連携攻撃
「いくよ、オルネラ」
リオは返事を待たずに右手の剣から風刃を打ち放った。オルネラの足元を切りつけると、硬化した砂地が彼女を載せて砂上を奔る。
「これは楽ちん」
オルネラはバランスを取りながら、すり鉢状の斜面を横断しつつ、巨大なアリジゴクの側面へと回りこんでいった。
他方、身軽なグラートは砂の上を駆ける。オルネラとは逆側から巨大魔物の横へ。
(ウケケケ、こりゃホントに徹底してんなあ。あからさまな陽動にもリオを優先するってのかよ)
動き回る二人には目もくれず、巨大アリジゴクはリオへ毒液を吐き続けている。
対するリオはお構いなしだ。
風刃で捌きつつ、魔力がなくなればわざと食らい、固有スキルを発動させて回復する。
それを観察していたグラートは確信した。
(なるほど、たしかにリオの言ったとおりだ。毒液がぶち当たってもしばらくはリオの様子をうかがってやがる)
リオの固有スキルが発動するかを確認しているのかは不明だ。しかしそのわずかな間は、攻撃はもちろん、ぴたりとすべての動きを止めていた。
「んじゃまあ――」
再びリオが毒液を食らうタイミングを見計らい、グラートは魔物の斜め背後から強襲を試みる。
大きな腹部ががらあき。
「ぬおっ!」
体に比して小さな頭のすぐしたから生える脚が、突然伸びた。
どうにか掻いくぐるも、腕の先端付近からいくつもの針が突き出てくる。
「ウケケケ、事前にリオに聞いてなきゃ避けきれなかったぜ」
知っていたからこそ予測して、それでも体に取り付いて剣を当てるつもりでいた。
だがグラートはいったん引くことを選択する。
砂地に降り、巨躯から離れるその最中。
「もろとも潰す」
オルネラが飛びかかっていた。
斧槍を思いきり振り下ろす。
腕から生える無数の棘。それらの先端が一か所に集まり、
ガキィィンッ!
「くっ……」
強烈な一撃を容易く弾き返した。
オルネラは空中で体勢を整えるも、このままでは砂地に嵌まって身動きが取れなくなるどころか砂に囚われ巨大アリジゴクの餌食になってしまう。
「リオ! 頼んだ!」
だがもちろん、こういった事態をまったく考慮していなかったわけではない。
「こ、のぉ!」
リオは右手の無銘に魔力をこめて横に薙ぐ。二振り、三振り。風刃はすり鉢状の砂地すれすれを滑空し、
キンッ、キキンッ!
オルネラが当初載っていた足場を弾いていく。
「うん、助かった」
ちょうど真下にやってきたタイミングでオルネラは見事に足場に着地。
「やるじゃねえかリオ、風の扱いがめっちゃ上手くなってんな」
「前は外してばかりだったのにな」
「言ってやんなよ。だてにピラミッドにこもって修行はしてねえってこった」
褒められているのか貶されているのか微妙な会話に、
「威力を落とせば狙いもつけやすいですから」
謙遜ではない。事実をありのままに告げただけだ。
「けどリオ、どうするよ? やっぱ俺らの攻撃力じゃ届かねえ」
「僕が接近さえできれば――」
いや、それでも確実ではなかった。
神雷でかなりのHPは削れるものの、完全に仕留めるには追撃が必要となる。
そもそも毒液が絶えず浴びせられるため、リオでは近づくこともままならないのだ。
けれど――。
「道はできました」
砂地を硬化し続けた。
前へ。
ひたすら前へ指向性を持たせ、巨大なアリジゴクへの一本道を作り上げた。
あとやることは、二つ。
一撃で仕留められるほどにHPを削ること。
リオが肉薄するほどの隙を作ること。
「なるほどそりゃあ、おあつらえ向きってやつだなあ」
グラートはリオの側に寄って来ると、
「出番だグレーテ! 派手にやれ!」
叫んだ先、岩場の上ではすでにグレーテが攻撃態勢に入っていた――。




