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便所から始まる性剣の伝説  作者: てるる
第一章 浄水場篇
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22話 ”あいつ”!?

「なぁ、何かお前から告られたんだけど。」


 俺は”あいつ”に言った。


「あら、私も可愛い事するわね。」


 ”あいつ”は俺にそう返した。



 それはおよそ3ヶ月程前へと遡る。

 俺が何となくその辺をふらふらしたのち、我が家に舞い戻るとそこには何故かは知らぬがアリシアが居た。

 そして、彼女は開口一番にこう言ってみせた『私は10年後の未来から来た』と。

 いや、正確には開口一番ではなかった。それは俺が彼女の存在に気づいた瞬間を零点れいてんとした場合での開口一番であり、彼女が言うには俺が彼女の存在に気づく3日前から既にそこに居座っていたらしい。実に怪奇である。


 確かに風体に多少の差異はあれど、それは10年の月日の中での変化だと言われれば納得出来る程度のものであり、基本の顔の造形などは変わらず可愛らしかった。

 しかし、『10年後の未来から来た』と言うからにはその頭にはさぞ深遠な知が集約されていそうだが、彼女はどこか遠い目をしながら未来に対し多くを語らない。

 何故なら、そこには重大にして決定的な『誤解』があるからだ。

 なんと彼女は10年前にタイムスリップしてからそろそろ10年が経つのだと言う。

 すなわち、彼女の語れる未来と言うのは既に過ぎ去っており、これから数年後の世界は彼女にとっても未知なのだ。 

 こんな無能な時空転移者が居るだろうか?いや居ない。

 『あんたはこの10年間なにやってたんだ』と小一時間詰問してやりたい。

 遠い目はただの近視である。

 しかし、この知能指数の足りない感じこそが彼女を他でもない”アリシア”だと認めてしまう所以ゆえんなのだ。


 最初こそここに住まう事の代わりに家事等を手伝うなどとうそぶいていたが、所詮は嘯くだけであった。

 俺がその言葉を多少いいように都合よく解釈し、彼女に声を掛けると毎度「仕事がある」と言い俺の部屋に籠もり、俺が俺の部屋に入れば決まって寝ているか、さもなくば寝ているかのどちらかである。



「まぁ私がここに住み着いてるのも君が大好きだからだしね。」 

「知ってたけどね?どうせそうだろうと思ってたよ、俺は。明晰な頭脳、端麗な容姿、歯に衣着せぬ物言い、スタ○ド使い、惚れない方がおかしいんだ。そう言えば、昔キスされた事もあったしね。頬だったけど。」


 俺がそう言うとアリシア(大)は露骨に嫌そうな顔をしてみせた。

 照れて赤くなっちゃうかな?と思ったけれど予想外。


「それは忘れなさい。サンダル・ユニオル!」

「やめろ!サンダルは捨てた名だ!」


 世の男性諸君は自分の事が大好きな女性とほぼ同棲状態にある男を見たらどうなるだろうか?いいや、聞くまでもない無粋な問であった。

 俺個人の意見としては、金色こんじきのボールの表皮を剥ぎ取り、其奴の尊厳を踏み躙る程度では心を痛めないだろう。

 その金色こんじき金色こんじきと言われているにも関わらず、その実ただのピンク色をしたボールを見た女性陣は其奴に呆れ果てた視線を送るに違いない。


 『当たり前と思っているところにこそ真理は隠されている』とよく言われるが、なるほど、この長年使い倒して来たオンボロ家屋の東端に位置する汚部屋、すなわち俺の部屋にこそ世の男性諸君の羨むアルカディアはあったのだ。

 しかし相手は四捨五入すればアラサーである。


 さて、話はアリシアからの手紙へと戻る。

 議論はこれに対し俺はどう返答すれば良いかと言うものだ。

 そこで、まずはアリシアと言う人間を二つの軸から感情的に分析していこうと思う。

 一つ目に容姿についてである。

 これは世の男性諸君の妄想する美少女像を完璧に体現していると言える。

 アリシア(大)を見る限り10年間で身長はこれっぽっちも伸びなかった様だが、出る所は出ており、可愛らしく、小ちゃい。

 もしアリシアと今出会っていたなら、俺はその容姿に思わず心奪われてしまっていただろう。


 二つ目に内面である。

 最悪である。

 責任者は誰ですか?と聞かれれば俺は元気いっぱいに「はーい」と答える。

 そんな彼女に対し、俺としては両思いを匂わせる言葉を返し、そのまま彼女とねんごろに...と言うのもやぶさかでない。そして、その当然の帰結として俺の人生が桃色にただれて行くと言うのならそれは喜ばしい事だ。

 何を隠そう、俺の行動原理は突き詰めて行けばその全てが性欲へと帰結するのだ。

 だが、何も性欲に忠実に...と言うだけではない。俺の事を想う彼女を想えばこそである。


 それらを踏まえ、俺はどの様に紙面に筆を走らせたのかと言うと...


『俺も好きだよ、おっぱい。』


 ごめっ、はぐらかしちった☆



「そう言えば、ナルソシ・アスナイの事ちゃんと言った?」


 その時、アリシア(大)が俺の首に腕を回し、そのツヤツヤとした金髪を頬に押し当てながらそう言った。

 おや?股間の方から何やら性欲に震えるナニが...


「あぁ、言ったよ。無視されたけども。」

「私も馬鹿な事するねぇ。もっと真摯に向き合っていればあんな事にはならなかったのに。」


 『あんな事』とはどんな事だろうか。

 それについての妄想を今夜のオカズに決めた。

 

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