その召喚オーブ
ねむねむす
「どーもー、こんにちは!落武者ワクツです!」
「オーノー、コンギニワ!ゴーウェイモンテス!」
「さっ、今日はちょっと見て下さい!このギャラリーの数を!新宿ダンジョン埋め尽くす勢いです!」
和久津の言葉は別に大袈裟ではない。カメラをグルリ回すと、人、人、人。Twittorでの事前告知が効き過ぎた。
「さて!なんでこんなに人が集まっているかと言えば!じゃん!」
カメラを和久津に寄せる。
「新しい召喚オーブをゲットしましたー!」
「ウタシイ、ショウマンオブヲ、ゲトシマシー!」
ギャラリーからも拍手が飛んだ。
「ゴ右衛門!召喚オーブって何かわかる?」
「ウー、ワナナイ」
「そうかー、分からないか。ゴ右衛門もいつも召喚オーブの中から呼ばれてるんだよ?」
「ショウマンオブ、ノワカカラ、ホモバレテンダヨ?」
「そう。これがいつもゴ右衛門を呼んでいる召喚オーブ。で、これが新しい召喚オーブ!」
「ウタシイ、ショウマンオブ!」
「ゴ右衛門の召喚オーブはちょっと緑に濁っていて小さいけど、新しいのを見て!ゴ右衛門のより大きくてツヤツヤで真っ白なんだ!」
「ヤツヤツデー、マツシマナンド!」
「召喚オーブの形状は呼び出せるモンスターによって異なるって説があるんだ。まぁ、とはいえ召喚オーブが出回ってないから確かめようがないんだけどね」
「ショウマンオブ、ノリケジョハ、ゴミダセルモンスターペアレント、ニナルッテセツナインダケド、マア、トナイデ、ショウマンオブ、ガッデムナイト、ケラ、タチヨミヨクナイケドネ」
ゴ右衛門の日本語の成長は止まったな。ガッデム。タチヨミヨクナイ。
「さあ!いよいよ召喚オーブからモンスターを呼び出してみたいと思います!皆さん、覚悟はいいですか?」
おおおおー!!!
ギャラリーから大きなレスポンスがあり、流石に盛り上がっている。
「いきます!」
「3!」
「2!」
「1!」
「しょうかああああん!!」
和久津から力を吸い、召喚オーブから強い光が放たれる。拡散していた光が徐々に集まり、モンスターのかたちを取り始めた。そして。
「ニャァーン」
そこに現れたのは二足歩行で尻尾が2つに分かれた真っ白い猫。いや、猫又だ。
「うわぁ!かわいい!かわいい!かわいいいい!!!」
猫好きの和久津がカメラを忘れて取り乱す。ギャラリーからも悲鳴のような声が上がる。
「ちょっと見て下さい!尻尾が分かれてる!猫又ですよ!」
カメラの存在を思い出した和久津が猫又を抱き上げて特徴的な尻尾を紹介した。
「いやー!本当にびっくりしました!そもそも猫又なんてモンスターがいるんですね!これ、協会のサイトにも載ってないのでは?」
親切なギャラリーが和久津に答える。
「ですよねー!載ってないですよね!これ新種ですよ!凄い!本当に今日は凄い日です!今回の動画はここまでにしたいと思います!コメント欄で猫又の名前を募集しますんで、皆さん宜しくお願いします!」
まだまだ興奮冷めやらぬ和久津の後ろ。ゴ右衛門の瞳に暗い光が灯ったのをカメラは見逃さなかった。
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