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便所から始まる性剣の伝説  作者: てるる
第一章 浄水場篇
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62話 ヴァーガー・キング!?

アリシア・バァラクーダ


年齢:16歳

血液型:AB型

誕生日:1月10日

利き手:左

出身地:プロモセラ区?

瞳の色:黒

身長体重:147cm、41kg

スリーサイズ:79、53、72

おっぱい:Dカップ

学歴:リヴォル・ヴァレッジ学園を中退

自信のあること:階段を降りるスピード

憧れ:ジョルノ・ジョバァーナ

変わった体験:想像妊娠を何度か

「おいてめぇ……!」


 その声が私の夢幻の世界を打ち壊した。

 視界に光が切れ込み、夢と現実の区別が意識を鮮明とする。


「私に何か用かよ?あん?」


 妙に言葉遣いの悪い女だ。

 随分な手付きで私を眠りから覚まそうとしているらしい。

 


「君は……アリシア・バァラクーダ………」


 小柄で金髪の少女だった。

 それが私を起こした者の正体。

 そうか………私は眠っていたのか。


 右の首の意思なのか、あの状況を私は”眠る”事で一時打破したらしい。

 そして、始めに目に映った彼女の姿は私に無敵の全能感を蘇らせた。


「そうか、そう言う事だったか。ははは……ふはははは……」


 こぼれ出した私の声にアリシア・バァラクーダは一歩後ずさる。

 鬼や”妙な膨らみの女”も変わらずこちらへ鋭い眼光を突き付け離そうとしない。

 今日は二度目の目覚めだが、やはりどんな事柄に対しても『どうにかなるだろう』と思えるのが目覚めというもの。

 血を吐き、恐怖に震えた先程が全く嘘のように晴れ晴れとしたスッキリ爽やかな気分だ。

 どれ程の間、眠りこけてたのかは知らないがね。


「お前……私に恨みでも?」


 アリシア・バァラクーダは大層訝しげな目をしていた。

 ははは。まぁ当然のことかな?

 散歩でもする気分で外に出たら、お友達から『命を狙われている』と説明され、その本人は目の前で眠っていたのだからな。

 

「いいやそう言う訳じゃないさ。始末はするがね。」


 言いながら、私は立ち上がり服をはたく。

 今この場にアリシア・バァラクーダが居るということは、私が眠る寸前に右の首を通して願ったのだろう。

 王城からアーヴァンレッジ通り22番地までおおよそ8分程度。

 ならば私が眠っていたのは10分間程度と推測出来る。


「え、えっと……あんた誰?」

「私はチーズ・ヴァーガー。理想郷の実現を願っている。その為に君の確実な死が必要だ。」

「は?え、頭ヤバい奴?」


 アリシア・バァラクーダが来たなら私に敗北は無い。

 

 いいや、それ以前に、アリシア・バァラクーダの存在の有無とは関係なく、既に『完了』しているのかな?

 さっきの礼に少し奴らを痛めつけるのも精神衛生を考えれば悪くない。

 と、つい数秒前と打って変わって、声も出せず苦しそうにうずくまっている鬼の子を見て思った。

 どうりで攻撃されない訳だ。

 徐々に、始まっているのだな。フフフ……

 私と、右の首の新たな『能力』……秘められた『才能』。



 右の首、私はそれが何処の誰の首だったのかを知らない。 

 その答えがこの世界に存在しないということも直感している。

 人格など無いと思っていたが、さっき二人に追い詰められた時、私は確かにその意思を感じた。

 昏睡したのもその為だ。

 

 私は右の首の持つ能力を『未来を創る』と認識していたが、それは少しだけ的を得ない認識だったらしい。

 私に与えられた能力の本質とは、『未観測の事実を書き換える』能力だったのだ。

 その眠れる才能に、私は眠りの中で触れた。

 眠る事が偶然にもそれを引き出すトリガーとなった。

 『未観測の事実』へ『夢』という不可思議が代入された。

 起こるのはそれだ。

 



