第四話 九鬼 恭也(上)
「スキル!急速力!」
フィーネは爆発した現場に高速で向かった。
ピーターはフィーネの後を追う形だ。
フィーネが近距離戦に対して、ピーターは遠距離戦を得意としているため、スキルの獲得内容も変わってくる。
フィーネは4秒もしないで現場にやって来た。
「爆発させたのは貴様かっ!?」
辺りは燃え続きている中、一人楽しそうに踊っている者がいる。
フィーネが呼んだためか、男と思われる者は、口の端をクイッと釣り上げて、ニヒッヒッヒッヒと笑みを浮かべている。
(何とも不気味な笑顔だわ)
男の特徴は笑い方だけではない。
目の端が斜めに上がっているのだ。
(....こいつは吸血鬼だな)
フィーネは戦闘となると、目がギリッと鋭くなる。
「貴様、名をなんと言う」
吸血鬼にも柱みたいのは存在する。
恐らくこの吸血鬼は、名を与えられている吸血鬼だとフィーネは思った。
「クックックック。私は物欲の吸血鬼だよ」
刹那
「想像武装!」
フィーネはスキルを使用した。
フィーネの前が歪み、歪んだ先からカタナが出てきた。
これが魔力の力なのだ。
フィーネはカタナの先を物欲の吸血鬼に向けて、
「骨まで焼き尽くしてあげるわ。火炎連刀!」
フィーネが持っっている刀が勢いよく燃え上がり、
「高速飛行」
ボーッッ!
物欲の吸血鬼に一気に近づいた。
そして、カタナを物欲の吸血鬼に突き刺す。
(......ん?)
フィーネは刺した感覚がないのだ。
確かに目の前にいたはずだったが......。
「フィーネ!後ろ!」
ピーターの声だった。
だが、遅かった。
「グフッ....!」
フィーネの背中が吸血鬼の爪で切り刻まれたのだった。
血が辺りに飛び散る。
この恐ろしい強さが吸血鬼だと、フィーネは改めて実感した。
フィーネは意識が朦朧してバタッと倒れた。
***
「フィーネ!」
ピーターがたどり着いていた頃には、決着はついていた。
「おい!そこの吸血鬼!僕と相手をしろ!」
ピーターは涙を堪えながらもそう言い放った。
「クックックック。次は君かね?」
相変わらずの不気味な笑顔だった。
(ごめんフィーネ。君を助けられないかもしれない......」
「僕から行くぞッ!想像武装!」
フィーネの時と同様にピーターの目の前が歪み始めて、そこから金色に光っている弓を取り出した。
「電磁波道」
ピーターの周りに電気が回った。
それを弓に注ぎ込んだ。
「消えろッッ!!」
バッシュー!
凄まじい速さだった。
人間の目で追うのは不可能だろう。
煙が消え始めて、段々と視界が広がっていた。
そして気づく、奴は傷一つなく立っていた......。
(こんなの勝てるわけない......ッ!)
だが、ピーターは諦めなかった。
建物を上を全力で駆け巡り時間稼ぎをしているのだ。
当然物欲の吸血鬼は追ってくる。
「狙撃ッッ!」
弓矢を生成して空きあらば攻撃をする。
その繰り返しだった。
「クックックック。そろそろ仕上げに入るとしましょうか」
そう言って、物欲の吸血鬼は指をパッチンと鳴らし、
「転移」
ピーターはフィーネの元へと戻ってきたのだ。
「吸血鬼狩りは我々にとって厄介な存在なので、ここで死んでもらいます」
吸血鬼の詠唱をし始めた。
「原初の血と雫、その理を打ち砕くとき。吸血鬼術天童・快」
物欲の吸血鬼の指先に魂の根源が集まり、発射すると同時に一気に膨れ上がる。
フィーネとピーターはそれを見ていることしかできない。
ドーーンッッッ!
凄まじい威力だった。
「クックックック。切りが良いのでここで引き返しますか」
そう言って、物欲の吸血鬼は踵を返そうとしたが、何かを感じて黒煙が消えるのを待った。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
息を荒げながらもそこに立っていたのは、キョウヤだった。
「間にやったぜッ」
「ッッッ!?」
物欲の吸血鬼は声にもならないほど驚いた。
当然、フィーネとピーターも驚いている。
「俺は相手の攻撃を無効化できるんだ」