名前はまだ無い
ちょっと飲み過ぎました。
「さて、本日は前回召喚したモンスター、猫又に名前をつけたいと思います!」
和久津の声に合わせて周囲から拍手が起こった。
カメラの前には和久津とその肩に乗った猫又。周囲は毎度の如くギャラリーに囲まれている。前回程ではないが中々の人混みだ。今回はTwittorで特に宣伝はしなかったのだが、落武者の恰好をした和久津が歩いているだけでギャラリーがついてくるので仕方がない。
「それでは皆さんに考えてもらった名前を見ていこうと思います!ゴ右衛門、フリップ持ってきて!」
ゴ右衛門がフレームの外から何枚ものフリップを持って小走りでやってきた。
「前回の動画では伝えられなかったんですけど、この猫又、付いていないのでたぶんメスです!それを意識して候補を選んできました!ただし、決めるのは猫又自身です!」
猫又は興味無さげに前足で和久津の髪を弄っている。普段なら烈火の如く怒りだす筈の和久津だが、猫又には甘いらしい。
「では1つ目はこちら!」
和久津の声に合わせてゴ右衛門がフリップを出した。
「テト!なるほど、これはバステト神からとったんですね。どう?テトは?」
和久津が猫又に視線を向けるも、反応はない。
「うーん、いまいちのようです。では次に行ってみましょう!2つ目はこちら!」
ゴ右衛門が2枚目のフリップを出した。
「たねこま!ねこまたのアナグラムかぁー。どう?たねこまは?」
またもや猫又に反応はない。
「よーし、サクサクいきましょう!3つ目はこちら!」
ゴ右衛門が3枚目のフリップを出した。
「リリー!魔女宅かな?谷崎かな?リリーはどうかなー」
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「これが最後です!これで決まらなければ名前決定は次回に持ち越しです!20個目はこちら!」
ゴ右衛門が最後のフリップを出した。
「夏目!どう?夏目は気に入ったかな?」
「ニャオ」
「えっ、いいの?夏目でいいの?」
「ニャオ」
「夏目!」
「ニャオ!」
和久津の呼びかけに猫又が挙手で応えた。どうやら決まったらしい。
「名前も決まったところで夏目にはプレゼント!とあるルートから入手した魔道具の首輪です!この首輪には【回復】スキルが込められています!これで何かあっても安心!ほら、夏目」
俺が準備した首輪を和久津が夏目につけた。夏目は満更でもない様子だ。
「では、今回の動画はこの辺で終わりにしたいと思います!次回は猫又・夏目の能力に迫っていきたいと思います!この動画を気に入った方は高評価、チャンネル登録お願いします!」
ゴ右衛門がいなくなっていることに和久津が気が付いたのは、カメラを止めたずっと後だった。
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