「オオトバネムシは消えたのではない。」


 私は晴天の大空を仰いだ。


「彼らは次の存在へ至ったのだ。」

「お前……なに言って……」


 夢の中の出来事を憶えていることは出来ない。

 これから先に起こる事は私にも分からない。

 ただ一つ言えることは……それが私を守る為の現象であるということ。



「うああああああ!!!」

「ワッちゃん!?」


 喉の奥からひり出した様な、かすれた悲鳴が一帯に響く。

 鬼が路上を這いずってうめいているぞ。

 書き換えられた事実はまず鬼の子へ矛先を向けたか。


 鬼が魔力でオオトバネムシの渦を消し去った。

 それが最初の真実だった。

 しかし、その未観測の事実へ私の『夢』が新たに事実として上書きされた。


 さて、夢を思い出す事は出来ないが、鬼とオオトバネムシの特徴を繋ぎ合わせれば、おおよそこの現象の正体を推測出来るぞ……

 きっと魔力だ。

 オオトバネムシやその他の下等生物は火を恐れる様に魔力を恐れる。

 オオトバネムシ……彼らの精神は今、きっと人々の”魂”に居るのだろう。

 彼らの情報体は人々の魂にインストールされているのだ。

 ならば、私に対して魔力を使用した者は魂にダメージを負う。

 きっと、自分の中のオオトバネムシの『部分』が魔力を拒絶するんだ。


 憶えてはいないが、知っている。

 まったく、私はどんな夢を見ていたのだか……


 しかし、これで右の首の天敵と言える魔力は封じられた訳だ。

 自分の意思とは無関係に魔力を垂れ流す鬼にとっては最悪の現象だな。

 まさに効果は抜群。

 


「そして、その光線を放つのはやめた方が良い。」


 私はおぞましく蒼白い光をこちらへ向けた”妙な膨らみの女”へ告げる。

 私の均衡を破壊して来た恐ろしいパワーも今となっては御しやすい。

 フフフ……もう手遅れかな。


「うっ……ぐぁッ!」


 数秒と間を置かず、光を帯び突き出された右手は痙攣を始めた。

 宿っていた魔力は瞬時に消え失せ、”妙な膨らみの女”もまた地に伏せる。

 魔力を自由意思で扱える分、鬼よりも効き目は薄いが、しかし私の驚異ではなくなったな。


 鬼を封じ、”妙な膨らみの女”も封じた。

 残るは……鬼の前であたふたとしているアリシア・バァラクーダだけだが……

 もはやこの場に彼女が居る必要性は無い。

 アリシア・バァラクーダを人質にでも取れば鬼の驚異を封じられるかと思ったが、不要な願いだったらしいな。



 あれだけの数……

 ここら一帯の人々の精神には今や肉体を捨てたオオトバネムシが一部としてインストールされている。

 右の首の能力が消え去った訳でも無い。

 つまり、今が全ての因縁の因果を消し去る絶好の機会と言える。

 このままアリシア・バァラクーダは始末する。

 


 い、いや……待てよ…?

 アリシア・バァラクーダの、あの鬼を介抱しようとあたふたする動き……

 何か妙だ。

 現状を把握出来ている訳はないが、なにか嘘くさい。



「今現在を生きる人々は、自分がどれほど長い進化の歴史の上に立っているのかを考えない。私達は海生のミクロな生命から始まり、何億何万もの歴史の中で進化を繰り返し、その上に揺るぎない今はあるのだ。」


 私はアリシア・バァラクーダへ迫る。

 私が彼女を恐れる理由……それはただ一つ。

 5年前のアリナ・バァラクーダの様に、奇怪な技を持っているかも知れないという疑念だ。

 何も無いならそれで良い。


「だが、その人類の遍歴を見た者は世界中に誰一人居ない。知っていたとしても、それは推測に過ぎない。進化の道筋と言うのは『未観測』なんだ。………もしかしたら、その中に”変なモノ”が混ざっていたりするかもなぁ………」


 しかし、例え”何か”持っているのだとしても、『未観測の事実を書き換える』真の右の首の能力が立ち塞がる。

 眠りの中で覚醒したこの現象は私自身ではコントロール出来ないし、新たに現象を引き起こす事も出来ない。(また寝ない事には)

 だが、だからと言って引き起こされた現象が一つとは限らない。


 さぁ……ここからが、真の右の首の能力なのだ。




「(こいつ、近づいて来るぞ……。やはり、知らないのか?”性剣”の存在を……)」


 

 私はそれを気にも留めなかったのだが、その時、アリシア・バァラクーダは自身の股間部に左手を当てていた───。

ヴァーガー・キング


チーズ・ヴァーガーが『眠る』事で右の首の能力の本質に触れ、偶発的に発現した能力。

それは『未観測の事実を書き換える』恐るべき現象である。

夢に見た光景を『未観測の事実』に代入し、事実として世界へ影響を及ぼす。

それは例えば、消えた筈のオオトバネムシを情報として人々の魂へインストールしたり、人類の進化の遍歴に『何か』を混ぜ込んだりなど。

この力の働きの中では、一度消えた存在も不正な力を借りて復活を遂げる。

それがチーズ・ヴァーガーにとって『未観測』だったのなら。

あらゆる事実も、人々の心も、全てはチーズ・ヴァーガーの主観によって左右する変数でしかなくなってしまう。

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