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エルディアス・ロード ~女神にもらった『絶対死なない』究極スキルで七つのダンジョンを攻略する~  作者: すみもりさい


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相譲らず


 左手の剣を振り下ろす。

 エルディアスは長槍を横にして受け止めた。


 激しい音が響く中、グラートが声を上げる。


「ヒュー、リオのやつ、マジでやるつもりだぜ」


 エルディアスは人ではない。魔物とも違うようだが感情があり、人の形をしているので躊躇いはあった。しかしリオは容赦なく剣を振るう。


 がら空きの胴へ、右手の剣――『風』の無銘を突き出した。

 しかし相手は予想していたのか、リオの動きに合わせて床を蹴り、大きく跳び退いた。


(これなら、どうだ!)


 右手の剣は風の魔剣の力を得ている。魔力を通し、風の刃が飛び出した。

 続けざま三つ。

 風刃は頭と胴、さらには片足を目がけてエルディアスを追いかける。同時に到達した風刃はしかし――。


「ッ!」


 エルディアスは長い槍を巧みに操りすべて叩き落した。

 やはりダンジョンボスを単身で打ち負かした実力は本物だ。

 けれど、


「ふっ!」

「ッ!?」


 三つでは足りないとわかっていた。

 だからリオは風刃を飛ばすと同時に回りこみ、側面から強襲する。


 どうやら裏をかけたらしい。

 エルディアスは槍を横に寝かせて受け止めようとするも、体勢は崩れていた。


 このまま押し切る。

 二つの剣を合わせるようにして、全体重を乗せて振り下ろした。


(えっ?)


 手ごたえが、思いのほか薄い。いや、ほとんどなかった。

 槍の柄がぽきんと二つに折れたように曲がり、剣は想定以上の勢いでエルディアスの肩を深々と切り裂いた、ものの。


 スパッ! 「か、は……」


 折れ曲がった槍の先端がリオの喉元を襲った。

 何かがおかしい。

 薄れる意識の最中、



 ――固有スキル【女神の懐抱】が発動しました。



 リオの傷は全快した。

 急速に取り戻した思考をフル回転させ、片足に力をこめて後方へ跳ぶ。


 視線をエルディアスに合わせた。状況を即座に理解する。


(剣を受けて折れたんじゃない。初めから折れ曲がるようになっていたんだ)


 双頭の長槍の一か所――片側の先からおよそ三分の一の部分が切り離され、金属製の短い紐でつながっていた。ふだんは鋼の紐を引っこませてくっつけているようだ。


 さらに逆側の三分の一部分でも同じように節が現れる。


「三つに分かれる双頭の槍とはまた、おもしれえ武器を使うもんだな」


「あれって意味あんの?」


「長槍と自由に使い分けられんならけっこう厄介だぞ。槍ってのは懐に入られると立ち回りが厳しくなるが、その弱点を補える」


「あー、なるー」


 事前にきちんと【鑑識眼】で詳細まで確認していれば防げた攻撃だ。リオは反省しつつ、双頭の長槍のステータスを確認した。


 他に特殊な効果はない。ただべらぼうに頑丈で、使用者の意思で自由に槍にも三節に分かれもするらしい。

 リオが着地する間に、エルディアスの肩から蒸気が立ち昇り、みるみる傷が消えていった。


「てかこれ、決着つくの? どっちも死なないじゃん」


「さてね。少なくともリオは文字通り全回復しちまうから、負けることはねえだろ」


 果たしてそうだろうか?

 リオは双剣を低く構え、白い少年を睨み据えた。


 ステータスが見えないのでなんとも判然としないが、あちらも完全回復レベルである可能性は高い。

 なにせ冒険島が作り上げた末端装置だ。


 女神がその権能を最大限活用して創造し、自我を得るほどにまで成長した島。外の世界とはまるで異なる法則を管理する超常の存在が、自身を倒すためだけに寄越したのだとしたら。


(何か、策があって僕の前に現れたに違いない)


 そもそも絶対に死なない固有スキルにも、弱点はある。


 冒険島そのものとも言える白い少年が知らないはずはなかった。

 だとしても。


(負けない。僕は絶対に負けるわけにはいかない)


 女神が景品であるかどうかなど関係ない。

 それを認めているような態度で戦う、エルディアスには負けられなかった。


 三節を再びひとつの長槍にして、白い少年も低く構えた。


(どのみち僕がやることはひとつだ)


 リオは『土』の無銘を床に突き刺し、魔力を流す。

 地割れのごとく床が避け、エルディアスに向かって突き進む。


 それを追いかけながら、風刃を飛ばした――。



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