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ウーベル食べるよん!  作者: 破魔矢タカヒロ
3/7

第3話:国家非常事態即応隊

2020年9月7日。


陸上自衛隊 市谷駐屯地の某所。




 市谷駐屯地の敷地の地下には内閣総理大臣と内閣官房長官そして自衛隊の一部の幹部しか知らない秘密部隊の作戦室がある。




 その秘密部隊の名称は「国家非常事態即応隊」という。




 本来ならば陸上自衛隊の幕僚長の指揮下に置かれるべきところだが、この秘密部隊は国家の有事に内閣官房長官の指揮下に置かれ、内閣官房長官から直接命令を受けて作戦行動に従事する。




 この部隊の司令官は陸将という普通の軍隊で言えば陸軍中将に相当する将官だ。




 隊員はその全員が最上級のエリート自衛官であり、3佐以上の将校しか隊員にはなれない。




 ちなみに、3佐は少佐に相当する。




 その地下にある作戦室には最先端のハイテクデバイスが所狭しと置かれている。




 それ故に300平米ほどの地下室なのにむしろ手狭に感じる。




 そこでは全員で50名ほどの幹部自衛官が任務に従事している。




 そのような作戦室なのだが、司令官と大佐に相当する1佐が何やらひそひそと言葉を交わしている。




 司令官すなわち即応隊の隊長が落ち着いた様子で言った。




「1佐、奴らは撤収しているようだな」




「ええ、昨日、YouTubeの乱数で撤収の命令が出ましたからね」




「つまり、作戦は終了したわけか。しかし、作戦の中身が今もって不明だな。なんとかならんのか?」




「奴らの乱数による暗号はごく一部しか解読されていませんからね。残念ながら、わかっているのは作戦が終了したことと奴らが撤収することだけです」




「やれやれ、難儀だな、あんなチャチな国の暗号の解読にこれほど手間取るとはね。我が隊はその程度なのかね?」




「申し訳ありません。確かにあの国は国力としてはチャチな国なのですが、その方面ではかなり進んでいるようで」




「そのようだな。そんな知恵があるのなら、自国民を飢えさせない方向に使えばいいものを。結局は愚かな連中だよ」




「はい、まったく同感です」




「それで、終了したという奴らの作戦だが、奴らは何をやらかしたのかな? 一大事と言えるような事変は何も起きていないようだがね」




「そうですね、思い当たることと言えば、多数の民間人の変死ですけどね」




「ああ、それか、200人くらいの民間人がそれぞれの自宅で変死したのだよな」




「ええ、全員が泡を吹き白目をむいて即死したと聞いています」




「うん、そうだな。遺体のPCR検査をしたら全員が陽性だったのだよね。けれども、コロナで即死なんかあり得ない」




「かと言って、遺体から毒物は検出されていません」




「たしか帝都医科歯科大学が調査に当たっているのだったね」




「はい。けれども、何もつかめていないようです」




「警察はどうしている?」




「毒物が検出されていないので事件性が見えないようですね。だから、帝都医科歯科大学の調査結果を待っているのでしょうね」




「つまり、警察は何もしていないわけか」




「そうなりますね」




「警察はYouTubeの乱数のことは知っているのかな?」




「知っているとしても、特に何も起きていないのだから動きようがないのでしょうね」




「なるほど、そういうことか。まあいいさ、我々の方で動くから警察は好きにするのだな。相手が奴らではどうせ対応しきれないだろうしな」




「そういうことですね」




 一方、




2020年9月7日。


上越新幹線の車中。




 300人ほどの民間人がそれぞれの自宅でファミレスなどの料理を食べた直後に泡を吹き白目をむいて死んだわけだが、300人の内の200人以上の変死が当局によって確認され、それがマスコミにより世間の知るところとなり、世の中が騒ぎ出した。




 もちろん、どのワイドショーもどの情報番組もそのミステリーを大々的に取り上げている。




 そんな中、東京の日本橋のホテルでYouTube動画からの乱数により作戦終了と撤収の命令を受けた例の男女は、今、上越新幹線の車中にいる。




 男が抑えた声で言った。




「警察は全く動いていないようだな」




 すると女が、




「今のところは事件性が見えないのでしょうね」




「毒物など検出されるわけがないし、PCR検査が陽性でもコロナで即死なんかあり得ないか、警察も大変だな、ふっふ」




「これなら問題なく撤収できそうですね」




「まあな、それでも気を抜くなよ」




「もちろんです」




「あと1時間ほどで新潟駅か、よし、弁当を食うとするか。着いたら海岸に直行だな。日本なんかに長居は無用だ」




「はい、そうですね」




「へえ、おかずの種類が多い弁当だな、これは旨そうだ!」




「綺麗ですね。この駅弁は『日本の味博覧会』というのか、日本のこういう部分は好きだったのですけどね」




「おいおい、祖国に帰ったら、そんなことを言うのじゃないぞ」




「もちろんですよ」




 このように、この怪しげな男女は、撤収も含めた作戦の全てが成功するものと思っているようだが、




 一方、この研究者たちは ・・・




2020年9月7日。

帝都医科歯科大学感染病研究室。




 研究室担当の教授はある決断をしたようで ・・・




「おい、毒殺ということにするぞ!」




「え? でも、教授、毒物なんかどこにもないでしょ」




「だから、消去法だよ。コロナで即死なんかあり得ない。それに、ウイルスが極端に強毒化して即死もあり得るとしても、人間が即死したのでは感染が拡大しない。しかし、現に200人もの市民が亡くなったわけだ」




「あの、話が見えませんが」




「だから、物証がないのなら状況証拠だよ。死因がコロナでなければ毒物しかないだろ」




「けど、毒物はまだ検出されていませんよ」




「未知の毒物かもしれないだろ。だったら、これから検出されることになるのかもしれない。とにかく、このまま調査をしていたのでは手遅れになる。既に200人も死んだのだぞ。これからだって罪のない善良な市民が死ぬことになるかもしれない。とにかく、毒殺が強く疑われると当局に報告するからな、いいな!」




「え、あ、ええまあ」




 教授は、当てずっぽうではあるが、どうやら正しい判断を下したようで ・・・




=続く=


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