪』である。

 遠い人類の祖先は何を条件に知恵の実を食したのか───

 それは『世界の発展』である。

 そして、その神との盟約に背いた人間からは大いなるエネルギーによって、”前へ進む力”を奪われる。

 盟約に背くとはつまり、『世界の発展』を今成し遂げるという人間の精神を阻むこともまたそれに当てはまる。

 ”前へ進む力”を極限まで、無限に奪われた者はどうなるか、それは死であろう。




─── アリシア視点

    6月24日(7:58)




 チーズ・ヴァーガーの右の首、そして私の性剣───。

 直感的に、どこか似ている。

 魔法で説明がつかないという点でも、人体の一部という点においても、それはやはり共通している。

 奴を知ることで、もしかしたら謎に包まれた性剣の起源が判明するのかも知れない。

 しかし、今は時間が無い………



 チーズ・ヴァーガーの起こした運命の乱れは今や私を始末すると言うただ一点へのみ収束している。

 恐らくだが、チーズ・ヴァーガーの能力には運命を引き寄せるまでに『時間』が掛かる筈だ。

 でなきゃ私達は皆、隕石にでも潰されている。

 つまり、時間は僅かしかないということだ。

 厄災のエネルギーが完全に私へ纏わりつくその前に…………



「いいか、私が今からする事はいたって大真面目だし、決死の最終手段だ。」


 私は扉を開いてすぐの広間の長椅子へ腰掛けた。

 仕組まれた運命の渦中では私のあらゆる行動や思考は意味をなくす。

 奴を探して広い教会内を必死に駆けずれば、その行動や心拍までもが私を袋小路へ追い込むだろう。

 チーズ・ヴァーガーの能力は因果の道理へ作用するものだ。

 だから、奴を攻撃すれば攻撃したせいで死ぬ、走れば走ったせいで死ぬ。

 対象とされた人は”前へ進む”意味を無くすのだ。

 つまり、この状況下で教会内からチーズ・ヴァーガーを探して叩くというのは愚策。

 佐々木の話からの推測ではあるが。


 私は引き抜いた性剣を陰部へあてがった。


「う……んっ!…///」


「あ、あっあ…♡」


 場違いな快感が性感帯から私の内部を巡る。

 嬌声───

 それは広大な教会内で反響しあった。


 リビドーの刺激はまた次の快感を促し、性剣を抱きしめ手淫は加速した。

 おもむろなひとりエッチ。

 自分の行動が徐々に死へ収束するというのなら、私がひとりエッチをしたならひとりエッチのせいで死ぬ。

 ならば、一つだけ奴をヤれる可能性がある。

 何よりも、乙女のひとりエッチを覗き見た者は死ななきゃいけない。

 運命を創る能力はいつでもどこからでも私を殺せる能力だろうが、だが、奴は私が死んだことを確認する為に必ず”近づく”筈なんだ。


『何を考えているッ!?死を覚悟して人生の最後にやることがそれか!』

(大丈夫……っ、ちゃんと策はあるから……)

『策だと?策って何だ!ひとりエッチをしたらひとりエッチが理由で死ぬんじゃないのか!?自慰中に発作で死んだ事例だってあるんだ!アリシアの死因はきっとそれだね!一番ダサい死因だ!』


 粗チンは私の脳を馬鹿にしきっていた。

 そんな奴には私のとっておきの策は教えてやらん。


「……秘密♡」


 小さな呟きは身体と同じく火照っていた。


「Unlimited Tintin……」


 引き出された精力が脳をとろけさせる。

 本当に死なぬよう慎重に、しかし仕組まれた運命に辿り着く前に、これはただ絶頂すれば良いひとりエッチとは違う。

 ここで普段通りのひとりエッチで済ますような奴らと私は違う。

 『今日で最後かも知れない』そんな想いを胸に、長椅子へ横たわり、陰部へのアプローチを重ねる。

 長椅子の木材に吐息がはじかれ、甘い香りが漂った。


 体液の分泌が促進され、性臭は充満し、性剣もまた柄の部分から液体に塗られていた。

 衣服は乱れ、露出された腹部を人差し指でなぞると、刺激が身体を仰け反らせる。

 姿勢を変え、いろいろな部位へアプローチ続け、唾液の糸を引いた人差し指が布地の裏側を這い、その度に思考が朦朧もうろうとする。

 長椅子の脚を液体が音も無くゆっくりと伝った。

 

「Unlimited Tintin……ッ♡」


 身体の保つ限界までリビドーを引き出す。

 ”合言葉”と同時に性剣から溢れるこのエネルギーは一体……その所在しょざいは何なのだろう。

 と言うよりも、この自分が自分ではなくなって行く様な感覚は……

 これ以上、性剣から精力を引き出すことに本能が躊躇いを覚える。

 しかし、それに対する見当はそれなりについているのだ。

 それこそが、たった一つ見出した私の『策』なんだからな。


 性剣に隠された第二の”機能”。

 いや、それこそが性剣の本質と言えるのだろうか。

 

 朦朧とする意識、無限の快楽の渦へいま飲み込まれんとする私へ、夢を見ているような……そんな映像が妄想に割って入ってくる。

 私は何処かへ落ちている……

 穴の中?いいや、もっと深い場所だ。

 それが何処かは分からない……けど、落ちゆく私を誰かが見つめている。

 それは誰だ?物凄く知っている人だ。

 名前だって知っている……確か、そう、彼女の名は”漆畑うるしばた”………霧華きりか

 そんな名前だった……気がする。


 でも、それが誰だったかが分からない。

 いや、そもそも私は何故それが人の名前だと分かる?

 名前の付け方が私の知っている世界とはまるで異なるのに。



 思考が徐々に鈍って行く。

 夢幻との境の様な、1秒前まで自分の考えていたことが分からなくなる感覚。

 そろそろテクノブレイクの頃合いだろうか。

 普通に考えれば過剰なひとりエッチで死ぬだなんてあり得ない事のように思えるが、チーズ・ヴァーガーの仕組まれた運命の中じゃ未来はそうなってしまう。

 テクノブレイクは存在しないという意見もあるらしいけど、そんなのお構いなしだ。

 あるのか、無いのか、それは未だ証明のされていない領域。

 チーズ・ヴァーガーはそんなものは自分の都合の良いように現実へ反映させてしまえる。


 鼓動が乱れ、早まっている……ような気がするけど、それをどこか客観的な事実として受け取ってしまう。

 自分のことではないように。

 そう、まるで自分が自分ではなくなって行く感じ。


「うっ、ああああああああ……ッ///」


 ───そして迎えた絶頂。

 自分という存在を全て放出するような快感のいただき。


「……Unlimited…Tintin」


 最後にそう呟いた。


 後は、頼んだぞ。───

突起物


アリシア・バァラクーダとチーズ・ヴァーガーに共通する後天的に身についた『人体の一部』。

突起物は首ならば首の、チ◯コならチ◯コの機能を持つ。

それは呼吸であったり、勃◯や射◯であったりなど、その為、右の首の未来を仕組む能力もその首の”元々の所有者”が呼吸をするのと同じ様に出来て当然だった機能である。


また、リリア・エグソディアにも同様の”右手”が発現しているが、その正体については未だ謎である。

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