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便所から始まる性剣の伝説  作者: てるる
序章、下水管篇
13/75

13話 最強にして究極の奥義!?

 ───覚醒と夢幻の狭間。私はそこで、神と邂逅かいこうした。



『......を救うのだ...。』


『...から...呪......救うのだ...。』


 またしても『阿呆あほうの戯言だろう』と思ったでだろう?

 しかし、何と言っているかは定かで無いが、その神々しい声色は確かに神であった。

 そして、その仮に神とした人物は、疲労を蓄積した私の脳内に断りも無く土足で踏み入り、不相応にもこの私に傲岸ごうがんと指図をしようと言うのだ。

 まぁ、せっかくの天啓も『〇〇を救え』の肝心な『〇〇』の部分が判然としない為、よしんば私が聖人であっても意味が無いのだが。


(話にならないな。聞かなかった事にしてやるから帰りな。)


 そもそも既に夢の中なのかも知れないが、私は神にそう言った。

 私は(若干16の平民育ちの分際で不相応にも)神を脳内から締め出したのだった。



...。



...。



...。




「魔王様...魔王様ぁ!」

「はっ!」


 私は王室の中心で、まるで死にかけの子犬の様に小さくうずくまっていた。

 そして、そこに『これから襲います』と言うように覆い被さり、私を呼ぶ王女。

 

 一晩が経ち、すっかり明かりの差した王室内、昨晩から変わらず打ち捨てられているトラップの大型兵器がその明かりを受け昨晩とは違ったおもむきを感じさせた。

 今が朝なのか昼なのか夜なのか...私には分かりかねるが。(夜な訳無いか)

 ん?...明かりが差して......?


「もぉ、魔王様はあちらの世界と交信できる唯一の存在なんですよ。お父様が言ってました、力を持つものはそれを行使する義務があるって...ちょっと魔王様!」

 

 その元王のお言葉に、みっともなくツッコミを入れるのも一興だが...

 私はふと光芒こうぼうの差し込む先のバルコニーの方を見やった。

 気のせいか、外の風景に違和感...

 私は勢いよく立ち上がると、バルコニーに向かって駆け出した。

 

 

「なに...これ。」 


 私が唖然と、そう漏らしたのも無理からぬ話であろう。

 そこには、バルコニーの欄干から見渡す限りの、”未知なる世界”が広がっていた───。 

 その異様なる光景をこの世界の住人である私が説明するのは非常に困難が難しい。

 それをあえて私個人の常識に当てはめて言うのであれば、一面に高低差は様々だが色とりどりの看板をまとった銀色の摩天楼まてんろうの広がる知らない世界。

 そして、知らない文字...

 

『シブヤエキ』と書いてあるのか...?


 ん、私...今なんで読めたんだ?いや、ただの気のせいか?

 きっと気のせいであろう。だいたい『シブヤエキ』とは何であるか?全く聞き覚えの無い新語ではないか。

 未知なる世界ならば未知なる言葉もあるだろうが、それを私が読める道理など無い。

 しかし何故ゆえ、いつから世界はこんなになってしまったのだろうか?


『どした?』


 ”それ”が阿呆らしく私に聞いた。

 どうやら”それ”はこの事態に気づいていないようだ。

 ”それ”とは全ての感覚を共有してる筈なのに何故私だけが...それに私に奇異きいの目を向けている王女からも、これに気づいている感じはしない。


 これは...そうか、分かったぞ!私には本当にあちらの世界と交信する力が...


「うっ!」


 その時、突如私を強烈な頭痛が襲った───。



 外にはなんてこと無い、いつもの街並みが広がっている。

 しかし、これではどうやら私の幻覚だと言わざるを得ないらしい。

 幻覚だと切り捨てるには少々完成度が高すぎた気もするが...

 昨晩の神は愚か、新たな世界に新たな言語までをも作り出した私の頭には是非とも「おめでたい」と言う言葉を送って差し上げたい。それにしても頭痛が痛い。


(本当に見なかった?さっきの光景。)

『なんのこっちゃ。』


 これだから右曲がりは...


「さぁ、早くご飯食べてください。夜にはあいつがまた来るかもしれないんですから。」


 そういえば昨日、本物の恐喝姉さんが襲って来たんだったけか。

 まったく迷惑なこって。奴め、私に醜態を晒させた挙げ句、玉座まで...

 昨日は練りに練った卑劣な策でどうこうと考えを巡らせていたが、私のおめでたい頭にそんな七面倒臭い事出来るかっ。


 私はふと昨日まで玉座のあった場所に目をやる。

 するとそこには、玉座だった何かは片付けられ、ボロい木製の椅子が仮置きされていた。

 どうもここに居る連中は魔王に対する扱いが少々目に余る気がするのだが...

