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便所から始まる性剣の伝説  作者: てるる
序章、下水管篇
15/75

15話 無限の触手(イロジナスゾーン・ショック)② !?

 少女は手にした───無から有は生まれぬと言うが、少女は作りだした。洗練された圧倒的なる性的興奮を。

 少女は手にした───最強にして究極の奥義を。

 

 少女は挑む───一度敗れた試練に。そして、その先に待つ深淵に。



◇ 〜無限の触手〜 ◇



「ッ!その姿は!」


 神々しさすら放つ私の姿を前に奴は動揺をあらわにした。

 やはり感じるのだろう。

 私から放たれるどこか形容し難い凄みを。


『おら、やってしまえ!あのクソアマに引導を渡してやるんだ!』


 私は”それ”の言葉を胸に、大理石の如く身を固くした”それ”に手を当て───取り外した。

 

「フハハハ!ならばやってみるが良い!何度やっても同じだ!貴様には分からせてやろう。絶対に勝てない相手がいる事を!


 奴はそう言うと、事もあろうか昨日と同じく自ら私の攻撃を受けるかの様な体制をとった。

 その行動の滑稽さに私は我が目を疑わざるを得なかった。想像を絶する愚かさだ。

 秘奥義を習得した私を前にこの愚行。おめでたいとはこいつの為の言葉であろう。

 貴様の敗因は最後まで私は脆弱ぜいじゃくにして惰弱だじゃくと侮った事だ。

 良かろう。ならば分からせてくれる。私が最強だとな。

 やる事は昨日と何も変わらない。私の妄想をこの性剣で再現する事だけだ。

 変更点もまたただ一つ、貴様が○くか○かないか、それだけだ。


 今の私には...もはや貴様の姿も見えない。

 目の前に居るのは、私の海馬が蘇らせた優しい笑みと純真なる愛と溢れんばかりの性欲だけを向けた、全裸のいつしか出会ったであろう名も知らぬ美女。

 私はそんな彼女の望みに、愛を持ってして官能的に応えるのみ。 

 なればこそ、我が心において”殺意”や”憎悪”は邪念となる。


 私は奴の顔へ真っ直ぐと微笑みかけた。

 そこに相手を見下した様な、そんな不純な感情は一切無い。

 そう、もはや私の相手は敵ですらないのだ。

 私は彼女に、まるで花束を渡す感覚で性剣を優しく突き出した。


「...秘技、」


 深く浅く、悠久なる海に生きる神秘の触手。


 見える、見えるぞ!お前の...性感帯がッ!

 これこそが私の最強にして究極の奥義。


 ───さぁ湧き上がれよ。白き生命の光よ。

 二つの故郷たまを離れ、剣先を震わせ、全生命体に課せられた使命スクルドをここに果たさん。

 

 その生殖本能は愛する者を愛による破壊的な快楽へ堕とし入れ、その光の粒子は人類の総人口にも匹敵する。


 血肉をあまねく縦横無尽じゅうおうむじん。性的合意の上で望むままに蹂躙じゅうりんを。

 あらゆる”ナカ”を巡り、むしばみ、五感は背反を起こす。おのが限界点にて滅びの呪文さけびかなで


 その身を過剰な愛と快楽にて崩壊へいざなえ───永遠とわに。


「『イソギンチャク』───ッッッ!!!」


 瞬間、イソギンチャクの如く幾本にも分裂した性剣が、奴の胸、股間、耳裏、あらゆる性感帯を襲った。

 分裂した一本一本が我○汁に塗られ、それはより一層触手を思わせる。

 そして、奴の身体を挿し貫いた触手は一斉に溜め込んだ猥褻な光を放出した。

 ───”射光”。


「イ゛ヤァッ♡、イヤはァァアーーーー♡...ンアァァァ!!!」


 私の放った触手は、その全てが完璧に奴の身体に食い込み、当然の事として奴はそれは凄絶に喘いだ。

 

(決まった!この技をまともに喰らって生きていた者は未だかつて誰もいない!)

『そりゃ今回が初めてだからな。』


「あっ...♡ふ、ふっ...ふは、フフ...フハハハハハハ!掛かったな!.....あっ♡」


(『なに!?』)


 『かかった』...だと?

 まさか、またしても私の攻撃は効かなかったと言うのか!?

 その時、私の脳裏に最悪のシナリオが浮かび上がった。

 不味い昼食、夕暮れに至るまでの逡巡の数々、ジュリエルへの土下座、三回のトイレ...その全てが奴の手のひらの上で踊っていただけだとしたら...


