番外編◇制裁はこっそりと~律希side~
『よう久々利』
俺が話かけたのは
同じ大学で同じ学部の久々利夏妃。
俺の大事なカナに怪我を負わせた張本人。
女じゃなかったら気が済むまで
ぶん殴っていただろうなぁ(ニヤリ)
「き、来島君、おはよう」
こいつが俺のことを好きなのは
気付いていたが大事な嫁がいるから
誰にも靡かない。
『ちょっといいか?』
図書室に連れていき
カナの写真を見せると
明らかな反応が返ってきた。
“目は口ほどに物を言う”
とはよく言ったものだ。
『その反応だと見覚えがあるんだよな?』
この場にカナがいたら吃驚するような
“怒”の色が出ているんだろうな。
そうだな、きっとカナでも
わからない色を発しているだろう。
『カナは[たまたま]ぶつかれたと
思って気にしてなかったし
今回は骨折程度ですんだから
よかったものの
下手したら死んでたかも知れないんだぞ』
久々利の顔色が青ざめていく。
俺はカナみたいな能力はないから
こいつが今、どんな色を発して
どのくらい反省してるかなんてわからないが
少なくとも“死”と言う言葉には
罪悪感を感じていることはわかった。
「ごめんなさい!!
彼と来島君が一緒にいる所を
何度か見かけたことがあって
学校では見せないような表情を
していたから嫉妬からあんなことを……」
わかっていたが本人の口から聞けたな。
ぶん殴りはしなかったが
スマホをポケットにしまってから
胸ぐらを掴んでいつもより
低い声で耳元で囁いた。
『次はないからな』
俺は久々利を離して図書室を出た。
これでこの先、
何かすることはないだろう。
誰がやったかなんてカナな知らなくていい。
カナは俺が守る。