 しかし、腰掛けてみればそんな貧乏臭い感じがしっくり来てしまう自分がいる。

 このコンビニエントな感じがヒットの要因だろう。

 そして、目線を下に落としてみると、そこには朝食と昼食らしき物が。


「おぉ、やはり今は昼であったか!」

「ほら早くっ!」

「ふごっ!?」 


 そう言うと、王女は私の口に無理やり食事をねじ込んで来た。



◇◇◇



 ───ここで一つ、この国の王女について深堀りして行こう。

 本名はアリス・カーニヴァル。

 『アリス』と『アイリス』ほどなろう系において面白みの無い名前もないので、私は王女と呼んでいる。

 王女とあれば、誕生以来平穏で恵まれた生活をして来たと考えられがちであり、実際そうでなくてはならないし、彼女自身も多分に漏れずそうであった。

 しかし、そんな彼女にも一つ、ジュリエルの祖母”マジョーレ・クリメニア”と同様に奇妙な体験をしていたのだった...。


 王女、当時8歳。時は夕刻。

 王女は自室で魔法に関する勉学に励んでおり、その結果試行錯誤のどん詰りへと行き当たっていた。

 そんな時だった。自室の窓が”カチャリ”と音を立て、カーテンが外気を受けなびいたのだ。

 そして、同時にローブのフードで顔を隠し、金髪を靡かせた何処かミステリアスなニュアンスを醸し出す何者かが部屋へ侵入した。


「おや、奇遇だなぁ。」


 部屋の持ち主がそこに居るのは当然の事なのだが、さも酒場に入ったらたまたまと言う感じに、その酒瓶を片手にした何者かは言った。王女は困惑した。今までの人生に類を見ない事例だった。

 今までの平穏で色々なぬくもりに包まれた生活から一気に現実を見た気がした。

 王女は理解した。これがただならぬ事態である事を。 


「あ、あなたは誰ですか!?何しに来たんですか!?」

「そう構えるな。怪しい者かと聞かれれば本人であっても『Yes』と答える他ないが、私は危険な人じゃない。」

「な、なら...!?」

「王族がそんなテンプレートな台詞を言うでない。まぁ少し邪魔させて貰うよ。」


 王女は逃げ出した。8歳のそれも国の未来を担う王族ならば真っ当な判断だ。 

 しかし、その女は逃げ出す王女の腕を紳士的に掴むと... 


「まぁまぁ、待ちたまえよ。何か悩みでもあるんじゃないか?私で良かったら相談に乗って上げるよ。」


 王女はその言葉に何故だか妙な説得力を感じ、逃げる足を止めた。


「悩み...ですか?そうですね...」

「あーいや、言わなくて良い。そうさなぁ...『王族特有の高等教育で魔法を習ったが、せいぜい水を球体にしてバケツから持ち上げる事しか出来ず、どんなに試行錯誤してもそれ以上の事が出来ないで困っている』とかそんな所だろ?」

「何故それを!?」 

「なーに、年の功さ。」


 こうして、王女の日頃の刺激の無い箱庭生活も手伝い、その女は王女の心に入り込んだのだった。

 見れば最初こそミステリアスさを感じたが、背丈は自分とそこまで変わらず風体からは幼さすら感じられ親近感が湧く。


「ところで一杯どうだい?今日は私がこの時空に舞い降りて丁度3年になるんだ。」


 女は王女の悩みを言い当てて置きながら、それに何をアドバイスするでも無く唐突にそんな訳も分からない事を言い出した。


「お、お酒ですか?すみません私未成年なので。と言うかあなたも未成年なんじゃ...」

「低身長いじりにも最近は慣れて来たよ。だが、外見も中身も大人とは言い難けど、事実としてこれでも私は君より10歳以上年上だ。えーと、あれから3年になるから...そう、私は今年で19だ。...あ!」

「やっぱ未成年じゃないですか。」

「せやな!」


 そう言うと女は片手にした酒瓶を床に置いた。

 王女はどんどんミステリアスなメッキが剥がれて行くのを感じた。

 

