いなくなった
短いです。
「パイセンやばいっす!召喚オーブが反応しないっす!意識してもゴ右衛門が戻ってこないんです!ゴ右衛門の身に何かあったんでしょうか?」
ゴ右衛門が行方不明なことに気付いた和久津はひどく取り乱していた。ギャラリーにゴ右衛門について聞いても、誰もが夏目に夢中で気にも留めていなかったらしい。
「召喚オーブを見せてみろ」
俺は和久津の手から召喚オーブをとり、光にかざすようにして観察する。ふむ。異常はない。
「和久津。残念だったな。ゴ右衛門のことは諦めろ」
「えっ」
目に見えて和久津が狼狽える。
「飼い慣らされたペットが野生に戻って命を落とすのはよくある話だ。召喚オーブがこの状態になったということは、、」
「そんな馬鹿な!ちょっと探してきます!」
「落ち着け和久津!」
駆け出していきそうになった和久津を制止する。
「ここはダンジョンだ!お前は煙を探すのか?」
「……」
「たかがゴブリンじゃないか。お前も何百体と倒しているだろ」
「でもゴ右衛門は!自分はゴ右衛門のことを、、」
「なんだ。まさかゴ右衛門はゴブリンじゃないというのか?和久津。勘違いするなよ。ゴ右衛門はゴブリンだ。召喚ゴブリンとはいえ、ゴブリンには違いない。これまで散々ゴブリンの命を奪ってきたお前が、一ゴブリンの命に固執するのか?」
「……」
ふふふ。ちょろい。
「散らかったフリップを片付けたら、今日はもう家に帰って夏目と遊んでろ」
「ニャオ」
夏目が前足を和久津の頭にのせて催促する。
「了解っす、、」
夏目に頭ポフポフされながら和久津はフリップを集め、ダンジョンの入り口へと向かっていった。その背中はまさに落武者だ。
俺はゴ右衛門の召喚オーブを手に第1階層を歩き始めた。
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