『落ち着けアリシア!今確かに聞いただろ、奴の悶え苦しむ性的な絶叫を!』


「そうか、やはり...んあっ♡この一日の間に...何と強力に成長した事か。負けだわ。えぇこんな奥義を食らってしまえば一切の疑う余地無く私の負けよ。そう、私はさっき貴様の顔付きを見た瞬間から敗北を悟った。だからこそ、貴様の攻撃を自ら受けたのよ。四天王としての誇りと、魔王軍の命運を賭け、貴様に一矢報いる為にな!...んっ♡」


 私はパニックに陥った。こんなに絶望の見え隠れする勝利があるだろうか。

 私の脳内は瞬時に不穏な空想に支配された。 

 奴は今、確かに『私の負け』と言った。だが、同時に『貴様に一矢報いる』とも言った。

 これは、一体...


 次の瞬間、そう言った奴は自らの尻を何故なにゆえかこちらへ向けた。


 何だろう...何だろう、この感じ。

 奴の姿勢から伝わる、これから起こる”報い”が、大変みっともない”報い”である事がおぼろげに分かるこの感じ。


「知らないと思うけれど、実は私、先天的に肛門が緩いの。昔は一年中大便臭い子としてちょっとした有名人だったのよ。そのせいで、昔から硬い大便をしたことがないわ。まぁ、さすがにこの歳になれば我慢できるようにはなったけれど...でも、今の貴方の奥義のお陰で、私にはもう肛門を閉じ続ける力は残っていない!」


 こ、こいつまさか...そんなまさか。

 そんなまさかは無いだろうが...嘘だよな?私の妄想だよな?


「フハハハ!今、閉ざされていた私の深淵しんえんから災厄さいやくが解き放たれる!これが私の最強にして究極の奥義───、」


 もし私の想像通りのものが放たれるのであればまずい、私は凄まじく巨大な地雷を踏み抜いたことになる。

 まずい、何がまずいってすんごくまずい!


「『下痢バズーカ(カオス・インフェルノ)』───ッッッ!!!」


 早く、早く逃げなければ!この場から一刻も早く!私の第六感が『逃げなければ魂ごと消滅する』と奴の喘ぎ声もかくやと言う大音響で言っている。



 ”ズババババ バキュゥゥゥゥーーーーーム”!!!



 私は必死に部屋の外への脱出を試みたが...抵抗むなしく、部屋はそんな轟音ごうおんと共に放たれた想像を絶する量の”大便”によって一瞬にして茶色に染め上げられ、私もそれの下敷きとなりその一生を終えた。.......終えたかった。でも、終わらなかった...


「ギヤ゛ァーーーーァァァ!!!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァーーーー!!!」



◇◇◇



「はて、絶景かな───。」


 全てが終わって終わって終わり尽くした世界で、私はポツリとそう漏らした。


 なんてことだ、どうしてこんな事に。

 奴の奥義は私の想像を遥かに邪悪に超えていたと言わざるを得ない。

 強さとは、『自分の弱さを克服する』事と言われることがあるが、それをここまで体現している奴は他にいないだろう。

 肛門が緩いという弱さを強みに変換させた下痢バズーカ(カオス・インフェルノ)...なんと圧倒的な奥義か...

 それに比べ私の奥義はなんてみみっちいんだ。イソギンチャクって何だよバカバカしい。

 さっきまで奥義を披露したくて悶々としていた私は手の施しようがないバカだったと今気がついた。


 後ろを見てみると、全てに絶望しきった顔で固まっているジュリエルと、『この世界にもう未練は無い』という顔で失神している王女が、私と同じく大便の下敷きとなっている。

 私だってこんな世界に未練は無い。あってたまるか。


 そして、奴もまた床に倒れ伏し気絶している。

 しかしその顔は、この世の全ての幸福を手に入れた様な、そんな顔だった。

 なんで気絶してるんだよ、早く私にとどめを刺してくれ......。

 もういいよ、私の完全敗北でお前の完全勝利だよ。

 天国では王座を奪ったりしないで静かに暮すから、頼みますから私を殺してください......。


『臭い...臭いよぉ。もう千切れて飛んでいきたい。そして自由な世界を見てみたいよぉ。』

(残念ながら君は私と運命共同体なのだよ。)


 もう何も見たくない、感じたくない...もう何も知らない。

 辺りは既に夜のとばりが下りていた。

 今日も今日とて、こうして一日が終わって行く。今日が過ぎれば明日が来る。

 私はこれが夢オチであることを願って、そっと目を閉じた。

 もし夢じゃなかったら、その時は...そうだ悟りを開こう───。


 こうして、恐喝姉さんから続く魔王軍四天王シルベリア様を巡る、汚い汁を汚い汁で洗う様な一連の闘争は考えつく限り......いや、人類の思考を超越した、およそ最低の結末を迎えその幕を永久に下ろした。


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