 それからしばらくし、その女の話は徐々に猥褻わいせつな方向へと流れて行き、箱入り娘な王女は顔を赤らめながらも喜々としてそれに耳を傾けるのであった。

 恐らくそこからなのだろう、王族たる彼女がクズへの道を歩み始めたのは。


「君と話していると在りし日の友を思い出すよ。」

「在りし日?もう会えないんですか?」


 この時、王女が平静でいたのは、困惑を通り越した一つの境地であった。


「いや、そういうわけでは無い。焦らずとも来たる天国の時にて必ず再会出来る。まぁ実際、君の事なんだけど。」

「それって...つまりどう言う事ですか?」

「うむ、そう深く考えなくて良いさ。妄言虚言の類と思って切り捨ててくれても良い。」

「そうですか...」

「そうそう、これを君に渡しておくんだった。」


 そう言ってその女が王女に手渡したのはポケットに入るような大きさの小さな筒の様な物だった。


「これは?」

「これから始まるのは、君の人生で最も輝かしく、最も過酷な1年間だ。......いや、後7年くらい後か。とにかく始まるんだよ、そう言う運命が。その中で自分の、あるいは大切な仲間の危険が危なくなった時、それを開けると良い。」

「な、なるほど!分かりました!」

「今は想像がつかないだろうけど。じゃ、私はそろそろ...」


 最後にそう言い残すと、その女は静かにすっかり明かりの消えた夜闇に姿を消して行ったと言う。


 私はてっきり何処かの頭のおかしな人が部屋に忍び込んで来たと言うだけの話だと思っていたが、王女が言うには、最後までフードで顔は見えなかったが、その女と私が似ているのだそうだ。

 私は、その女は私なんじゃないかと思っている。

 するとどうだろう、これはとっても奇妙な話なのである。



◇◇◇



「...不味い。」


 私は口に突っ込まれた”何か”を噛みしめ、それから出てきた如何いかにもヤバそげな汁をすすりながらそう言った。


『あのメイドに料理の役押し付けたのお前だろ。』

(だって料理はメイドの仕事でしょ。それにしても、イソギンチャクの塩焼きは無いでしょ。)


 私の口から触手がはみ出している。

 こんな物に食欲が湧くわけ無いだろうが。おまけに薄味だ。

 て言うかどうやって仕入れて来るわけ?こう言うの。


 いやまてよ......触手?


 その時、私の脳内で何かがかすった。

 そして、昨日の敗因は何だっただろうか...と、考えた。

 そう、私は女だがチ○コが生えている為、いうなれば童貞だ。

 女とは基本的にヤレばヤル程感じ易くなる言われている。奴がその常識に当てはまるかは定かで無いが。

 この変態と言いせしめられて来た私が、ヤ*マン一人満足に感じさせられなかったのだ。

 燃えるではないか。燃える展開じゃないか。

 これは私が世界を手に入れる為の最初の試練だ。

 試練は強大である程良い。強大である程、乗り越えた時に大きなものとなるのだ。

 そして、それを乗り越える為に努力し考える。これこそ燃えると言うものだ。


 私は先程脳内を掠ったものが何であるかを猥褻非猥褻の隔てなく考えた。

 いや違う。猥褻に特化して頭を働かせた。私はそっちの路線で戦うと決めたのだ。

 触手。そう、触手。そうだ、触手だ!

 思えば何てエロエロなんだ!そもそも触手と言うジャンルがあるではないか!

 私としたことが...何故ぱっと思いつかなかったのだろう。


 イソギンチャクのような触手が奴を襲ったらどうなるだろうか。

 それも一本一本が性剣と同等の力を持った触手が...


 これは───もしや私でも勝てるのでは!

 それはもはや、私の中で確信へと変わっていた───。

ジョ○ョの奇妙な○険(異世界ver.)


独特な世界観、セリフ回しに革新的な設定から異世界暦1972年に人間界で爆発的な人気を博し今なお一定の支持層を持つ異世界の小説。

2000年現在、第7部までが完結しており第8部も物語佳境に差し掛かっている。

果たして第9部はあるのだろうか。宇宙のハテを知らねーようにそんなこと知らないが、アリシア達はそれを切に願っているだろう。


実に奇妙なのだが、異世界におけるジョ○ョと現実世界におけるジ○ジョにはとても偶然と言い難い程に類似点が多く見られる。

舞台や聖なる遺体の正体など地球にしか存在しない概念には物語を進める上で差し支えのない変更点があるが、1~8部までの基本的な物語、キャラ、世界観、強引な展開はほぼ一致しており、「メメタァ」に代表される意味不明な擬音も「パパウパウパウ フヒィーン」から「タコス」に至るまで完全一致である。

しかし、とは言ってもそこに見えない因果ヤツがあるなんて事はなく、これらは全て完全な偶然が生み出したものである。

なお、アリシアが一番好きなのは8部だそう。

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