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ウーベル食べるよん!  作者: 破魔矢タカヒロ
2/7

第2話:PCR検査は陽性なり

2020年9月3日。


横浜市港北区のとあるアパートの一室。




 泡を吹き白目をむいて死んでいるのは四人家族だ。




 30歳前後の妻と夫。




 幼稚園に通う年頃の姉と妹。




 もちろん、死んでいる夫婦は姉妹の両親だ。




 四人とも死んでしまったのだから一家全滅だ。




 四人の死に場所になってしまったアパートは築40年という古い木造モルタル建てだ。




 間取りは3DKだ。




 横浜市の港北区というところは、一戸建てが多くアパートは少ない。




 丘や小山だらけの坂が多いエリアだ。




 そのような地形なので広い敷地がなかなか確保できない。




 だから、マンションも少ない。




 そんな古いアパートに住む四人家族なのだが、




 夫婦は知的な顔をしており、特に夫は大企業に勤務していそうなスマートな顔立ちだ。




 アパートは古くても家具は安っぽくはない。




 夫婦の年齢を考えるとむしろ立派と言える家具が置かれている。




 テレビだって60インチの有機ELだし、オーディオセットも一式で50万はしそうな品物だ。




 つまり、それなりの収入があるということだ。




 たぶん、家賃の安いアパートに住んでマンションか一戸建てを購入する資金を貯めていたのだろう。




 30歳前後の夫婦なのだから、あと5年もすればマンションくらいは買えるのだろう。




 しかし、その一家四人の全員が死んでしまった。




 だから、もはや一戸建てもマンションも不要だ。




 しかし、どうして死んでしまったのか?




 異変は?




 夫と姉妹の三人はダイニングの床に倒れている。




 妻はテーブルにうっぷした姿勢で死んでいる。




 そのテーブルはと言えば、




 浦安の老夫婦のケースと同様にテーブルの上には料理が並んでいる。




 しかし、妻がテーブルにうっぷしてしまったので料理の一部が散らばってしまっている。




 そこで詳しく観察してみると、




 テーブルの上に並べられているのは、やはり、プラスチックの容器に入った料理だ。




 さて、そのメニューだが、




 チーズINハンバーグ人気盛り


 若鶏のグリル ガーリックソース


 甘酢香味だれの油淋鶏


 たっぷりマヨコーンピザ


 海老のトマトソーススパゲティ


 カリカリベーコンと海老の温玉シーザーサラダ


 ビーフカットステーキ




 ん?


 


 ガストか?




 四人家族なのによく食べるものだ。




 料理はかなり残ってはいるが既に食べられた部分も多いようだ。




 浦安の老夫婦は海老のチリソースを一口食べたところで死んだようだが、若い四人はガツガツと食べたようだ。




 若いのだからガツガツと食べるのがむしろ当然ではある。 




 とにかく、泡を吹き白目をむいて死んでいる点は老夫婦と同じだ。




 ガストの料理ではないとしても、プラスチックの容器に入っているのだから、ファミレスとかの料理を宅配してもらったかテークアウトしたかだろう。




 やはり四人ともにそれぞれの死体には酷く苦しんだ形跡がない。




 ただし、泡を吹き白目をむいて死んでいるのだから健やかな死に顔とは言えないが。




 浦安では老夫婦の二人が、そして横浜では一家四人が死んだわけだが、実のところ、この日には他にも多くの人々が死んでいた。




 みんな同じ死に方だった。




 さて、死んだ人々の全員に共通する点だが、




 それは、




 泡を吹き白目をむいて死んでいること、




 そして、




 食卓にファミレスなどの料理が並べられていることだ。




 しかし、たくさんの人々がそのように死んだというのに世間で騒ぎになるまでには三日ほどの時間を要した。




 その三日後のことだが、




2020年9月6日。


帝都医科歯科大学感染病研究室。




 研究室担当の教授とその部下の研究員が会話をしている。




「教授、死んだ全員のPCR検査が陽性ですってね」




「ああ、そうなのだよね。直接の死因は全員が呼吸不全による窒息死か。で、皆が即死か」




「即死なのですよね。でも、不思議ですね。COVIDで即死だなんて聞いたことがありませんよ」




「COVIDではないと判断するのが当然のケースなのだが、かと言って、体内から毒物が検出されたという報告もないしね」




「そうなのですよね。だったら病死ということになりますが、全員が即死だなんて考えられませんよ」




「ああ、有り得ないよね。けれども、それが現実なのだよな」




「ところで、かなり大きな突然変異が発見されたようですね?」




「大阪の浪花医大だろ、それなら聞いているよ。だからって即死するようなウイルスにはなっていないだろ」




「ですよね」




「ないない」




「ないですよね。それなのに、全員が料理を口にした直後に口から泡を吹き白目をむいて死に、全員のPCR検査が陽性ということなのですよね、なんとも不可解ですね」




「そうなのだよな」




「PCR検査が陽性という事実があって、他方では、体内からも料理からも毒物が検出されなかったということですね」




「うん、そういうことだな」




「つまり、毒殺ではないのだけど、かと言ってコロナで即死するなんて考えられない。ならば、原因が全く不明の変死ということなのですが、困りましたね」




「本当に困ったよな。その原因の解明が我々の仕事なのだから、やってられないよな」




 このように研究者たちは途方に暮れるわけだが、




 実のところ、そのような死者の数は、この時点で300人を上回っていた。




 しかし、確認された死者数はまだ100人程度にとどまっていた。




 一家の全員が死亡した場合には通報する人間が誰も残らないというわけだ。




 故に変死した全員の死が確認されるまでには更に時間が経過することになる。




 一方 ・・・




2020年9月6日。


東京都中央区日本橋のとあるホテルの一室。




 30代の男と20代の女がYouTubeの動画を見ている。




 いかにも切れ者といった雰囲気の男女だ。




 男がポツリと言った。




「あ、この乱数は」




 すると女が、




「作戦終了ですね。帰れますね」




「ああ、撤収だな。しかし、難しいのはむしろこれからなのだよな」




「ええ、気を引き締めます」




「そうだな」




 何気に怪しい風情の男女なのだが、




 どのような作戦だったのだろうか?




 そして、




 どこに帰るのだろうか?




=続く=



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